689 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2012/01/15(日) 16:32:19.33 ID:65TiQJ8I0 [1/4]
京介「は?……記憶…喪失……?」

桐乃は病院のベッドで寝てる。しっかり息をしていて
それを見ては安心する。
桐乃は台所の戸棚から皿か何かを出そうとして
椅子に乗って、ある拍子で落ちて……
そういうベタな話でよくあるが、打ち所が悪かったそうだ。


桐乃「………んん…」
京介「!! 桐乃っ?」
桐乃「………え…」
京介「おい! 大丈夫なのか?なあ!」
桐乃「……え……っと……誰?」

信じられない言葉だった。ひとまずの無事が確認できて
安心したようで、泣いているお袋を親父がなだめてる。

京介「俺だよ!京介! お前の兄貴の!」
桐乃「………?…」


桐乃は基本的な知識の記憶はあった。医者によると生活の中で
忘れた記憶の多くは取り戻せるとのことだった。


事実、一週間ほどで……見舞いに来た親父やお袋、あやせ、加奈子、
麻奈実や俺のことを…完全にではないが思い出していった。
黒猫や沙織には電話で状況を伝えると安心して泣いた。良い奴らだ。


一応、日常生活は送れる、ということで学校にも行き出した。

桐乃「行ってきまーす!」

こっちの気もしらず、部活の朝練で先に元気な声で桐乃は出て行った。
桐乃は俺のことも思い出しはしたが、当然完全ではなく
ひとまず兄であること、俺がシスコンだということ
(あやせによる脚色含む)は把握したという程度だ。
病院で起きてから定まってなかった
『あんた』っていう基本呼びも戻ってきた。

麻奈実「じゃあ、京ちゃんと最近仲良くなったこととかは…?」
京介「そこまで細かくは思い出してねえみたいだけど…
   今のとこ、まあシスコンってことでアレだが普通に話はできる」
麻奈実「うーん……あまり急に色々思い出してもらおうとするのも
    良くないんだろうけど…京ちゃんは大丈夫?」
京介「……まあ多少の違和感はあるけど、元に戻ってきてるからなぁ」
麻奈実「…そっかぁ。…うん、じゃあこれからだね~」


学校から帰りリビングに入ると、以前と同じように
桐乃がソファで雑誌を開いたまま携帯で、おそらくあやせと
談笑していた。話す時間が多いからか、
あやせやその周辺の記憶はほとんど戻っているようだ。

桐乃「ははっ! うん。わかったってw じゃーね!」
京介「……あやせか?」
桐乃「ん?…うん。今度遊びに行く話。加奈子も」
京介「そっか。まあムリはすんなよ」
桐乃「わかってるよ。仕事の話なんかも思い出さなきゃだし」
京介「…それしばらく休んだ方がいいんじゃねぇの?」
桐乃「心配ありがと。でも大丈夫だし、迷惑かけらんないし」
京介「でもなぁ」
桐乃「大丈夫だって! てかそんなだからシスコンって言われるんじゃん?」

桐乃が以前良く言ってたシスコンって言葉。
でも何か響きが違う気がすんだよな……物わかりがよすぎるっつーか。

桐乃「あ、そうだ! ちょっと訊きたいことあったんだけど」
京介「何だ?」
桐乃「あたしの稼いだお金ってどうしてるの? 貯金?」
京介「ああ…基本的にはそうだったと思う」
桐乃「あやせから聞いてさ。あたしの稼ぎって結構、凄いらしいじゃん?
   そーとー貯まってるってことよね?」
京介「……ああ、だけどおまえ結構使う―――」
桐乃「ああ、まあね。モデルやってるし、服多いしね」

そうだ、こいつはあのことを忘れてるんだ。信じられん。
俺は迷った末、まだ早いと思い、そのことを告げずにいた。


夜。メシを食って風呂に入って…俺は部屋に居た。
異変を感じたのは、廊下で桐乃と会ったとき
………あいつは尋常じゃない赤面だった。

京介「……どうした?」
桐乃「…へぅっ?/// あ、べ別にっ///」
京介「いやいや…明らかにおまえ何か…
   ……! 体調、悪いのか?」
桐乃「え? う、ううん! 大丈夫!」
京介「おまえ、無理はすんなよ! ただでさえ意味不明な
   症例なんだから! ちょっとでも体調悪いなら言え!」
桐乃「う…/// いや、ホント大丈夫だから…///」
京介「だっておまえ……」
桐乃「……~~~っ! ちょっと、来て!///」


俺はぐいっと桐乃に手を掴まれ、部屋に引っ張り込まれた。

桐乃「…こ、声。おっきいって…」
京介「あ、悪い……いやでも…」
桐乃「…あんた、シスコン、なんだよね…」
京介「は? あ、ああ…そうなってる」
桐乃「なってるって……よく分かんないけど、そーなんだ。
   じゃあ…ちょ、ちょっと凄いこと訊くけどさ…」
京介「え?」
桐乃「こ、ここここれなんだけど……///」

桐乃はノーパソの画面を俺の方に向けた。
その画面には『お兄ちゃん…』と言いながら…裸の…
エロゲーだ。そりゃそうだ。あいつの日常だったんだから
隠すなんて方が無理って話だ。

桐乃「こっここここここここれ!/// 何? あ、あんたが
   私のノーパソで、ここここれ、やってたってこと!?」
京介「ちょ、落ち着け
桐乃「ムリ! ないないない! あ、あんた妹のノーパソで、
   こここんな! 妹を……っっっ!!/////」
京介「いやいやいや! いや俺もやってたけど、おま
桐乃「や!? やってたって!! 今やってたって言った?
   へ、変態!最低! し、シスコンどころじゃないじゃん!!」
京介「待て! ちょ、説明するから! 一回! 落ち着け!」

とは言っても落ち着くわけもなく……まあ当然っちゃ当然だが…
桐乃が落ち着くのに30分以上要した。 ……泣きそうだ。

京介「…だから……説明するから…」
桐乃「…分かった。聞く…」
京介「…気持ちは分かる…でもちょっと俺から離れ過ぎだ…」
桐乃「だ! だって…あんたが変態じゃないってまだ
   証明されてないじゃん! やってたんでしょ!?」
京介「だから……ああダメだ、そもそもの話をしないとその
   証明もできねえ……」
桐乃「……いいから、ここで聞く。早く説明しなさいよ…」
京介「…いいか? これから言うことは衝撃的な真実だ。
   頼むから落ち着いて聴いてくれよ…」

俺はあの日のことを少しずつ、話してやった。桐乃から聞いたことを
桐乃に言うってやっぱ妙な感じだが……

桐乃「…あ、あたしが……?」
京介「そうだ。だからそのエロゲーはおまえが買ったもんなんだ。」
桐乃「エロ、って/// ちょ、待って! あんたは? さっきやってたって…」
京介「ああ、それはな、おまえに付き合わされてやってたってことだ」
桐乃「は? あ、あたしが? この…ゲームをあんたと……?」
京介「そう、基本は借りて、っつーかおまえにやるように言われて
   ノーパソも借りてやってたけど、時々は2人でやってた」
桐乃「な、なん…! 止めなさいよ! シスコンだからって、
   こここんなゲーム、しかも2人でって!/// 気まずいじゃん!」
京介「俺のセリフだ! てか言ったわソレ! 止まらなかったのは
   おまえだったんだよ!」
桐乃「……ありえない…なんなのコレ? 何で…」
京介「…全然、思い出せないのか? 他のことは少し話し聞いたら
   思い出したりしてたじゃねーか」
桐乃「思い出せないわよ! だっ、これって……
   え、何で? こういうのって男の子がするんじゃないの?」
京介「ああ、それは俺も訊いたんだが……
   そのときおまえは『わかんない』って言ってたんだよ。
   ただ、その妹キャラが可愛くて、そういうのが好きなんだと」
桐乃「……か、可愛いのは、分かるけど…」

桐乃はエロゲーについて、ほとんど記憶を取り戻してなかった。
あまり一気に伝えても、桐乃の方がパンクしちまう。
でも……ああああああぁぁぁ何だこの感覚!あの桐乃に!俺が!
逆じゃねえか……

その日はあたふたする桐乃を見て、その程度で切り上げた。


次の日の夜。桐乃が部屋に来て、顔を真っ赤にして言った。

桐乃「……あ、あの、さ。 ちょっと来てほしいんだけど」
京介「…何だ?」
桐乃「い、いいから! さっさと来て!」

桐乃の部屋へ行くと、目に入ってきたのはノーパソ画面のエロゲー。

京介「おまえ…エロゲーしてたのか?」
桐乃「っ/// ち、違う! いや、してたけど!」
京介「してたんじゃん」
桐乃「だ、だから! あ、あたしの記憶を、思い出すためによ!
   これ…エロゲーは! あたしにとって大事なものだったんでしょ?」
京介「あ、ああ……おまえは『愛してる』とまで言ってた」
桐乃「そんなに!?」
京介「…そうか…そうだよな、おまえにとって記憶の手掛かりに
   なるものかもしれないのは確かだ。……で?」
桐乃「…で? って何よ?」
京介「いや、俺を呼んだのは?」
桐乃「っ!!//////」
京介「何だ? エロゲーに関して俺はそこまで詳しくはないぞ?」
桐乃「そ、そうじゃなくて!
   あああああのさ、いいい、一緒に……」

桐乃「…一緒にやんない?///」

…そこまで恥じらいながら言う桐乃は新鮮だった。何だこれ?

京介「あ、ああ……いいけど」
桐乃「な……い、いいんだ。そっか、そうだよね」
京介「まあ、今まで何回かあったしな。初めは強制的だったし」
桐乃「そ、そうなんだ…」

テーブルに2人並ぶ。
そうだ、こいつは自分の記憶のブラックボックスが怖いんだろう。
確かにちょっと普通じゃないからな…こいつなりに必死なんだ。
しばらく一緒にエロゲーを進める。

京介「おまえ、あんま近づくなよ…」
桐乃「しょ、しょーがないじゃん! 画面見えないんだから!
   ……あんたシスコンなんでしょ? 喜びなさいよ!」
京介「いや、つってもなぁ…そのシスコンってのも何て言うか…」
桐乃「何よ! いつもあたしと一緒にしてたんでしょ?」
京介「いやいつもってわけじゃないが……」

そう言えば黒猫や沙織はまだ桐乃に会いに来てない。
何かこういうこと予想してたんだろうか。

桐乃「あやせがいっつも言ってるじゃん!
   あんたシスコンだから気をつけろって!」
京介「ぐ……まあシスコンなのは認める。けど一つだけ言っとくが、
   あやせはちょっと極端だからな、全部本気にはせんでくれ」
桐乃「…まあ確かに? あやせはそういうとこ、あるけど…」
京介「それに一緒にって言うのは大体おまえの方だからな!
   俺だってノリノリで一緒にエロゲーしてたわけじゃねぇんだぜ?」
桐乃「う、うるさい!」
京介「……まあ、いいけどよ」
桐乃「…で、でもさ……それってさ…」

桐乃がふと、改まった声になる。

桐乃「あたしが、そういうの求めてたってことだよね?」
京介「……へ?」
桐乃「だから! あたしがこういうゲームを、あんたと一緒に…
   今みたいにすることをさ」
京介「…まあそうなるかもな。いや、おまえにもこういうゲームの
   話をする友達がいるんだが…まだあれから会ってないもんな」
桐乃「え、そうなの?」
京介「…多分、今のおまえだとそういう話できないからな……
   あいつらもおまえが記憶取り戻してからって、多分思ってる」
桐乃「じゃ、じゃあさ…あたしは基本、そいつらとこういうゲームを
   一緒にしてたってこと? あんたとじゃなくて」
京介「あー…話だったらあいつらとよくしてたけど、
   一緒にするってことは、ほぼなかったと思う」
桐乃「あ、そ、そう。 じゃあやっぱりあんたと…」
京介「まあすぐ隣だからな、何かのときに急にってことが多かった」
桐乃「……あのさ」
京介「何だ?」
桐乃「ノーパソにこういうのいくつか入ってるんだけど、
   全部さ、その、妹モノってヤツなんだよね…」
京介「そうだな、あいつが買うのは全部そうだった。
   それでさっき言ってた微妙に趣味が違う友達と揉めたりしてた」
桐乃「……何でかな?」
京介「…いや、俺が訊きてえよ」
桐乃「……ちょっとゴメン」

そう言うと桐乃は俺に抱きついた。

京介「」

抱きついた?

京介「うおああああぁぁーー!! お、おまえ、何っ///」
桐乃「だ、だってこういうことじゃん!///」
京介「ななな何言ってんだ! こういうことって?」
桐乃「あたしが買ってた…妹モノのエロゲーとさ、それを2人で
   一緒にしたがってたんでしょ?」
京介「あ、おま…! ちょ、落ち着け! 一回離れろ!」
桐乃「な、何か思い出しそうだし…もうちょっと///」
京介「バカ早まるな! いいから一回離れろ!」

桐乃の肩をぐっと押して離す。

京介「い、いいか…あの時に言っておくべきだったが…
   おまえが妹モノのエロゲー買うのは、そんな理由じゃねぇ!
   おまえはな『2次元と3次元、一緒にすんな』って言ってたんだよ!」
桐乃「…2次元?」
京介「だから! エロゲーはエロゲーで、現実とは違うってことだ」
桐乃「……え、じゃあ何で? それだけじゃあエロゲーが全部
   妹モノってこと説明できてなくない?」
京介「うぐ……いやそうだけど、少なくとも今のおまえみたいなことは
   しねーはずだ!」
桐乃「…てゆーか何? あんたシスコンじゃないの? 何で嫌がるの?」
京介「あの、な…俺は、例えばこのエロゲーの主人公みたいな……
   そ、そういうシスコンじゃねえ! け、健全な兄妹の兄であって、
   おまえと仲良くなりたいとかは思うが…」
桐乃「…!!/// そ、そう」
京介「だ、っだから……そもそもおまえ、『キモ』って俺のこと
   嫌がってたはずなんだよ! だ、だから…」
桐乃「……あたしさ、あんたのこといろいろ訊いたよ。
   あやせなんかは極端なこと言っててアレだけど…
   何だかんだで、一番あんたが心配してくれてるって、分かるし…」
京介「え……いや…そうか?」
桐乃「…でさ、分かんないんだ、あたしがあんたを嫌がってたって
   感覚がさ。 あ、あんた、優しいし///」
京介「な……いや…///」
桐乃「その、恥ずかしい、とかさ、あるけど……そんなのだけで
   『キモイ』とか、言わない……」
京介「え…いや…」
桐乃「…でも、うん、分かった。ちょっとヘンだったね、急だったし。
   ありがとう、今日はもういいよ」
京介「あ……そ、そうなのか?」
桐乃「うん…もう遅いし」
京介「そうか……じゃあ…」
桐乃「うん、ありがとっ。 おやすみ」

……疲れた。そうか、あいつはまだ不安定なんだ。
しばらくはこんな調子で……どれくらいで元に戻るんだろうか?

京介「…………寝よ…」

照明を消してベッドに倒れると、すぐ眠りに入った。



――――パチンっ

な、何だ、いや……まさか?
痛みで目覚めて、暗闇の中、目を凝らすと……
桐乃だ。あの日と同じ……

京介「お、おまえ……」
桐乃「………」
京介「お、おい、桐乃? 何のつもりだ?」
桐乃「……わ、わかんない」
京介「は?」
桐乃「わかんないの…な、何か廊下であんたの部屋の前に来て
   ……気がついたら中に入ってて……」

……これは桐乃の、『人生相談』の記憶がそうさせてるのか?

京介「何か、相談事でもあるのか?」
桐乃「!! ……そ、そうかも」
京介「明日じゃダメなのか?」
桐乃「だ、ダメ! ……多分」

多分て……
桐乃はおそらく焦ってるんだろう、自分の記憶に。

京介「じゃあ、何だ? 言ってみ?」
桐乃「言ってみ、って…… ちょっと待ってよ…」
京介「待ってよって……」
桐乃「……あ、あのね! あんたはさ、あたしと
   仲良くなりたいって言ったじゃん?///」
京介「あ、ああ……」
桐乃「じゃ、じゃあさ……
   い、一緒に寝ても、いい?///」
京介「いっしょに………ってえええええええええ?///」
桐乃「ばか! こ、声大きいっての!」
京介「だ、だっておまえ……」
桐乃「…ね、いいじゃん? ……だめ?」
京介「だめっつーかマズいだろ? 何でそんな?」
桐乃「わ、わかんないけど! そうしたいの……
   何か記憶に関係する気がするの」
京介「一緒に寝ることが? そんなことあんのか?」
桐乃「…あたしの記憶で一番、わかんなくて、でも
   大事なことがあって……さっきのエロゲーもそうだけど
   ……手掛かりは、あんたなの。そんな気がするの」
京介「………でもなぁ…まだおまえに話してないことはあるし
   それならこんなことじゃなくても……」
桐乃「わかってる。あたしも少しずつだけど思い出してる。
   でも……これは今じゃなきゃダメなの!」

桐乃は引かなかった。こんな桐乃を説き伏せることは俺にはできない。
……ということで、そう……一緒に寝ることになった。これ何てエロゲ?
俺はベッドの端で外を向いてる。

桐乃「……ね、ねえ…」
京介「な、……何だ?」
桐乃「…あんた、あたしのこと、心配した? 病院に運ばれたとき」
京介「当っっったりめぇだろ! 何してんだよ!」
桐乃「!!!/// ……ご、ごめん」
京介「…あ、いやわりぃ……今のおまえに言ってもしょうがねえか……」
桐乃「ううん、ありがと…… あの、さ。
   あたしのこと嫌いじゃないんだよね?」
京介「嫌いじゃねえよ」
桐乃「!!/// ……そっか。 あの、あたしらって、前もこんな風に
   ……一緒に寝たことって、ある?」
京介「ねえに決まってんだ…… いや、ガキの頃とかに
   あったかもしれねえけど……」
桐乃「…そ、そうだよね。 おかしいよね…」

桐乃の声が、弱々しくなる。不安なんだろう。
俺は少し手を伸ばし、桐乃の頭をぽんぽん撫でた。

京介「…大丈夫だ。 まあこんくらい、付き合ってやるよ」
桐乃「ふぁ…///// う、うん」
京介「……きっと、戻るからな、記憶」
桐乃「うん……でもね、ちょっとそれも怖いんだ……
   今のあたしじゃなくなっちゃうんだよね?」
京介「ん……というか元のおまえに戻るってことだからな。
   消えるわけじゃねえんだぜ? 今のおまえも、おまえだから」
桐乃「うん……でも…やっぱりちょっと怖い……
   ……だからさ、あんたといるときに感じる感覚が…
   それだけが今のあたしを……支えてくれてるの」

そう言うと、桐乃は……俺の背中にそっと寄り添ってきた。

京介「っ!!/// お、おい……」
桐乃「ごめん/// …しばらく、こうさせて…」
京介「な……」
桐乃「……不思議… 落ち着くし…ちょっとドキドキする///」
京介「っっ!!//////」
桐乃「ねぇ… 嫌……じゃ、ないよね?」
京介「いいい嫌じゃ、ねえけど…///」

そう答えると、桐乃は更に、腕を回してきて……
後ろから抱きついた形になった。む、胸が……

桐乃「……あったかい…///」
京介「…ぁ……///」
桐乃「…あのさ、エロゲーの件だけど……うすうす分かってた、
   あれがあたしのものだって。あたしのノーパソにあったし。
   ……でね、初めはやっぱ抵抗あったけど、やってってたら…
   やっぱね、そういうことか、って思ったの」
京介「いや、おま……」
桐乃「ごめん、身勝手かもしれない。
   でも、これが今のあたしの答え」

桐乃はそういうと……俺の首に…キスをした。

京介「ふぉあ!!?//////」
桐乃「っ////// ごめん、ヘン、だよね…?」
京介「へ、ヘンつーか///」
桐乃「…ねえ、嫌?」
京介「い、嫌っつーかっ///」
桐乃「……もうっ」

そう言うと桐乃は俺の体を、桐乃側に向けて………近い!

京介「なっ……ぁ……///」
桐乃「……ねえ、あんたは?///」
京介「あ……俺…?///」
桐乃「…あたし、今すっごい勇気出して、したんだけど//////」
京介「ぐあっ…////// ちょ、待って…」
桐乃「……あたしのこと、嫌い?」
京介「…!! そんなわけえだろ!」
桐乃「っ////// じゃ、じゃあ……」
京介「ぐ……ああっ、好きだよ!/// けど
桐乃「ほ、ホント?//////」
京介「っ! ほ、ホントだ///……けど
桐乃「いい! その後のはいいから… 今はさ」
京介「そ、そんなこと言ったって…」
桐乃「……ねえ、………して?//////」
京介「!!!!! っな!//////」
桐乃「あたしから、だけじゃん。 京介からも、さ…///」
京介「……!!」

ヤバイ。いろいろと……何か足りない、でも……
顔を赤らめてる桐乃が目を潤ませて、俺を待ってる……

俺は迷いに迷った末、桐乃のデコにキスをした。

桐乃「……////// ふふっ」
京介「…こ、これで勘弁してくれ…//////」
桐乃「……ダメ。 あたしまだ、そんなんじゃ足んないし」
京介「へあ!?」
桐乃「……お兄ちゃん」

桐乃はそう言うと、顔を近づけて唇が……
俺は間一髪、首を回して避けた……というより頬で受けた。

桐乃「ん……もう……///」
京介「っ/// ききき桐乃! ストップ! 頼むから!」
桐乃「イヤ。やめない」

そして桐乃は……耳たぶを舐めてきやがった!やばいやばいやばい!

京介「ふっ!!/// ちょ、桐乃! やめっ!」
桐乃「……ねえ、お兄ちゃん… お兄ちゃんも、していいんだよ?///」
京介「!!!」
桐乃「お兄ちゃんのことが好き、大好き」
桐乃「桐乃のこと…好きにしていいんだよ?///」

その言葉は……意外にも俺を冷静にさせた。
桐乃は…俺の妹様は……上手く言えないが、
でも違うと思った。こいつには足りないものがある。

俺は桐乃の肩を持ってぐいっと俺の体から離した。

桐乃「ふぇ… で、でも、や、優しく…///」
京介「うるせえ、ちょっと来い。 人生相談だ」

俺はベッドから飛び出た。
桐乃の手を強引に引っ張って、桐乃の部屋に連れて行った。

京介「……なあ、おまえさっき俺のことを好きって言ったよな」
桐乃「ふぇ?/// う、うん…」
京介「…その言葉がおまえのどこから来てるか、はっきりは
   分からねえよ。だから嬉しくないって言うと嘘になる」
桐乃「ど、どういうこと?」
京介「ただ…おまえ、さっきやってたエロゲーに影響されただろ!
   一緒にしてたとき、似た展開があったよな!」
桐乃「!! そ、そうかもしれないけど」
京介「桐乃はな…そんな単純な理由でエロゲーやってたわけじゃない!
   これを見てみろ!」

俺は驚く桐乃を横目に棚をスライドさせ、奥の襖の戸を、開けた。

京介「見ろ、これが桐乃だ!」
桐乃「なっ……あ……これ、全部…」
京介「そうだ。この積み重ねられた全部がおまえのもんだ。
   2、3個エロゲーをしてそれを再現するなんてのは、
   ちゃんちゃら可笑しいんだ!」
桐乃「……って… こ、これも全部、妹の…?」
京介「そうだ! 俺もまだ知らないもんも下の方にあるぜ?
   言っておくが、おまえはこれを本気で愛でてた!」
桐乃「愛でる、って…」
京介「それだけじゃない、黒猫…おまえの友達の妹と
   風呂に入ったときなんか、おまえのテンションは
   ハンパじゃなかったらしいぜ!? もう引くくらいだとよ!
   おまえの妹に対する愛情はそれほどのもんだったんだ!」
桐乃「………!」
京介「俺はおまえを可愛いと思ってる」
桐乃「…へっ/// み、脈絡が…」
京介「でもなあ! 俺の妹の可愛さってのは、
   そんな単純なもんのわけがねえ! 今のおまえは
   まだほんの一部のはずだ! 足りねえんだ、まだ!」
桐乃「!!!」
京介「そんで、それは俺もだ! だから……
   さっきおまえがしてくれたことに、
   そんな簡単に答えるわけにはいかねえんだ!」
桐乃「!! 京…介……」
京介「なあ、桐乃……」

俺は…桐乃を抱き締めた、強く。

桐乃「!!!////// っあんた…」
京介「…帰ってきてくれよ、桐乃……
   俺、寂しいんだ。 おまえがいねえと死んじまうかもしれねえ…」
桐乃「……!!」
京介「人生相談、いろいろあったじゃねえか…
   なかったことに、しないでくれ…… まだ言ってねえこともある…
   まだ終わってねえだろ、人生相談が……頼むよ……桐乃…!!」

気がつくと俺は泣いていた。 ……情けない話だ。
もう慣れちまった、って言うと怒られそうだけどな。

桐乃「……バカ、いつまで妹抱き締めてんのよ」

そう言うと桐乃は俺の手を振りほどいた。

京介「……すまん。 今のおまえを責めるみたいになっちまって…」
桐乃「…別に。 もういいからさ、今日はもう帰って」
京介「ああ…そうだな。 すまなかった、急にいろいろ…」
桐乃「いいっての。 あたし、やんなきゃいけないことあるから、早く」

部屋に帰ろうと、ドアに手をかけると、桐乃が言った。

桐乃「ねえ、忘れないでよ? 今のあたしも、あたしなんだからね」
京介「……忘れねえよ。 当り前だろ、忘れるわけがねえ」



翌朝。
階段を降りた玄関前……で、桐乃とぶつかった。何度目だ?

京介「わ!わり……」
桐乃「……////// き、気をつけなさいよ!」

顔を赤くして怒る桐乃と、何か懐かしい感覚。

京介「ああ、ごめん……」
桐乃「い、いいけど………あのさ、」
京介「…何だ?」
桐乃「きっ昨日の! あれ、ノーカンだから!///」
京介「は? ああ、あれか」
桐乃「お、思い出したの! 記憶、全部!」
京介「思い…って……本当か!! どうやって?」
桐乃「……ど…どうだっていいでしょ?
   キモ! あ~、もう! なしなし!」
京介「…そうか! よかったな、桐乃!」
桐乃「全っ然よくないんですけど! バカじゃん? あんな…///
   しないかんね! もうあんなこと!」
京介「あ? ああ、そっか……まあちょっと寂しいかもな…」
桐乃「な!? 何言っちゃってんの? シスコン! キモすぎ!」

朝からぎゃあぎゃあと騒ぐ俺たち。この騒動もひとまず終わりだ。
そしてリビングのドアに手をかけて桐乃は振り返った。


桐乃「……ありがとね、京介」


俺の妹がこんなに可愛いわけがない。                 END




また長くなったし調子乗った感じがする……読了感謝。では




-------------

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年01月16日 06:08