52 名前:【SS】 『100スレ立ってもブラコンで』[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 08:13:25.22 ID:sIjFgfoB0 [2/2]
『100スレ立ってもブラコンで』
「桐乃スレも、もう100スレかぁ。思えば遠くへ来たもんだ」
俺は椅子の背もたれに寄りかかり、天井を見上げながらそう呟いた。
あれは数年前の事。偶然ネット上で桐乃を応援するスレッドを見かけた。
当の本人の兄である俺としては、何事かと思い即座にそのスレッドの書き込みをチェックする。
するとそこには、「きりりん頑張れ!」、「大好き!」等、純粋に桐乃を応援する言葉ばかりが並んでいた。
中には、少しばかり不謹慎な言葉を浴びせる輩もいたものだが、誰からというわけでもなく、そういう奴は別の桐乃ファンから
叩かれていた。
俺が出る幕も無かった。しかし、「きりりんちゅっちゅしたいお!」とか、マジ殺すぞあの野郎。
……とまぁ、そんな桐乃の応援部隊の一員として潜んできた俺も、今こうして、100スレ目を皆と共に迎えているわけだ。
「感慨深ぇなぁ」
きっとモデル雑誌か何かがきっかけだったのだろう。桐乃を応援する人は着実に増え、今では小説や漫画みたいな物まで投稿されている。
しかも、どれもこれも素晴らしい。きっと桐乃への気持ちが籠っているのだろう。
これらは全て、感謝しながら保存させてもらっている。兄として思う、本当にありがとう。
――ただ、一つだけ注文を付けるのであれば、その投稿物の中の桐乃が、
あまりにもブラコン
な点については、少しばかり訂正を願う。アイツはあんなに俺を慕ってはいない。現実からかけ離れ過ぎている。
それなのに、スレの住人達はやたらと桐乃を兄(俺)とくっつけようと目論んでいる。こればかりは例外なく、だ。
確かに雑誌のインタビューなんかでは、『大好きなお兄ちゃんと買い物に行きます!』とか書いていて桐乃もマジ天使なんだが、実際には
「ちょっと買い物付き合って」
「あんま近く寄んないで」
「アンタ、アタシにコレ買って」
といった感じで、俺を下僕のように扱っている。
「大好きなお兄ちゃん♪」→「このシスコンマジキモーい」
……正反対もいい所である。住民はもっと現実を知るべきだ。
「とはいっても、可愛いのは事実だからなぁ」
妹の偽装への愚痴をこぼしながら、スレッドに新しくupされた桐乃の雑誌写真(もう持ってる)を眺める俺。
ディスプレイに映る桐乃は、満面の笑みで輝いている。
「きりりんマジ女神」
住人たちの毒にやられ、俺はバカみたいな台詞を無意識に口走っていた。
するとその時、
「ねぇ」
突然、背後から誰かが俺に呼びかけた。声で分かる、噂の人物、桐乃本人だ。
「ぅお!?」
俺は慌てて画面のウィンドウを最小化する。あっぶねえ、桐乃に見られたらシャレにならん。
見られてないよな?聞かれていないよな?
耳の奥まで響く鼓動を抑えつつ、俺はあくまで冷静に振り返る。
「お、脅かすなよな!ちゃんとノックぐらいしるっ!!」
「はっ?何言ってんの?今更って感じじゃん」
それでも、見られたくない時だってあるから、最低限のルールは守って下さい!
「まぁいいや。で?アンタ、今何見てたの?」
「――別に?普通にネットしてただけだけど?」
「まさかまたカ○ビアン・コム?」
「ちっげーよ!?」
思わず大声で否定してしまった。コイツ、いい加減忘れてくれなぇかなぁ……。
「本気で否定するって事は、逆に怪しいわね。――とりあえずそれは後で確認するとして」
桐乃が小さな声で、凄く気になることを言っていた。
「……アンタさぁ、今日、何の日か知ってる?」
「へ?今日?」
桐乃から投げかけられ唐突な質問に、俺は間抜けな声を上げる他無かった。
パソコンのモニターに映るカレンダーを見ると、『2月14日』と無機質に浮かび上がっている。
「あぁ、そっか。そういえばバレンタインデーだったな」
スレッドの話題が俺の頭を埋め尽くしていたので、すっかり抜け落ちていたぜ。
「アンタ今まで忘れてたの?」
桐乃が少しばかり不機嫌そうに尋ねてきた。
「いや、学校にいる時は覚えてたんだけど、さっきまで忘れてたわ」
「意味分かんないし……」
妹のこと考えてたら忘れました、なんて言えるわけがない。何処のシスコンヤローだよ、それ。
「んで、そんなバレンタインデーがどうしたって?」
「えっ、あぁ。まぁ、なんというか、その……」
自分から聞いてきたわりに、俺の質問に言葉を濁す桐乃。何だってんだ、一体?
「……アンタさぁ、誰かからチョコ、貰ったりしたの?」
「はあぁ?」
「だから!地味子や黒いのとか、沙織とかからチョコもらったかって聞いてんのっ!?」
桐乃は怒鳴りながら聞いてくる。一方の俺は、桐乃からの問いかけに一瞬だけ頭を真っ白にさせられた。
「いや、貰って、ねぇけど?」
「……えっ?ウソ?」
「ホント」
「なんで?」
「しらねぇ」
イラついていたはずの桐乃は、俺の返答が意外だったのか、急に驚いた表情に切り替わった。
「えっ、嘘、アイツ等はともかく、まなちゃんは絶対……」
そうして今度はブツブツと小声で自問自答を始めた。
――あぁ、そうか。
多分桐乃は、俺が麻奈実や黒猫達からチョコを貰ったと勘違いして、どういう理由かは知らないが、それを確認しに来た、と。
でも実際は、俺は誰からも貰っていなかったので、予想が外れてビックリ!、ってなとこだろう。
「何を考えてんのか分からねぇけど、俺は今回、皆の好意を突っぱねたんだわ」
「何それ?どういうこと?」
「言葉通り、用意してもらったチョコを、『受け取らなかった』んだ」
「……は、はあぁぁぁぁぁ!?」
桐乃が甲高い声を発し、掴み掛るように俺に迫ってきた。
「何それ?なんで!?皆が用意したのに断るとか、バカじゃん!?ありえないんですケド!」
桐乃の言い分はもっともだ。普通に考えれば、それはおかしい。
男子高校生なら、ドヤ顔で友人に自慢しても良いレベルの話である。
しかし、それでも俺は断った。
いつもいつも勢いだけで行動している俺だが、今回ばかりはちゃんと動機もある。
そしてそれは、今までの俺にない、新しい一歩となるべく取った行動なのだ。
「確かに、俺は男としたら最低の事をしているかもしれない。義理チョコだったとしても、それを用意してくれた優しさに
泥を塗ったようなもんさ。……でもな、俺はもう決めたんだよ。フラフラしねぇって」
「――」
「ちょっと前の事だけど、お前は俺に言ったよな?『アタシが一番じゃなきゃイヤ』だって。その時の俺は純粋に嬉しく思ったし、
お前を可愛いとも思った。なんつーか、兄冥利?に尽きる気分だったよ」
「……あっそ」
桐乃はバツの悪そうに、でもあまり嫌そうにはせず聞いている。
「それから俺は自分で決めたんだ。これからは、桐乃の一番でいよう、ってな。どうしようもない兄でも、桐乃がそう求めるんなら
叶えてあげなくちゃな、ってさ」
気付けば桐乃はそっぽ向いている。――まぁ、今言ってるのは随分と恥ずかしい事だし、顔を見られずに済んで良かったかな。
「極端なのかもしれねぇけど、チョコを受け取らなかったのも、そういう意味があるんだわ。どうせ義理なんだけどな」
気持ちだけでなく行動で示す、不器用な馬鹿なりに考えた誠意の示し方だった。
いざ言葉にすると恥ずかしいなぁ、なんて、そんな風に照れ隠しをしながら頭を掻く。眼前で桐乃が「……やっぱりバカじゃん」とか
呟いていたけど、あまり気にしないでおこう。
「――って、彼女作るわけでもないし、別に気にするほどでもないよな?……あれ?」
一通り話しておいてなんだが、自分の取った行動が、今になって幾つか疑問点が混じっている事に気付く。
なんつーか、大袈裟じゃね?『妹』との間柄なのに。
俺はどうして、
異性の好きな人にチョコを贈るイベントで、
妹を優先して断ったのだろうか?
そしてどうして、それを妹に伝えようとしたのか?
……自分でも、よく分からずにいた。
「――あーあ、やっぱりアンタはどうしようもないシスコンねー」
俺が自問自答していると、声色を変えた桐乃がいつもの調子で言ってきた。
「へっ! もうそれは認めてやるぜ!」
悔しいけどな!
「へへーん、キモキモキモー!京介、アンタやばいってー!マジヤバーい」
桐乃は今までの空気なんて嘘みたいに、ニマニマ口元を弛めながら俺をからかってくる。
俺はもう、知っている。
俺のシスコンっぷりが表に出ると、桐乃はそんなに嫌がらない。
馬鹿にしつつも、表情は毎度ご満悦だ。
そんなに嫌われてない、っていう段階からはちょっと上がって、兄としてそれなりに気にかけてくれるレベルにはなっているのかもな。
「妹一途!とか、ギャルゲーみたいじゃーん!!」
なんか多少の事実の上乗せをされている気がするが、桐乃が嬉しそうだしツッコまないでおこう。
「……ふぅ。笑った」
賢者タイムよろしくな小休止を挟んで、
「まぁ、京介がチョコ全然貰えなかったんなら、仕方がない」
なんか偉そうに話し始めた桐乃。しかし今度は、急にモジモジし始めた。
「そ、その、どうしてもって言うなら?可哀想だし?……コレ」
「あん?」
顔を赤らめながら、桐乃が何かを俺に差し出した。
それは、ピンクを主体に綺麗にラッピングされた、チョコレートであった。
「えっ?ウソ?お前俺にくれんのっ!?」
驚いて、思わず大声で聞いてしまう。
「だ、だってこれはアンタがアタシの為に断ってチョコレートゼロならさすがにちょっと可哀想だしそれにアタシが原因でもあるし妹だし
――」
なんかスゲーテンパってますよ桐乃さん?大丈夫ですか?
「そ、そっか。え、えっと……ありがとな」
「う、うん!!か、感謝していいかんね!」
妹からだぞ!と、変な所、いや桐乃らしい所を強調されて受け取った。
「えへへ~♪」
まったくよぉ。いつもはクソ生意気なくせに。
たまに見せる可愛さが、異常なほどにカワイイんだぜ?
反則だよな、ホント。
ちなみに桐乃がくれたチョコレートは手作りだった。
食べる前に嫌な汗が出たりもしたが、実際はそれほど悪くない味だった。
激ウマ!とまではいかない味付けだったが、その分手作りっぽさが出ていて感動できたというか、
俺にとっては世界一美味しいチョコレートだったよ。
サンキュな、桐乃!
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524 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 19:59:03.59 ID:SIsUCoNNO
妹からチョコ貰った。手作りだった。ちょっと泣けた。
525 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:01:15.42 ID:JhTYreokO
>>524
kwsk
526 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:02:01.01 ID:GraiFGklO
>>524
なん・・・だと・・・?
きりりん以外にも、そんなブラコン妹がいるというのかorz
ちょっと、兄になってくる
527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:02:52.15 ID:BUracONnO
>>524
奇遇だね。アタシも兄貴にあげたよ♪
528 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:04:02.38 ID:CkDeSKDqO
>>524
妄想乙
つか、IDwwwww
529 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:05:42.17 ID:JDSauTrEO
>>524
IDすげええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇwwwwwww!!
きりりんスレも100だし、今夜は奇跡が起きてるぞ!!!!!
>>527
!?
530 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:06:11.35 ID:XoViTQmnO
>>524
>>527
ねーよwww
きりりんは特別ブラコンなんだぜ?
あそこまで愛された天使がこの世界に他にいるとか……
……嘘、だよな?
マジだったら、俺、俺……(´;ω;`)
531 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:08:21.57 ID:AIuymFPzO
100スレ記念と思って、いつも通りきりりんに兄パン投下に来てみれば
事 情 が 変 わ っ た
>>530
涙拭けよ、その涙はきりりんが兄婚する時までとっておくんだ。
532 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:09:02.03 ID:mJbuCHowO
チクショー
>>524,>>527の話を聞いて、俺も妹にチョコくれって言ったら
「てめーは〇ンコでも食ってろよwww」って言われた
533 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:10:11.26 ID:OdXraLeDO
お前は泣いていい
534 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 20:10:42.55 ID:KDyosdKjO
これはkskするわなw
まさかリアルに、手作り兄妹チョコとかあんのかよwwwww
お裾分けならまだ分かるが、ガチなんだろうなー
きりりんも嬉しいんじゃね?こういうの聞けたら
このスレ伸びるな、間違いない
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1000 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/14(火) 21:51:06. ID:UpSbVIxTO
1000なら、>>524と>>527が高坂兄妹で、妹婚成就!!
お わ り
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最終更新:2012年02月16日 07:00