275 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2012/02/17(金) 14:31:35.33 ID:KHRSbFoC0 [1/2]
SS『バレンタインの後で』


バレンタインの喧騒から数日たった今日、わたしは桐乃の家に遊びに来ていました


「ねっ、ねっ!カワイイでしょ!?」
「う、うん・・・」
「めるちゃんマジ天使杉wwwふひひwww」

・・・わたしが何をしているかと言えば
桐乃の大好きなアニメ『星くずういっちメルル』を見せられている所です・・・

元はと言えば、確かにわたしが悪いんです。
桐乃が音楽を聴きながら『世界一かわいいよぉ!』とか悶えてる所に、
『ねぇ、それって星野くららさんの歌だよね?』なんて反応してしまったわたしが・・・


・・・・・・・・・でも、もう、通算10回目だよ・・・桐乃・・・・・・・・・
・・・・・・・・・飽きないの・・・・・・・・・?
でも、他のにしようなんて言ったら、桐乃怒っちゃうし・・・


「ただいまー」

と、そこに(今回だけは)救世主が訪れました。

「あ、京介帰ってきた」

桐乃は、桐乃の言う『一番の名シーン』もそこそこに、パソコンの電源を落とします。
最近の桐乃はいつもこう。お兄さんの事ばっかりです。
なんか、桐乃の中の重要度が、
『お兄さん>>>|超えられない壁|>>>アニメ≒わたし>>>|超えられない壁|>>>他』
になっている気がして悲しいです・・・

そして、頭の中でこんな事を考えるようになってきたわたしも、ずいぶんと染められてきた気がして悲しいです・・・

「桐乃、入るぞ?」
「ん」

そんなわたしの悩みもよそに、お兄さんは部屋に入ってきました。

「おっ、あやせか。ひさしぶりだな」
「お久しぶりです。お兄さん。今日はお邪魔しています」
「ああ。それと、桐乃。メールで頼まれてた飲み物買ってきてやったぜ?」
「見りゃわかるっての」
「じゃ、俺はこれで退散―――」
「ちょっと待ってよ。あやせから、あんたにプレゼントがあるんだから」
「な、なに・・・?」

そうでした。すっかり忘れかけてましたけどバレンタインのチョコを持ってきたんでした。
でも、お兄さん。なんでそんなに怯えているんですか?

「はい、お兄さん。遅くなりましたけど、『義理』チョコです」

わたしはデパートで買った、ほんの少し高いチョコを差し出します。

「あ、ああ・・・なんつーか、ホッとした」
「・・・一体、何を想像したんですか?」
「い、いやっ!食べられるモノで、よかったな・・・って」

ああ、そう言えば・・・今年も・・・桐乃のチョコを食べたんですね・・・
でも、桐乃には悪いけど、わたしはそんなに料理下手じゃないですからねっ!
それに、手作りチョコをお兄さんにあげるなんて気持ち悪いですから。

「実はな、麻奈実からも、創作チョコらしきものを貰ったんだが
 小豆チョコっつーの?甘すぎて死にそうだった・・・」
「あんた、相変わらず貰ってんだ」
「それに、黒猫からのチョコは、カカオ99%・・・アイツも何考えてんだ・・・」
「どうせ漆黒のチョコだとか厨二病発症してんでしょ?」

ふんっ、桐乃とおねえさんとわたしを見なかったお兄さんには相応しい結末です!
それはそうと、帰ったら現場を拡張しておかないと。あと、ドラム缶と速乾性のセメントの調達と・・・
そういえば、泥棒猫ってカカオ中毒で死ぬんでしたっけ?
お兄さんにあげたのと同じものを致死量分、数十個口の中にぶち込んでみましょうね。

「沙織はチョコレート型USBライトとか送りつけてくるし、
 お袋はお袋で、どこからかワサビ入りチョコなんて買ってくるしよっ!」

さすがに不憫に思えてきました。
でも、どれもお兄さんの日頃の行いから来ているので自業自得ですよね。

「そんなわけで、まともに食い物くれたのはおまえだけだぜ?あやせ」
「ちゃんと感謝してくださいね。それと、お返しは10倍以上を期待してますから」
「じゅ、10倍かよ・・・」

当然です。

「ねえ、さっきから気になってたんだけどさ?」
「ん?なんだよ、桐乃?」
「あたしのプレゼントはどうしたのよ」

そう言えば、確かに、直接は言ってないですね。

「そ、そりゃぁ・・・」
「ちゃんと食べたんでしょうね?」
「た、食べ!?・・・い、いや、ま―――」
「はぁ?あんた、妹のモノを食べられないっての!?」
「ま、待てっ!そもそも、『アレ』は食べ物ですらねぇっ!?」

お兄さんったら、なんてこと言うんですか!
今年も丸っこい炭化型チョコレートの一種だったのは確かですけど・・・
でも、そういう言い方はないんじゃないですか!?

「・・・じゃあ、すくなくとも味わいは、したんでしょ?」
「・・・・・・・・・した・・・」
「10枚全部?」
「ああ、全部・・・」

・・・10枚・・・お兄さん・・・

「で、味は?」

き、桐乃・・・そんなに真っ赤になってまで聞かなくても・・・
さすがに、それを聞かれるお兄さんも、ちょっと可愛そうな気がしてきました。
だって、お兄さんも、真っ赤な顔になってますし・・・

「その・・・全部、味も匂いも違って・・・なんつーか、おいしかった・・・」
「・・・わかった・・・」

あれ?なんか空気が・・・

「と、ところで、おまえもお返しは10倍がいいのか?」
「う、うん。あたしも10倍、期待してるから」

気のせいだったんでしょうか?
会話は・・・普通ですよね?

「それと・・・桐乃」
「ない、京介?」
「来年は・・・中身も期待して、いいんだよな?」
「う・・・うんっ!」

うれしそうな桐乃。
やっぱり、お兄さんに褒めてもらうのが一番大好きなんですね。
わたしは、二人に気がつかれないよう、静かに部屋から出て行きました。





ところで、時間が経つうちに、よく分からないですけど、何か急に加奈子を埋めたくなってきました。
考えれば考えるほどに、お兄さんの事も埋めたくなってきている気がします。
チョコレートの話をしているだけのハズなのに、なんでしょう?
誰か、桐乃スレの方、理由を教えていただけませんか?



End.




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最終更新:2012年02月25日 07:47