416 :すてきなおくりもの【SS】前編:2012/03/11(日) 18:29:53.33 ID:kPqGLMvfO
あたしたちの目の前にそびえ立つのは東京タワー。 今日は京介を連れて遊びに来ている。
えっ? いいじゃん別に。だってタワーに桐乃と行けないと俺寂しくて死ぬかも……って、アイツ思っていそうだから誘ったわけ。
東京タワーのてっぺんは、あの日の大きな揺れでに曲がったまま、今もその姿のままだ。
今日、二人でタワーに来てるのは、あの震災とちょっと関係あったりもする。
「さて、昇るか」
「その前に買い物買い物」「買い物は後でいいだろ、別に」
そう言うあいつにあたしは近くのポスターを指差す。
「塔の日記念大ビンゴ大会……だと……」
今日、3月10日はごろ合わせで「塔の日」。そこで買い物をした人が参加できるビンゴ大会があるのだ。
その商品に「ある物」が入ってるのを知って、あたしは俄然テンションが上がっていたのだった。
ぶじビンゴカードをゲットしてビンゴ会場に向かう。特等は有名ホテルのディナー招待券など豪華だが、あたしの狙いはもちろん……「…さあ、次の商品は大人気アニメ『星くず☆ういっちメルル』の映画招待券と豪華グッズ福袋です」
「キタキタキターー」
「おちつけよ桐乃」
うまい具合にあたしのビンゴカードは今リーチ状態なわけ。これなら……
「次の番号は23番! 23番号です!!」
「ビンゴ!!!」
やったやった。あたしは喜び勇んでステージに上がる。ところが……
なにやら悲しそうな顔をした女の子とお母さんが壇上に向かってくる。どうやらあの子もビンゴらしい。
「お母さんどうしよう、あたしジャンケンよわいから」
「大丈夫よ。がんばって」
ビンゴ大会のルールでは複数の人が同時に当たった場合はジャンケンになる。あたしはあの子とジャンケンをして勝てば、商品をゲットできる。でも……
思わずあたしは京介の方に顔を向ける。あいつは
「お前のやりたいようにやれ 」
そう言ってくれたような気がした。
「すいません。あたし辞退します。商品はこの女の子に上げてください!!」
「えっ、でも、いいんですか?」
「いいです。ねえ、おねえちゃんもメルル好きだよね」
「うん!! だいすき!!」
「ならよかった。この子に上げてください」
「わかりました。ではメルル招待券と福袋はかわいいお嬢ちゃんの当たりです!!」
「ありがとうおねえちゃん!!!」
女の子の本当に嬉しそうな笑顔を見て、あたしは満足した。もう一度京介の方に顔を向けると、あいつは
「よくやったな」
今度はそう言ってくれたような気がした。
「では商品を譲っていただいたお嬢さんには次の商品を差し上げますね」
あたしが貰った商品は、有名な和菓子店が作ってる『夫婦まんじゅう』だった……
まあそれはそれとして、ステージを降りたあたしを見て、黙って頭を撫でてくれたあいつのことがあたしは、あたしは……
とりあえずこの先の気持ちはまだ内緒にしておく。
417 :すてきなおくりもの【SS】後編:2012/03/11(日) 18:31:03.33 ID:kPqGLMvfO
ビンゴ大会が終わって、外はすっかり暗くなった頃、あたし達はまだタワーの足下にいた。今日ここに来た理由の二つ目を見るためだ。
オレンジ色に輝いていたタワーの明かりが消え、暗やみに包まれる。しばらくしてタワーに浮かび上がったのは
『KIZUNA NIPPON』の文字
復興支援と団結を呼び掛けるために、昼間に太陽光電池で貯めた電力で光ってるとの話だった。
「絆かあ、あの地震があって、いろいろ人と人との絆を感じることが増えたよな」
「そうだね」
もちろん地震の時もそうだけど、あたしと京介の間の絆は、いろんなことを経験して、より深まったんだと思う。
それまでの関係を取り戻すように……
えっ、それはもはや愛だろって? その辺りはあたしからはノーコメントだかんね!!
さて、ようやくタワーの展望台に上がれる。スカイツリーの営業開始が間近に迫ってきたけど、やはり東京タワーの人気は半端じゃない。
京介に密着する形で変にドキドキしながら、満員のエレベーターは登っていく。でもあいつは何もしかけてこなかった……
あたしからしかければよかったかも。これは次回の課題にしておくことにする。
夜に展望台に来るのは初めての気がする。輝く夜の東京は本当に綺麗だった。
展望台には神社もあって、カップルで絵馬を納めることもできるんだけど、まあ、これも次回の宿題にさせてもらうことにして
あたしは最後の目的の為に売店に向かう。
「はい、これ。プレゼント」
「ん、なんだなんだ?」
「いいから黙って受け取る」
「おう、ありがとな。開けてみるぞ」
あいつの手の平の中には、輝く東京タワーがある。
知ってる人もいるだろうけど、有名な歌に、金色の東京タワーの鉛筆削りをプレゼントする歌詞がある。これをやってみたかったのだ。
「ほら、受験の時、合格祈願の鉛筆使ってたじゃん。
合格しても、まだまだ鉛筆使えるし、うちの鉛筆削り壊れかけてるからちょうどいいと思って」
「そうだったか、サンキューな」
とりあえず目的はすべて果たせた。心地よい余韻を残しながらあたしたちは展望台を後にする。
「なあ、ちょっと歩かないか」
あいつがそう言うんで二人でぶらぶら帰り道を行く。
「桐乃、プレゼントありがとな。だから、次は、次はだな……」
「何? はっきり言えばいいじゃん」
「わかった。じゃあ、次は俺の夢の番だな
桐乃………好きだ……」
この後で何が起きたかは皆のご想像におまかせしとくから。
そうそうひとつだけ、
あいつの夢の一つに日本一スカイツリーで妹婚式ってのがあったから
その後の旅行は世界一高いドバイのブルジュ・ハリーファに行くのはあいつに約束させてやった……
-------------
最終更新:2012年03月12日 10:15