939 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/04/22(日) 10:27:46.64 ID:qqoYkbTG0
――何だこりゃ。
ふと気付くと、何やら異様な光景が目に飛び込んできた。
一度しか言わないから、よく聞いてほしい。
桐乃さんが、あほほどいる。
――何だこりゃ!
異様どころじゃねえ! ウジャウジャいるこええ!
あたり一面、桐乃さんで埋め尽くされている。
「――京介――」
…桐乃?
おまえ、どこにいるんだ?
俺はどこから聴こえたかも分からないまま、歩き出した。
「桐乃っ!」
桐乃さんだらけの中、声がきこえてくる。
「お兄ちゃん、大スキっ!」
これは… エロゲのキャラか。ちげえよ、おまえじゃない。
「ふひひひ……みやびちゃ~~~~ん♡」
っておい桐乃!何っつー夢見てんだ!つかどこいんだ!
「京介って、桐乃の兄貴じゃね?」
そうだよメルルもどき。
「くららちゃんが! めるちゃんが!
あたしの声やってるよおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ちょ、おま……だからどこにいんだよ、桐乃!
「おにいちゃん、って、呼んだ方がいい?」
やめてくれええええええ! おまえに呼ばれてどうすんだ!
「……ばか兄貴」
俺は走り出す。
……どこにいる? 桐乃!
「ウチのお兄ちゃんの方が、シスコンです!」
俺の妹の方が可愛いっつーの。
「『ビッチさん』のお兄さんでしょ?」
そうだがそうじゃない。ビッチさんて。殺すぞ。
「おにぃちゃん えへへ」
可愛いなくそ。いや可愛いけどさ。
「あーあ。 ったく――やれやれだぜ、しょうがねーな」
桐乃っ? 誰の真似だよ、ったく。どこだ!
「京介、あなたはどうするの?」
すまない。今、桐乃を探してんだ。桐乃っ!
「あたしは京介に彼女ができるのなんで絶対イヤ。
だけど、兄貴が泣いているのはもっとイヤ。」
……桐乃っ!
「お兄さんっ!」
違う、どこだ桐乃は! 桐乃っ!
「ばかじゃん?」
「ひひ、まじきもーい」
「あのさ……」
「マジで? サンキュー!」
「うっさい! 死ね!」
「京介の邪魔すんなぁっ!」
『ウザイ! キモイ!』
『がんばれ』
「はいはい、言ってればー」
「は? 何様?」
「おかえり」
「――死ね」
「えー?」
「……桐乃おぉーーーーーーーーっっ!」
俺は背中に受けた衝撃で目を覚ました。
ベッドから落ちたらしい。
……ヘンな夢見たな。
ベッドに腰掛けると勢いよく部屋のドアが開いた。
「京介! ど、どうしたっての?」
桐乃だった。
「いや、どうしたって… 寝てたらベッドから落ちた」
「はぁ? そ、そんだけ?」
「ああ、ヘンな夢見ててな…」
「ヘンな夢って?」
「いや……」
俺は黙って桐乃の顔を見る。
「な、何よ…」
「何でもね。つかおまえエロゲグッズ片付けてくれよ。」
「……片付けたじゃん」
「まだ全然残ってんじゃん」
「別にいーじゃん。てか朝から何事かと思ったら…
あんたって本当人騒がせだよね」
テキトーな会話をしながら、俺はここに帰ってきたってことを
何となく実感していた。そういえば……
「ただいま」
「は?」
「そういや言ってなかったなって」
「――ばかじゃん?」
そっぽを向く桐乃。
「おまえの新しい髪型、セット前だとそんななのな」
「んなっ…」
「でもやっぱ似合ってるわ」
「う、うっさい! ばか!」
素直に誉めたんだが、桐乃は顔を赤くして部屋から出ていった。
相変わらずだな……
と思った直後、あの時の自分の台詞を思い出して
照れくさくなってしまうのだった。
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最終更新:2012年04月22日 21:22