345 : 名無しさん@お腹いっぱい。: 2012/04/24(火) 23:38:57.73 ID:GnNmg+5S0
SS『はじめてのことば』
桐乃と結ばれてから、もう10年近く経った。
色々な事が起こり続けたこの10年だったが、
何より嬉しかったのは、去年、ついに娘が生まれた事だ。
生活の安定、子供の遺伝のリスク、世間体の問題、生まれてきた子の法的位置づけの問題etc・・・
様々な問題が目の前に山積しており、これまで中々一歩を踏み出せなかったのだ。
だが、ついに俺たちはそれを乗り越えた。
桐乃も俺も、全てを受け入れる覚悟が出来たのだ。
幸いな事に、生まれてきた娘には何の異常もなく、毎日すくすくと成長しているのが実感できる。
本当に小さかった娘も、体重は3倍くらいまで増え、背もだいぶ伸びた。
それに、寝返りからハイハイ、掴まり立ちと、だんだん自分で動けるようになってきて、
そして今では、ほんの少しだけど歩けるまでになってきた。
こんなに可愛らしく愛おしい人が桐乃以外にも出来るなんて、10年前の俺では想像も出来なかったはずだ。
もちろん、全部が全部良い事だけじゃない。
まず、毎日泣く。『毎日のように』どころじゃない。昼も夜も関係なく泣く。
そして、おしめの交換に食事の時間。
桐乃も仕事をあまり休んでいないため、時には俺の仕事場で娘の受け渡しなんかをやったりもしてる。
幸い、上司や同僚が寛容だったんで助かったんだが・・・恥ずかしいったらありゃしない!!!
それに、定期・任意の健診や予防接種etc・・・
子供を持つ事がこれほど大変な事だって、体験してみて身にしみて分かった。
親父やお袋が、桐乃だけじゃなく、俺の事を本当に大切にしてくれたって、
この年になって、ようやく本当の意味で実感できた気がする。
そんな感傷に浸りながら、今日も仕事を終え帰宅する。
「ただいま」
「おかえりなさい。あなた」
家に帰り着くと、娘を抱きかかえた桐乃が迎えてくれる。
メシも美味いし、器量も良い。本当に良く出来た嫁だと思うよ。
つーか、俺が言うのもなんだが、桐乃は本当に美しくなった。
はっきり言ってしまえば、もはや桐乃に比肩し得る女なんて存在しないくらいだ。
あのラブリーマイエンジェルですら、比較の俎上に乗るかと言われれば、『否』だろう。
そして、世界で一番愛おしい、俺の娘。
「だぁーだぁ」
「ほら、パパが帰ってきて嬉しいのよね~」
まだちゃんと言葉を話す事は出来ないが、それでも徐々に言葉がはっきりしてきたのが良く分かる。
もうすぐ言葉を話せるようになるだろうか。
そしたら1歳の誕生日には、何をプレゼントしてあげようか。
そう思うと、とたんに顔がにやけてきてしまう。
「そうそう、きょうす・・・あなた?」
「ぷっ!・・・相変わらずだな」
「もうっ!」
実は、子供を生むことにしてから、桐乃は俺の事を『あなた』と呼ぶ事にしたらしいんだが、
昔のクセってのはなかなか治らないもんだよな。
「それでね。実は・・・言葉が言えるようになったの!」
「マジか!?」
先ほどの言葉は訂正しなきゃならないようだな。
もう、言葉が喋れるまで成長したなんて・・・
子供の成長ってのは、ほんと、早いもんだな。
「じゃ、もう一回言ってみようか~?」
桐乃は、優しく娘に語り掛ける。
こうしてみると、本当に二人の天使がこの世に降臨したかのようだ。
「ほらっ、ぱ~~~」
「ぱ~~~」
おおっ?
これはもしかして、『パパ』って呼んでくれる―――
「ぱんつっ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ほらっ!すごいでしょっ!
ねぇ~、パパも喜んでるわよ~♪」
「ぱんつっ、ぱんつっ♪」
俺の目の前には無邪気に『ぱんつ』を連発する、俺の娘。
そして、それを見て無邪気に笑う、俺の嫁。
一体どうしてこうなった!?
「それじゃまたご飯を食べたら、一緒に兄ぱんくんかしましょうね~♪」
「ぱんつっ、ぱんつっ♪」
まあ、それでも・・・
こんなに愛おしい二人に囲まれて、俺は幸せ者なんだろうな。
End.
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最終更新:2012年05月06日 17:01