9 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/13(日) 22:09:22.96 ID:ab2rnx7Z0
『ある日のこと』
「ただいまー」
「おかえりなさい」
家に帰り着いたあたしは、お母さんと一言二言会話して、すぐに2階に向かう。
別に、急ぎの用があるわけじゃないので、音を立てないように手早く階段を上がる。
そして、玄関に靴があったから、そっと部屋のドアを開ける。
これが最近のあたしの日課だ。
部屋の中では京介が机に向かって必死で勉強している。
あたしの妹ゲーフィギュアに見向きもしないのがムカツクけど、でも、なんか、かっこ―――
えーと、ま、まあ、勉強してんのはエライんだけどさー
やっぱ、努力が足りないよねー
そんな事を考えていると
「おっ、桐乃?帰ってたのか?」
「えっ・・・た、ただいまっ!」
な、なんで気が付くのよっ!
せっかく、音を立てないように気をつけてたのにっ!
「・・・で、なんか用か?」
「べ、別にっ!あんたの事見てたわけじゃなくって、
あんたがちゃんと勉強してるかのチェックに決まってるっての!」
「そっか・・・心配してくれてんだな。ありがとな」
バカッ!なんでこんなときに、そんな事・・・恥ずかしいじゃんっ!
でも、本当に普通の言い方なのがちょっと寂しくもある。
それも京介なんだよね。
他の人に凄く優しい。でも、自分に関わる人の事には凄く鈍感。
「とりあえず、ちゃんと勉強してる事はわかったから」
「ああ・・・その、なんだ」
「何よ」
「これからも、ちょくちょく監視に来てくれよな?」
あたしは、それに答える代わりにこう言った。
「参考までに聞いておくけどさ。あんた、なんであたしに気が付いたの?」
「ん?そりゃ簡単だ」
えっ、簡単?
あたし、何かミスして音立てたりしてたっけ?
それとも、このドアって意外と視界に入ってるとか?
「なんかさ、勉強に集中してたんだけど、急に凄い良い匂いがして、
振り返ったらお前が見てたんだ」
「キモッ!」
つい、言葉と一緒に、叩きつける様にドアを閉めてしまった。
ドスドスと足音をさせながら自分の部屋に戻る。
でも、今回は京介が絶対に悪い。
あたしの・・・匂い・・・とかっ!!!
ちょっと気になって、自分の匂いを嗅いでみる。
運動してきた事もあって、少し汗の匂いがするかもしれない。
やっぱり制汗剤だけじゃダメっぽい。
次からは、あいつの部屋に行く前にお風呂に入っ・・・
お、お、お、落ち着けっ!あたしっ!
べっ、別に、京介と■■■■する準備とかそういうんじゃなくって!
京介に、あたしのからだの匂いを嗅がれてもいいように・・・って
違うっ、違う違う違う違うっ!
そんなえっちな意味じゃなくって、
単純に、京介の部屋に行く準備なだけで・・・
だ、だからっ!別に、京介と■■■■する準備とかそういうんじゃなくって!
(―――ループ中―――)
・・・し、死ぬところだった・・・
腹上死とかテクノブレイクとか、聞いたことだけは有るけど、
想像だけで死んだらどう言われるかわかったもんじゃない。
さすがにそんなみっともない死に方だけはしたくないので、何とか気分を落ち着かせる。
こんなときは、あやせか黒猫のメールでも読んでみれば冷静になれるかも・・・
でも、携帯には着信履歴がなかったので、メーラーを起動した。
「おっ?」
着信があったのは・・・リア?
『 キリノへ
やっほー、キリノー、げんきー?
あたしはげんきー 』
すごく適当な日本語だけど、リアなりの気持ちが込められていて嬉しい。
『ねー、聞いてよキリノー?
あたしさー、またきろくこうしん!?
今どは11びょう43?
すごいでしょー?えっへん!』
つーか、リア、また早くなってんだ。
まだまだ、ジュニアのトップの人たちとは差が有るけど、それでも小学生とはとても思えない速さだ。
あたしの公式最高記録、11秒87じゃ、まるで敵わない。
いつかの参考記録・・・あんまり思い出したくない時のだけど・・・11秒59でも、全然届いて無い。
『で、キリノの方はどう?』
あたしか・・・
帰国後もほんの少し、伸びたけど・・・
でも、リアの伸びに比べたら殆ど伸びてないに等しい。
もちろん努力は続けてる。
でも、結果が出ないなら、言い訳にしかならない。
『もちろんさー陸上のことじゃないよー?
だって、あたしがキリノなんかに負けるわけないしー』
こっ、このクソガキっ!
『で、たんとーちょくにく?にきくけどさー?』
・・・あーもう、はいはい。
桐乃おねーちゃん、なんでも答えちゃうからねー
『もう、おにいちゃんと■■■■した?wwwwwwwww』
・・・・・・・・・
ムッカ・・・っつくぅぅぅぅぅーーーーー!!!
つーか、何?なに草生やしてんの!?
『ま、むりだとおもうけどぉ
できるもんならやってみてってカンジぃ?
P.S.
おにいちゃんにもメールおくったから、そっちもよんでみてね~~~^^』
こっ、この上から目線っ!!!
リアル妹なんて、ホントろくなもんじゃないしっ!
ほんっっっっっっとムカつく!!!
それにしても、メール見て、もっと興奮するなんて思わなかった・・・
仕方が無いので、あたしは最後の手段―――お風呂に入る―――を採ることにした。
・・・一応、お風呂から上がったら、京介の部屋に、行こうかな・・・
End.
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最終更新:2012年05月19日 15:22