15 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/05/28(月) 02:34:09.21 ID:ugeegz720
桐乃「だーかーら! なんでそうなんのっつってんの!
ここまで来といて、んな駆け引きみたいなのいらないっての!」
京介「さっきもこれ選択したじゃねえか! 分岐の回収だか知らんが
同じことやってたら意味ねえだろ!」
桐乃「問題はその次の選択肢っしょ? ほんっっっっと、分かってない!
……これだから年齢=彼女いない暦は!」
京介「っはぁっ!? う、うるせえっ! おまえに言われたくねえよ!
そう言うおまえだって…」
桐乃「んなっ! 何言おうとしてんのよ、このシスコン!」
京介「いっ…! てめえすぐ蹴ってくんなよ! やってられっか!」
桐乃「あ、っちょ……! ま、待ちなさいよ!」
――バタン!
……はい、よくあるよくある。
一緒にエロゲー→俺何かミス→桐乃マジギレ。はあ、脇腹がいてえ…
今日は特にヒドかった……もう二度とやらねえ。
わめく桐乃を置いて部屋に退散した俺は、早々と寝ることにした。
くそっ……ほんっと、変わらねえな。あーあ、ったく…
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……眠れねえ。何でだ。もう1時間は経ってるんだが……
さっきのケンカで感情が昂ってるのか?はぁっ……
――ガチャッ…
あ?
桐乃「京……介……」
……桐乃……何でおまえはいつも寝てるときに……
桐乃「京……介……?」
……何だかな。返事しちゃいけない気がする。
つってもなぁ……結局ビンタで起こしにくるってパターンだからな…
って考えてる間にこっち来やがった……まあ寝てるフリするか。
ギシッという音と共にベッドのフチが沈む。ああ、またかよ……
俺は目を瞑ったままビンタを構える桐乃を想像した。
だが……
…………………………………来ない。
気付かれないように、薄目を開ける。暗くてよく見えないが……
………桐乃、が………横になってる……?
桐乃は少し震えてるようだった。俺と向かい合う形で……
桐乃が、動いた。何だ、何を………その直後……
きゅ、と、俺の服の裾をつかんできた。
つかむと言うより、つまむと言うべきか。何か……遠慮げな。
そしてその手は……震えていた。
桐乃「京……介……」
京介(……………)
桐乃「……ばか…」
京介(……………)
桐乃「………………………ごめんなさい……」
それは………本当に消え入りそうな声で……
こいつからそんな声を聴いたことはなかった。
桐乃はその台詞を言って少しすると……こっちに近づいてきた。
そして呼吸の音がすぐそこに聴こえるとこで止まって、
手を、裾から離し、腕を折って……
俺の腹のあたりに添えた。
桐乃「……ご……ごめん……なさぃ…」
京介(……何だよ、)
桐乃「……ごめんな、さぃ……」
京介(……何なんだよ、そんな声、おまえが……!)
桐乃「……ぁた、あたし……ごめん……なさい…」
京介(………やめろっ…)
桐乃「………何でこう、なんだろ……ごめん…な…さぃ…」
京介(……っ!)
俺は桐乃の頭を抱えて、引き寄せた。
桐乃はビクッと体を強張らせて、固まった。
……俺は耐えられなかった。泣きそうな声で、こんな台詞を言う桐乃に。
無言の時間が流れる。桐乃はまだ、震えている。
俺はそっと……桐乃の頭を撫でた。
その丸い頭は確かに、桐乃の頭だ。………そんな当然のことを考えながら。
そのまましばらくすると、桐乃の体の強張りは少しずつ解けていった。
呼吸で体が小さく膨らみ、縮む。それと温もり。
桐乃は顔をおれの胸に埋めた。
鼻先が当たり、くすぐったい。
そして腕を回して抱きつく、というよりしがみついてくる。
こんなに愛しいものがあるだろうかと思った。
その瞬間、その空間は俺達だけのものだった。
無言が作る言い訳に支えられた、偽物だったとしても。
きっと朝になると、いつも通りで。
またケンカしてウザがられてキモがられて。
そんな日常に、埋もれてしまいそうなもの。
見えにくくなってしまっても。
俺は決して、手放さない。
きっと。ずっと。
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最終更新:2012年07月05日 08:59