707 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/08(水) 17:01:33.18 ID:l1mV47um0

(※僕は友達が少ないのパロディSSです 桐,京,黒,あ,加,ブ,リ,瀬)


「―――んぱい。正気に戻ってください高坂せんぱい。・・・えい」

バサッ

「~~~~~~!?」

俺の視界に、筋肉質の男達がくんずほぐれつしている絵が入り、
朦朧としていた意識は一気に現実に引き戻された。
無論、くんずほぐれつというのは出来る限りソフトにした表現だ。
そのガチムチ本を俺に見せ付けてきた犯人は隣に座っていた。

「ふふふ・・・お兄ちゃん以外で簡単にイかせはしませんよ、高坂せんぱい」

一見真面目そうな委員長風の眼鏡っ娘―――赤城瀬菜は、
どこか狂気を孕んだ、ひきつった薄ら笑いを浮かべながら、息も荒くそう言った。

「・・・楽しい幻覚を見ていた・・・」

遠い目をして俺は言う。

「ど、どんな妄想だったんですかっ!やっぱりお兄ちゃ―――」
「あやせと黒猫が笑顔で戯れてた」
「ありえない光景ですね」
「ありえないとまで言うか・・・」

だが、まあ瀬菜の言う通りだった。
あの二人が仲良く笑顔で遊ぶなどあり得ない。
げんに今だって、

「そろそろ辛くなってきたでしょう?降参したほうが身のためですよ・・・」

黒髪の美少女―――新垣あやせが、血走った目をして言う。

「ククク・・・あなたこそギブアップしたら?息があがってるわよ」

これまた黒髪の美少女―――五更瑠璃、通称黒猫が、
あやせと同じく血走った目で狂気に満ちた笑みを浮かべる。



・・・現実の俺たちがいるのは地獄だった。



このイベントが始まる前までは小奇麗だった俺の部屋。
全部で8人の人間が、部屋の中央に置かれたテーブルを囲んでいる。
テーブルの中央には、密封されてるにもかかわらず異臭を放つ、何枚かの布切れ。
俺の右隣には瀬菜が座り、左には『あるちゃん』のコスプレをした金髪の少女と、
褐色の肌を持つ元気そうな少女が折り重なるように倒れている。
金髪の少女はブリジットちゃん。褐色の少女がリア。

「・・・めるちゃん・・・めるちゃん・・・魔星物が、魔星物が来るよぉ・・・」
「お兄ちゃんどいて、そこ走れない・・・」

どちらも悪夢にうなされているらしく、苦しそうな顔でおかしな寝言を言っている。

瀬菜の隣には黒猫。
ブリジットちゃんとリアの隣には桐乃。
そして、その隣にはあやせ。
あやせと黒猫の間に挟まれるようにして埋まっているのは、メルルコスをした少女―――加奈子。
加奈子は黙々と機械的に、布切れを机と鼻の間で往復させている。
往復させているだけで、さっきから何も嗅いでいない。
加奈子の目は焦点を失い完全に死んでいた。

「加奈子・・・おまえまで逝ったか・・・」

鎮痛な面持ちで俺は呟いた。

「ほら、お兄さん。お兄さんも嗅いでください・・・」
「ククク・・・早くしなさい。勝負はこれからなのだから・・・」

あやせと黒猫がともに目に狂気を浮かべて俺に言った。

「うう・・・」

俺は泣きそうな顔で、手を机の上の布切れに伸ばす。
机からは、甘いような臭いような酸っぱいそうな、
とにかく異常な不快感をもたらす異様な匂いがただよっている。

「・・・なあ、これ本当に大丈夫なんだよな?」
「はぁ?あんた何言ってんの?大丈夫どころか体にもいいんだよ!?
 これまで15年間嗅ぎ続けてきたあたしが言うんだし、間違い無いにきまってんじゃん!」

完璧な自信をもって、桐乃が答える。



俺たちが何をやっているかといえば―――『兄ぱんくんか』だった。



ことの発端は数日前。
このメンバーが家に遊びに来た際に、桐乃がうっかり盗んだ兄ぱんを落としてしまい
それをあやせたんがたまたま見て「なんでお兄さんのパンツなんて集めるの?」と言った。
それに対し、桐乃は「兄ぱんって美容にも健康にもいいし、とっても気持ちがいいんだよ!」
などと言い出した。
俺は悪い予感しかしなかったのだが、「美容」と「健康」あたりが女性陣の琴線に触れたのか、
結局皆で嗅いでみようという話になってしまったのだ。



・・・そして現在。
桐乃が楽しそうに何処からか持ってきた俺のパンツはえもいわれぬ悪臭を放ち、
その見た目と、前に俺がはいていたという事実も相まって、世にもおぞましいものへと成り果てていた。

みな楽しそうにしていたのは、桐乃がパンツを持ってくるまでで、
ごく一般的な部屋の匂いが異臭に変わり始めると全員の顔から笑顔が消えた。
みんなでいっせいに兄ぱんを嗅ぐごとに、場の雰囲気は険悪化。
ブリジットちゃんとリアの年少組は開始10分でダウン。
特にあやせと黒猫は、

「あ、あなたが兄ぱんくんかなんて漫画を書くから・・・!」
「そもそもあなたが『なんで集めるの』なんて質問するから!」

・・・こんな感じで責任を押し付けあう始末。

いつの間にか『最後まで生き残ってた人が俺との相性が最高』
という意味の分からないルールが決まっていた。

そして今また、加奈子が逝った。

幸いにして俺は『10才誕生日記念』とか『おにいちゃんとのはじめてのでーと(5さい)記念』とか、
比較的まともなパンツばかりを引き当てて生き残ったのだが、
さっきは部屋中に充満する不快な臭いのせいでトリップしてしまったのだ。
『自分のお兄ちゃんで経験済み』瀬菜も幸か不幸か生き残ってるが、その目は既にヤバめ。

俺と瀬菜は同時にパンツを取り、鼻に当てて一気に臭いを吸い込む。
・・・臭いそのものはキツイが、これなら嗅いだことが・・・ただの・・・
ただの、なんだこれ・・・アンモニア臭?
一方、瀬菜は何かヤバいものが当たったらしく、

「・・・あたしの記憶からすると、この臭いは・・・・・・・・・
 お兄ちゃんの部屋のティッシュ」

それっきり瀬菜はぴくりとも動かなくなった。

「・・・おい、なんだよ、ティッシュの臭いって!?」

やっぱり兄ぱんくんかなんて、俺の妹だけがしていいものだったんだ。
俺の妹じゃない娘たちが手をだして良いジャンルじゃなかったんだ・・・
なぜあの時止められなかったのか・・・
俺が後悔していると、

「では次ですね・・・」
「わかってるわ・・・」

互いに脂汗を流しながら凄絶な笑みを浮かべあやせと黒猫が睨み合う。
俺も仕方なくパンツをとり、三人一緒に鼻に当てる。
揃って息を吐き出し、鼻から吸って―――

「・・・・・・・・・ぉ・・・ぉ・・・ぉ・・・・・・・・・っ」

白目を剥いて、黒猫が逝った。
それを間近で見ていたあやせは一瞬だけ勝ち誇った顔を浮かべた直後に顔を蒼白にし、

「・・・う・・・・・・ぅえっ・・・・・・」

緊張の糸が切れたかのように倒れこむ。

「うわっ、ちょ、お前らほんとに大丈夫か!?」

ちなみに頭が大丈夫でない事は重々承知している。
・・・う・・・俺のパンツの臭い・・・汗くせぇ・・・
俺まで逝きそうだったので、慌てて部屋の窓を換気し外の空気を吸う。

「ちょっと、あんた何してんの?匂いが逃げちゃうじゃん」

そして一人満足そうに兄ぱんを嗅ぎ続ける桐乃をどうにかするために、桐乃をつれて部屋を出た。

どうしよう・・・あいつらにちゃんと報告できるかな・・・



End.



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最終更新:2012年08月10日 23:21