859 :名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/10(金) 23:18:16.21 ID:8cWvu95V0


あれから、どれくらい時間が過ぎたのか分からない。
あいつの手が伸びてきて、あたしの髪に触れて。
やっぱり、びっくりしたけど。

もうずっと髪を触られて……
いつの間にか、こんな近くにいる。
もうあたしの髪とあいつの髪が触れてるくらい。
あいつは髪を撫でるだけじゃなくて、
指に巻いたり、挟んで滑らせたり……
ふいに、軽く髪が引っ張られた心地良い刺激が。

あたしはつい、顔を上げてしまう。
あいつと目が合った。あいつは……

ちょっとびっくりした顔で、目をそらすんだと思ってた。
でも見てて……
たまらずあたしの方が視線を下ろす。
そこにはあたしの髪に触れてた手が。

その少し大きくて、ちょっと荒い手を少し眺めて、
何かを思い出させるような気分にさせられる。
あたしは頬を乗せた。頭の重さを預けて。

この手って、このためにあるんだと思う。

あいつが少し戸惑ってるのが、手から頬に伝わる。
あたしは、恥ずかしくて、面白くて、嬉しくて……
時間なんて停まってしまえばいい。

ねえ、
見ててくれるんだね。

今度はさ、あたしも本気出すから。
見てて、くれるよね。

全部あんたのせいなんだから。
こんな気分も、こんなあたしも。
あんただから。
もう他に何もいらない。
せーので、顔を上げよう。
あんたの目に映るあたしの目、
その中のあんたの、目まで見るんだ。
何だか、戻れないような気もするけど。

甘いよ、びっくりしたくらいでさ。
あたしはそんなんじゃ、もう引かない。
知ってるでしょ?
見てきてくれた、あんたならさ。

ねえ、あたしに触れてる手、
ずっとこのままでもいいけど、
いっそ首の後にすべらせて。



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最終更新:2012年08月10日 23:29