183 名前:【SS】 或る妹の挑戦  ◆ebJORrWVuo :2012/08/19(日) 20:26:26.57 ID:Ls5zBP2pP

 あたしは高坂桐乃。超シスコンの兄貴を持つ、文武両道の超絶美少女。
 そんなあたしが今、何をしてるかと言うと……。
 
「~♪」

 家の台所で料理をしているワケである。
 前に通販で買っておいたお洒落なエプロンを身に着けて、お母さんが愛用している料理本を片手に。

 なぜ、あたしがこうして料理をしているかというと……。
 そこまで深い理由はないんだケド。
 気が向いたから、というのが一番正しいだろうか。
 丁度、今日はお父さんもお母さんも遅くなるというし、京介も特に出かける用事は無いと言ってるし。
 あたしも偶然にも予定がなく、時間があったのもあって、じゃあ今日はあたしが作ってあげる、と言った次第だ。
 
 本当にただ気が向いただけで? 全然他意は無いんだケド?
 まあでも、作ってあげると言ったら、あのシスコンが嬉しそうな顔をしてたし?
 ちょっとは……頑張ってみてもいいかなーと思ってたりもする。
 
 なので、少し難易度が高い料理に挑戦中。
 実のところ、料理なんて全然したことがないけど、この才能溢れるあたしに掛かればどうって事ないでしょ。
 
 実際、結構スムーズにやれてる気がするしね。
 ちょっと台所が凄い有様になってしまってるけど、大事なのは料理そのものだし?
 少し汚してしまっても初めての料理なのだから全然問題ないよね。
 最悪、京介に後片付けを任せてもいいし。
 
 ――そう、この時はそう気軽に考えていたのだ。
 
 そんな感じで、料理も終盤。
 後は煮込んで終わりというところで、あたしは味見をしてみた。
 
 …………。
 
「ゲホゲホッ……! なにこれ、不味ッ!」

 酸っぱくてしょっぱくて辛くて変に甘い。
 間違えても美味しいという感想は出てこない、というかはっきり言って不味い以外の何物でもなかった。
 あたしだったら罰ゲームでも食べたくないレベルの代物だ。
 
「だ、誰がこんな不味いもの作ったワケ……」 

 ……言うまでもなくあたしだった。
 
 …………あたしって、もしかすると……料理、下手?
 いや、いやいや。はじめてだし、こんぐらい、許容範囲内……だ、だよね?
 あれ、でも京介が前に料理を作ってた時あったけど、結構美味しかったような……?

『ま、はじめてだしこんなもんだろ』

 確か、京介はそんな事を言いながらカレーを作った事があった気がする。
 絶対不味いと思って食べてみたら予想外に美味しかった事を覚えてる。
 野菜の大きさが全然揃ってなくて、あたしは文句を言った気がするけど、素直に美味しかった。

 …………。
 対して今の自分が作ったはじめての料理を見てみる。
 野菜の大きさは……それなりに揃っている。というか、見た目は結構それなりじゃなかろうか。
 食べてみるまで、美味しそうに見えてたぐらいだ。
 自分の贔屓目かも知れないけど……。
 
 けど、味が……。
 味が決定的に駄目だ……。
 
 …………。
 これ、どうしようか。
 捨てようか、それとも調味料で味を調整してみようか……。
 いや、ここから更に調味料足してどうにかなる味じゃなかった……。
 
 あたしが、目の前のブツをどうやって処理するかを考えていると、不意に後ろから声を掛けられた。
 
「おー、そろそろ出来そうか?」
「きゃっ! お、驚かさないでよっ」
「悪い悪い、料理の邪魔しちゃ駄目かなって思ってよ。で、どうだ? 何か手伝うか?」
「い、いい! だ、大丈夫だから! 全然問題ないって、だってあたしだし? もう完璧だからっ」

 近づいてこようとする京介を必死になってあたしは止める。
 駄目だ、近づけてはいけない。
 明らかに期待している眼差しの京介に、これを食べさせるわけにはいかない。
 な、何よりそれはあたしのプライドが許せない。
 
「お、おう。分かった。じゃあ、上で待ってるからよ。そろそろ腹が減ってきたから出来たら呼べよな」

 あたしの必死の剣幕に、少したじろぎながらも京介はそう答えて、リビングを出ていった。
 あたしが料理を作るといってから、少し心配そうな顔を浮かべながらも、嬉しそうにしている京介。
 シスコンだから、妹が料理を作ってくれるっていうだけで嬉しいのだろう。
 口では素直に嬉しいとは言わなかったが、態度を見れば分かる。
 
 だからこそ、この現実がバレるわけにはいかなかった。
 この完璧超人で通っているあたしが、まさか、料理が下手だなんてバレたくもなかった。
 特に京介には……。
 
「…………」

 ケド……じゃあ、どうするってのよ。
 
 もう、夕暮れ時。京介も腹が減ったとか言ってるし、再び作りなおすだけの時間は無いだろう。
 ならこの料理を食べられる品物に変える?
 あたしには到底不可能に思える事だが、料理に精通している人なら、どうにか出来るかも知れない。
 
 そして、あたしには心当たりがあった。
 近所に住んでいて、恐ろしい程の家事スキルを兼ね備えたあの人。
 
 …………。
 頼りたくは、ない。
 ケド、背に腹は変えられない……。
 
 でもどうする?
 頼るとして、どうすればいい?
 来てもらう?
 それともこの鍋を持っていく?
 
 あれ……そもそも……。

『麻奈実も今日は親戚の関係で、家に居ないらしいしな……』

 京介に今日の予定を聞いた時に、確かそんな事を言ってた気がする。
 家に居たらあんた、また麻奈実さんに料理を作ってもらうつもりだったんじゃないでしょうね、と思ったのを覚えてる。
 
 つまり、あの人には頼れないという事だ。
 
「……Oh」

 あのお節介女、こういう時になんで居ないワケ?
 いつも要らないタイミングで居る癖に……!
 
 仕方ない、他の可能性を考えよう。
 料理のスキルを持った人物には他にも心当たりがある。
 
 例えば、あやせなんてどうだろう。
 あやせなら呼べば来てくれるだろう。
 そして理由を話せば手伝ってくれる筈だ。
 
 ケド、あやせはあたしを尊敬している節がある。
 そんなあたしが、実はこんなに料理下手だと知って、幻滅したりしないだろうか。

『桐乃が……こんなに料理が下手なんて。ごめんなさい、そういう人とはわたし、付き合えません』

 とか言われたりしたらあたしは立ち直れる気がしない。
 あやせに限ってそんな事はないと思うケド……。
 地雷を踏んだ時のあやせは、凄い怖い。
 
 と、とりあえず、あやせは保留で。
 
 他に……黒猫。
 あいつも料理が上手いハズ。
 余り頼りたくないのもあるけど、あいつならあたしが料理下手だと分かっても幻滅したりしないだろう。
 
『ふふ、貴女がわたしを頼るなんて、なんて愉快なのかしら? ええ、助けてあげてもいいわよ?
 親切丁寧に料理を教えてあげましょうか?』
 
 …………イラッ。
 嬉々としてあの性格悪そうな笑顔で、目を輝かすあいつが思い浮かぶ。

 ダメ、あいつも却下。理由はあたしの精神衛生的に。
 そもそも、あいつが住んでる場所離れてるし、来るまでの間に京介の腹が限界を迎える可能性がある。
 
 加奈子とかは問題外だし、せなちーの料理スキルは未知数だし……。
 
 やっぱあやせかなぁ?
 
『桐乃……。ところで、これ誰に食べさせる為の料理?』
『あ、兄貴と一緒に食べようかと思って……』
『……二人きりで?』
『う、うん』
『お兄さんの為に、桐乃が手料理を作ったんだ?』
『…………』

 …………。
 何故か嫌な予感しかしない。
 兄妹で料理を作って二人で食べるのなんてそんな変なことじゃないと思うケド。
 でも、両親不在で二人きりとかそういう事実さえ知られたら危険な気がする。
 
 ……これも、あの馬鹿が妙な説得をしたりするからだ。
 あのせいで、あやせ、京介の事、変態兄貴だと信じて疑ってないからなぁ。
 弁解しても良いんだけど……というより少しずつ誤解は解いてるつもりだケド。

「ふぅ……」

 目の前のブツを見て、つい溜息をついてしまう。
 仕方ない、これは処分するしかなさそうだ。
 
 でも京介に、実は料理下手でしたとバレるのも嫌。
 ならどうするか。
 
 ……あたしの流儀に反するけど、出来合いものを買ってきて、それっぽく仕上げてみるのはどうだろう。
 最終的に、あたしがそのぐらいに料理が上手くなれば、それはもうあたしが作ったようなものじゃないだろうか。

 よし。
 
 そうと決めれば、早速買いに行こう。
 幸いにして京介は上にいるし、こっそり出ていっても気付かれないだろう。
 
 あたしは財布を握りしめて、静かに部屋を出ていった。
 

//


 夕飯時のスーパーというものは、恐ろしいものだと体感した。
 たまにお母さんに言われて買い物を手伝ったりするけど、いつもはピークの時間じゃなかったらしい。
 
 お陰で、予想してたよりも大幅に時間が掛かってしまった。
 あたしの足なら直ぐに買って戻ってこれると思ったケド、それは甘かった。
 流石に人を押しのけるワケにもいかないしね……。
 
 人ごみにまみれて少しぼろぼろになりながらも、目的のブツはちゃんと手に入れる事は出来た。
 あとは、温めて、それっぽく食卓に並べるだけ……。
 
 そう考えながら、こっそり玄関から家に入ると、あたしはリビングの扉を開けた。
 
「ああ、おかえり。ったく、鍋に火を掛けたまま何処行ってたんだよ。何か食材でも足りなかったのか?」

 そこに居てはいけない人物が居た。
 
「……う、うん。そ、そうなんだ。ちょ、ちょっと足りなくて……」

 な、なんでこいつ、降りてきてんの!
 あたしが呼ぶまで、素直に上で待ってろっての!
 
「……さ、最後の仕上げするから……その、き、京介は上で待ってて?」
「あん? いや、勉強も一区切り付いたしな。全部おまえ任せってのも悪いし、手伝うわ」

 よ、余計なお世話だっての!
 なんでこのタイミングでお節介発動するワケ!?
 あんたが居たら、バレちゃうじゃん!
 
「……そ、その、いや、いいから。だ、大丈夫だって。ほら、ね?」
「…………」
「こう、誰かが見てると集中出来ないっていうか……」

 あたしがどうにかして京介を上に追い返そうとしていると、京介は無言で食卓を片づけはじめた。
 
「ちょ、ちょっと、聞いてんの……!?」
「……桐乃」
「……な、何?」
「ひとつ、謝っておく事がある」

 謝っておく事……?
 
「な、何よ」
「余りに空腹で、……つまみ食いしちまった」
「……え?」

 えええええええええっ!?

「な、なんで! ありえなくない! こういうのは、一緒に食べるまで待とうって我慢するトコでしょ!?
 何、勝手に食べてるワケ!?」
「悪い。空腹には勝てなかったんだよ」
「く、空腹って……」

 ちら、と時計を見る。
 ……確かにいつもの夕飯時から大幅に時間が過ぎている。
 け、ケド……、それじゃ……。
 
「た、食べたの?」
「……ああ」

 ……そ、そんな。
 その食べてしまった時の京介を想像してみる。
 失望したのだろうか。
 がっかりしたのだろうか。

「……不味かった、よね?」
「……まあ、そうだな」

 肯定する京介。……全く、こういう時は嘘でも美味しかったって言いなさいよね。
 ……まあ、でも、はっきり言ってくれるから……こいつは、こいつなんだケド。
 
 でも、キツい。結構心にくる。あたしはこれが嫌で、必死になって回避しようと思ったんだ。
 京介に失望されるのが嫌で。
 不味いと言われてしまうのが嫌で。

 ……でも、これで良かったのかもしれない。
 みっともなく、隠蔽しようとするよりは、こうやって真っ直ぐと評価を下される方が。
 あたしがあたしで居られる事が出来る気もする。
 
「……ゴメン。あたし、実は料理下手だったみたい」
「…………」
「あはは……。出来合い、買ってきたからこれで食べよ? ご飯は、ちゃんと炊けてるハズだから」

 強がりも出ない。
 京介は、失望しただろう。
 完璧超人だと思ってた妹が……、こんな不味いものしか作れなくて。
 それは……悔しい。
 悲しいし、悔しい。
 けど、それが現実で、今の自分の実力なのだ。
 ここで開き直るのは……あたしの流儀に反する。
 
 勝負は勝負。結果は結果。あたしが、料理というそれを馬鹿にしていた報い。
 世の中の料理が出来る人は、ちゃんと努力をして学んで、そして上手くなったんだ。
 
「……いや、いい」
「……え?」

 もうご飯を食べる気すら失ったってコト?
 そうだとしたら……キツい。
 京介の方を見ていられなくて、顔を背ける。
 
「俺は、出来合いじゃなくておまえが作ってくれた料理で食べるわ」
「……え?」

 京介が言ったことの意味が分からなくて、あたしはきょとんとしてしまう。
 
「確かに不味いけどよ、食えなくはないし? 食べないの勿体無いだろ」
「で、でもさ、これあたしが言うのもなんだけど、凄い不味いじゃん」
「いいって。ほら、用意してくれ。おまえは、その出来合いで食べればいいだろ。
 おまえが作ってくれたのは俺が全部食べるから」
 
 その言葉を聞いて、嬉しく思ったのは内緒だ。
 でも同時に情けを掛けられた気がして、悲しくなったのも本当だった。
 
「……同情ならやめてよね。そういうの、余計傷つくだけだから」
「あん? 同情なんてするかよ。そういうんじゃねえよ」

 京介は、ぽりぽりと頬を掻いて、顔を逸らす。
 その態度を訝しげに思いながら、あたしは京介を見やる。
 
「じゃあ、なんだっての?」
「……ったく。仕方ねえな、本当は言いたくねえんだからな? 一回しか言わねえからな?」
「?」

 なんだろう、また酷いことを言うのだろうか。
 あたしは、逃げたくなりそうな心を必死で奮い立たせる。
 こいつの前で、逃げ腰にはなりたくないから。
 
「俺は……おまえの手料理が食えて嬉しいんだよ」
「…………はあ?」
「俺はよ、シスコンだから? 妹が俺の為に料理を作ってくれたってだけで、嬉しくて嬉しくて仕方ねえんだよ……!」
「…………」
「だから、食べさせてくれ。同情なんかじゃなくてよ、単純に食べたいんだっての!」

 例え、それが不味かったとしても。
 それが一生懸命に作ってくれたものであるのなら。
  
「…………」
「……ワリいかよ、くそ」

 京介は顔を背けたまま、悪態をつく。
 照れてるのか、少し顔が赤い。
 そして、あたしはただ呆然とその顔を見つめていた。

 心の中に、暖かい感情が生まれる。
 同時に、恥ずかしくてどうしようもない、熱い感情も生まれる。

 ああ、そうか。
 別に、兄貴は完璧超人の妹をあたしに見ていたワケじゃなかったんだ。
 あたしが、かつて兄貴にそうしてしまったみたいに。

 ただ、兄貴は、時には失敗する妹を当たり前の様に捉えていて。
 その上で、料理を作ってくれる事を喜んで。
 美味しい料理が出来るなんて別に期待してなくて。
 ただ、料理を作ってくれるというその事自体を……嬉しがってくれてたんだ。
 
 料理が不味くても、そこに失望は無くて。
 せいぜい、ただ仕方ねえな、ぐらいの感情ぐらいしか無くて。

 あたしが料理を作ったってだけで、この馬鹿は嬉しそうにして、つまみ食いまでしちゃって。
 
「……悪いっての」
「……くっ」
「マジありえない。キモい。どんだけシスコンだっての?
 こんな不味いのでも嬉しいなんて、あんた味覚おかしいんじゃないの?
 罰ゲームでも食べたくない味っしょ、これ」
「う、うっせえな! いいだろ、嬉しいんだからよ、ったくつべこべ言わず早く用意してくれっての。
 おまえが用意しねえってなら俺が勝手に用意して勝手に食うからなっ!」
「はいはい、今直ぐ用意してあげるから待てっての。ったく、あんたは犬かっての」

 ホント、バカじゃん。
 京介に顔を見られないようにしながら、ごはんをよそう。
 頬が赤くなっているのが分かる。
 幾ら不機嫌にしてみせようとしても、笑みが浮かんできてしまう。
 
「ん? おまえ、その買ってきたの暖めなくていいのか?」
「ん? ああ、あたしもこれ、食べる事にした。あたしの手作り、あんただけに食べさせるなんてキモいし」
「な……!」
「大体、勘違いしてるみたいだケド。これ、あんたの為に作ったんじゃなくて、あたしが自分の為に作っただけだから。あんたはそのおまけだから。変な勘違いしないでくれる?」
「…………」

 京介が黙りこむ。
 ああ、楽しい。これで、ようやく京介の方が見れる。
 だって今なら笑っててもおかしくないでしょ?
 
 ごめんね。ありがとう。
 その言葉はあたしの口からは素直に出てこない。
 だから、せめて、少しでもこの感謝が届くように。
 
「……ま、あんたがそこまで喜ぶってなら、また今度、おまけであんたの分も作ったげる」

 次はちゃんと、勉強して、練習して、とびっきりの美味しいやつを。
 あんたに食べさせてあげるから。
 あんたの為に、作ってあげるから。
 

 
 後日談。
 
「あれ、き、桐乃ちゃん。ど、どうしたの、珍しいね」
「今まで、ごめんなさいっ!」
「え。え。な、なんのこと?」
「麻奈実さんに色々言っちゃったり、しちゃったりした事、全て謝ります」
「……うん。わたしは別に気にしてないけど……それが桐乃ちゃんのけじめなんだね」
「はい。そして謝りついでで申し訳ないんですけど……」
「うん?」
「あたしに、料理を教えて下さい!」

 麻奈実に謝罪する桐乃、そして、麻奈実にお願いする桐乃。
 生憎、俺はその貴重なシーンを見ることは出来なかったけど。

 こうして、麻奈実が家に来て、桐乃に料理を教えてる姿を見てると何か救われた気分になるな。
 
「あれー? どうしたのきょうちゃん。なんか嬉しそう」
「いや、少し感慨深くてな」
「キモイんですけど。つか、なんであんたこっち見てるワケ? さっさとどっか行ってくんない?」
「……へいへい」

「もう、桐乃ちゃん。素直に、見られてると緊張しちゃって上手く出来ないって言えばいいのにー」
「なッ……!」
「そうなのか?」
「な、ワケないでしょ! と、とにかく、ほら、さっさと出てって! さ、刺すよ!?」
「うわ、包丁向けんじゃねえ!? あやせか、おまえは……!」


「どうして素直になれないのかなー、桐乃ちゃんは」
「別に。あたし、素直ですから」
「うん。そうだね。きょうちゃんの為に、こんなに一生懸命だもんね」
「…………早く、次、教えてください」
「あ、今日は否定しないんだ?」
「………………」
「き、桐乃ちゃん。まな板は頑張っても、切れないと思うなー?」

 料理は、難しい。
 麻奈実さんレベルの料理まではまだまだ届かない。
 ケド、あたしはあの時、決意したから。
 いつか、麻奈実さんを超える腕前になって、あいつに料理を食わせて。
 心から美味しい、と言わせてやるんだから。
 
 いつか、必ず。
 
 
 
 end



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最終更新:2012年09月17日 12:09