651 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/01(土) 17:26:31.45 ID:dxXPFnID0
SS『となりの801さん』京,瀬
「それでですね?桐乃ちゃんってば、あれから『桐×京』画像にハマっちゃったみたいで」
「そ、そうか・・・」
「いやー、やっぱ801っていいですよね!誰かが言ってましたけど
『ホモが嫌いな女子なんて居ません!』って至言だと思いませんか?ねえ、高坂せんぱい!」
言わなくとも分かるとは思うが、俺は今、腐女子の腐女子による腐女子のためのトークを聞かされている所だ。
フラっと寄ったゲー研の部室。そこによりにもよってコイツだけがいたってわけだ・・・
そして、この腐女子が作り上げたキャラクター『桐乃くん』
茶髪で、長身で、美形で、何故かヘアピンをつけて・・・
挙句、『人生相談と称して、お兄ちゃんにエロいことをしちゃうのです』だとぉ!?
俺の妹がこんな言い訳がましくそんなことするわけがねーだろうが!!!
・・・い、いや、『桐乃くん』と『京介』という名のキャラクターだけどよ・・・
「それにしても驚きました。
桐乃ちゃんが801に目覚めてくれるのは計画通りですけど、
桐乃ちゃんから絵の依頼が来るなんて思いませんでしたし」
「ん?絵の依頼だって?」
「はい。あたしが巻き込んだ絵師さんに間接的にお願いって感じなんですけど、
結構な枚数で、いろんな構図のお願いがありましたよ?」
おいおい、マジかよ?
こいつの影響で桐乃のやつ腐女子化しつつあるのか?
妹エロゲーやってるよりは、『普通の女の子』らしいのかもしれないけどよ、
なんつーか、こう、なあ?
「はぁ・・・でも、ちょっと困った部分もあるんですよねー」
わざとらしくため息をつく瀬菜の様子に、少し興味をひかれてしまう。
「何か問題でもあんのか?」
「いえ、桐乃ちゃんが801に目覚めてくれたのはいいんですけど、なんていうか・・・」
言葉を濁して何か言いにくそうな瀬菜なんだが・・・
いや、コイツ結構常識人だもんな。
兄である俺に、桐乃の悪口は言いたくないって気持ちは十分に理解できる。
「いいぜ、あいつもちょっと悪い所があるからな、好きに言っていいぜ?」
「そ、そうですか!・・・では」
パッと顔を輝かせる瀬菜。
こういう所だけは、あの妹馬鹿兄貴の気持ちもよくわかるってもんだ。
「そもそも桐乃ちゃんは『カップリング』というものを理解していません!!!!!!!!!!」
「・・・・・・・・・はい?」
訂正。分かるかってんだ。
「いいですか、せんぱい?そもそもですね、これは圧倒的な受けオーラを放つせんぱいの存在があってこそのカップリングな訳で、
『桐×京』は存在しても、『京×桐』なんて物はこの宇宙のどこを捜しても存在するわけないじゃないですかっ!」
「・・・う、宇宙やべーな?」
「それを桐乃ちゃんって、簡単に受け攻めを入れ替えたり、酷いときなんて一つのメールの中ですら受け攻めが入れ替わるんですよ!?
大体、特別な信条があって受け攻めを入れ替えるならまだ理解出来ます、でも出来るだけで受け入れるのは論外ですが、
入れ替えたなら入れ替えたなりの理由付けというか設定を考えるのが筋ってものじゃないですか!?そもそも『京×桐』とか論外ですよね?
だって、『桐乃くん』は、先輩の圧倒的受けオーラがあたしのお兄ちゃんでも受け止め切れない、ってゆーか、お兄ちゃんも結構受けキャラなんですよね。
とにかく、その受けオーラを満たすべく創造された、いわばせんぱいと一心同体な存在なわけじゃないですか!
しかもその関係性は『桐×京』に集約されているというのは自明なわけで、そうであればカプを逆にするとかありえませんし、
『桐×京』のみが唯一この宇宙に存在を許されているといっても過言ではないわけです。それを『桐乃くん』がせんぱいに攻められてる所を描いてとか
はっきりいって誰得なんですか!?いえ、誰も得しませんよ!あたしも得しません!大事なことなので三回言いました!たしかに攻めキャラが
受けキャラに攻められるギャップ萌えというのも一部で有ることは認めますよ。でもそれってその受けキャラに攻めるだけの理由が、攻めキャラに
受けるだけの理由がないとダメに決まってるじゃないですか!一億総受けのせんぱいのキャラだったら当然受けにしかなれないのは常識を超えた
絶対真理の力です!そもそも考えてみれば桐乃ちゃんは801初心者にあたるわけで、いきなりこんな邪道カプから入ったら、その後五更さんみたいな
厨二病発症したって文句言えませんし、本当の意味でこの世界を理解出来ないまま終わってしまいます!ですから、改めて言いますけど『桐×京』こそが
至高であって、それ以外は認められないわけです!それが第一点で、次に桐乃ちゃんの希望するせんぱい単独の絵とか常軌を逸してます!!!
だって、せんぱい単独とか見たって何も萌えないじゃないですか?ありえませんよね?本当にありえませんよね?だってせんぱいですよ?
『部長×高坂せんぱい』とか『赤×京』とかならまだ理解も出来ますけど、というか『真壁せんぱい×高坂せんぱい』や『御鏡さん×高坂せんぱい』でも
けっこうギリギリな気がしますし、あ、でもせんぱいが輪○されるなら3Pでも4Pでもアリかなって気はするんですけど、
それはまた別腹なので置いておいて、とにかくせんぱいだけの絵とか見たって、正直萎えるとしか。あっ、別にせんぱいの顔が悪いとかそういう意味じゃないです。
BLってのは関係性の哲学だと思うんです。だって、許されない関係の二人が結ばれるところに萌えが生じるわけで、だからせんぱいじゃなくても
単独とかいう事自体がありえないと思うんですよ!そりゃもちろん、一人で居る事とかあるのは当然あるでしょうし、この世界でも片方だけの絵もあって
しかるべきではあるんですけどそれってやっぱり理由のある事で、一人でも映えるって事もありますし、複数のカプを妄想できるようにって作者の配慮も
あると思うんです。そういった観点で考えればせんぱいって今業界では『桐乃くん』と一体不可分ってのが常識ですし、せんぱいの唯一の特徴である
圧倒的な受けオーラを表現するためには攻めがいないとしょうがないじゃないですか。もちろんそれを単独で表現する事も出来ない事はないですけど、
そこに絶対に切れない家族の縁とか『桐乃くん』の特別性を表現するためには他者の入り込む余地のない状況を作るのが筋と言うもので、
そう考えれば『桐乃くん』のいないせんぱいなんて、BLのないショタ本とか、誰も性的欲求を持ってない男部屋とか、挿入の無い18禁同人誌とか
みたいな物じゃないですか!それにですっ!これが・・・これが一番許せないんですけど、『桐乃くん』を女体化出来ないかなんて・・・!!!!!!!
アレです。BLに必要なものは何であるか。♂と♂です。コレ、世界の常識です。♀と♀ではただの百合ですし、♂と♀だとただのスイーツ(笑)です。
何故BL、ボーイズラブと呼ぶのか。そこには男の子しかいないからじゃないですか!!!!!女の子のスイーツ(笑)恋愛とか誰が見たいっていうんですか?
男の子同士で愛が芽生え、相手の『男の子』を受け入れる事ができるからこそのBLですっ!桐乃ちゃんはそこがわかってません!!!
『どうしても桐京が良いならふたなり化すれば?』とかっ!あんなのゲイ・ボルグがついたただの女じゃないですかっ!
女がいくらいたってBLは成立しない。せんぱいだってそう思いませんか?・・・・・・・・・せんぱい?」
――――――10分後――――――
「ごめんなさい、あたしったらつい・・・」
「いや、もういいって。だいたい俺がうながしたわけだしな」
「・・・はい・・・」
腐海の瘴気にやられた俺は、つい気を失ってしまってたってわけだ。
それにしたって、今日の瀬菜は凄まじかった。
桐乃の無理解によっぽど頭にきてたんだろうな・・・
というかよ?
「つか、言いにくいんだが、桐乃、801に目覚めたわけじゃないんじゃね?」
「・・・・・・・・・やっぱり、そうですか?」
「ああ。冷静に、客観的に見て、エロゲー目線でしか喋ってないと思うぞ?」
「・・・・・・・・・はぁ・・・」
さすがに力なく俯く瀬菜。
まあ、瀬菜の暴走はちょっとアレだったが、少し可哀想にも思える。
「すまねえな、桐乃にもあまり言い過ぎないように言っておく」
「いえ、あたしの勘違いが原因ですし・・・
それに、桐乃ちゃんのおかげで色々なBL妄想も捗っていますから!」
そういって、にへらと笑う俺の前の腐女子。
その切り替えの早さには敬服するが、正直、キモイ。
「そもそも、『人生相談』っていう設定も、五更さんから桐乃ちゃんの事を聞いたってのも大きいですし」
・・・そこはあいつが原因だったか・・・
「『桐乃くん』も『京介』も、お互いケータイにツーショットプリクラを貼るくらいラブラブってのも大人気の設定ですし」
「・・・今度は誰が原因だ・・・」
「え?せんぱいの携帯にも、桐乃ちゃんの携帯にもツーショットプリクラ貼ってるじゃないですか?」
俺が原因でした!
まあ、だけど大丈夫。
ここまでなら親父達だって知ってる事だし―――
「それに、これもあたしイチオシの設定なんですけど、初めては騎乗位って―――」
「ま、待てっ!だっ、誰に聞いたっ!」
「ええと、今言ったとおり桐乃ちゃんの性格から考えた設定で、『桐乃くん』は『京介』を下からガンガン突き上げ・・・る・・・?」
「・・・・・・・・・」
「・・・『誰に聞いた』って何のことですか?」
「・・・・・・・・・」
さて、本当にどうしようか・・・
瀬菜は、とりあえずドン引きしながらも深くは追求してこなかったんだが・・・
次は黒猫に伝わるだろ?
そして、沙織とあやせにも伝わるだろ?
特に『あやせに』伝わってしまうだろ?
大事な事だから2回言ったんだが・・・・・・・・・
本当に、どうしよう・・・
End.
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最終更新:2012年09月30日 14:33