814 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/06(木) 01:22:46.32 ID:G6VkCSVh0

SS『9月6日』


「そういやさ、今日って妹の日って言うんだよね」

 帰り道、突然桐乃がそんな事を言い出します。
 これまでのわたしの経験上、こういった時には必ず悪い事が起こるんです・・・

「でもさー、なんで今日が妹の日なんだろうね?語呂合わせでもないよね?」

 でも、今日は大丈夫、こんな話題が出るのは予測済みです。

「えっとね。実は少し調べたんだけど、漫画家の畑田国男さんって人が1991年に決めたんだって」
「そ、そっか」

 よし、これで大丈夫。
 ちょっと桐乃が可哀想ですけど、放っておいたらお兄さんの話になるに決まってますから・・・

「で、でも、9月6日な理由にはなってないじゃん?」

 やっぱり、お兄さんの話をしたいがために食らいついてきます。
 でも、ごめんね、桐乃。
 それもちゃんと調べてきちゃったから・・・

「それはね、妹の可憐さを象徴する乙女座の中間の日の前日で9月6日なんだって」

 ふう、これで―――

「えっ?乙女座?・・・それって京介の事?」
「・・・へっ?」

 まるで意味の分からない桐乃の言葉に、つい情けない反応をしてしまいます。

「お、お兄さんって乙女座だった?」
「んー、なんていうかー『魂の乙女座』って感じ?
 っていうかねーあいつったらさー、この前あたしが沙織とアキバ行ったら、赤城さんと一緒のあいつに会ったんだけどさー
 『まさかな。よもやここでおまえと出会えようとは・・・乙女座の俺にはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられない!』
 とか言ってんだよねー」
「・・・・・・・・・」
「だってさ?沙織と赤城さんの目の前じゃん?あいつってば人前なのにマジ恥ずかしいしぃ」

 え、えっと・・・
 わたし、妹の日の対策をして・・・

「それにさーその前なんだけどさ、あいつってばぁ、あたしと二人きりの時にさ
 『やはりおまえと俺は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ!』とかぁ
 『そうだ、くんかしあう運命にあった!!』とかぁ
 『ようやく理解した!おまえの圧倒的な可愛さに、俺は心奪われた!』とかぁ
 『この気持ち・・・まさしく愛だ!!』
 とか言ってんだよねー?ちょうキモイでしょ?ね?あやせ」
「う、うん・・・」

 本音を言うと、今の言葉を緩みきった顔で喋ってる桐乃の事を
 一瞬キモイと思ってしまいました・・・

「だからぁ、乙女座っていうのは京介の事でしょ?
 そうすると9月6日っていうのは全然別の事だよね?」
「そ・・・そうかもしれない・・・ね?」

 誤算・・・あまりにも誤算でした・・・
 桐乃がお兄さんの事を好きなのは知ってましたけど
 今ではお兄さんの事好き好き大好き好き好きになってしまってたなんて・・・

 でも、それはそれとして

 『くんかしあう』と『あたしと二人きりの時』ってどういう―――

「わ、わかったかも・・・!」

 突然の桐乃の大声に、わたしの思考は中断させられてしまいました。

「えっ、桐乃、わかったって?」
「う、うん!あやせ、あたし、わかっちゃった!」

 いったい桐乃は何を言い出すのでしょう。
 一人の漫画家が適当に決めた日付に意味なんて・・・

「だってさ!妹って事は兄も当然居るってことでしょ!?」
「そ、そうだね?」
「だ、だからっ・・・き、兄妹でしょ・・・9月6日だから・・・96で・・・
 妹の日で妹優先だから逆で・・・6・・・9・・・ふひひ・・・」

 桐乃の顔がにへらと緩み、とても人前に出せない表情になってしまいます・・・
 親友の事をここまでキモイなんて思ったのは初めてです・・・

 ドン引きしてるわたしをよそに、桐乃は『6・・・9・・・』と繰り返し呟きながら帰ってしまいました。
 途中から何故か英語に変わってしまうし・・・

 桐乃、本当にどうしたのでしょうか。


End.



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最終更新:2012年09月30日 15:06