305 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2012/09/16(日) 23:09:37.18 ID:Y2C0zwde0
SS『こないの』※桐,京,あ
桐乃とお兄さんの二人暮らしが始まって、4ヶ月が経ちました。
今日は久しぶりに二人のアパートにお邪魔してます。
お邪魔してるのですけど・・・
「あっ、京介、口の周りにごはんつぶ付いてるよ」
「おっ、そうだな」
『そうだな』じゃありません・・・
わたしは見ていました。
お兄さんがわざわざごはんつぶを口の周りにつけたのを。
「そ、それじゃ、仕方ないよね。
あやせの前だし、ちょっと恥ずかしいケド・・・」
そう言うなり、桐乃はまるでそうする事が自然であるかのように、
ごはんつぶを舐め取るのにかこつけて、お兄さんの口にキスをします。
「んっ・・・ちょっ・・・舌っ・・・」
お兄さんも、早速桐乃の口の中に舌を差し入れて、
そのまま二人で一心不乱にむしゃぶりつきます。
・・・でも、もうさっきから何度となく繰り返された光景です・・・
まず、インターホン越しに、水音が聞こえてきたのが悪い意味で印象的でした。
出迎えも、二人で手を繋ぎながらでした。
そして、わたしが荷物を置いたと思ったら、早速ディープキスです。
お話してる最中も、何度も何度も・・・
夕食の買出しの時も、ずっと手を繋いでいましたし、
お店でも、道路でも、辺り構わず何度もキスを繰り返すんです!!!
・・・そして、今。夕食の、この時間でも・・・
本音を言ってしまえば、すぐにでも加奈子を埋めて、お兄さんもブチ殺したいところです。
でも、桐乃とお兄さんの関係を認めてしまった以上、わたしにはどうしようもないじゃないですかっ!
それに、わたしが見た限りでは、その・・・
『幸せ家族計画』みたいなものは置いてないようです。
とりあえずは桐乃にいかがわしい事はしてないのでしょうか?
そう考えると、キスくらいなら愛情表現として我慢しないと・・・
「満足できた?」
「ああ、ちょっとだけ」
わたしがこんなに悩んでいるのをよそ目に、二人の『じゅーでん』はやっと終わりを告げました。
多分、こんなに『じゅーでん』が必要なのは、何度も何度も過充電を繰り返したのが原因だと思います。
そして、一度ダメになったバッテリーの容量って、二度と元には戻らないのですよね・・・
そう思うと、今後の二人がとても心配になってきます。
それはともかく、せっかくのチャンスです。
ここで話題をなんとか作らないと・・・!
「それにしても、桐乃。料理が上手になったよね」
「そ、そう!?」
「ほんとほんと。たぶん、わたしや加奈子より上手かも!」
「そうだな。本当におまえのメシは美味くなったぞ」
お兄さんに褒められて、ほんと、桐乃、嬉しそう。
料理の一番のスパイスは『愛情』というのは、
もしかすると、こういう意味なのかもしれないです。
「思いかえすと、はじめは本当に酷かったよな」
「う、うん・・・」
ちょっと恥ずかしそうな桐乃ですけど、
これだけはお兄さんの言ってる事が正しいです・・・
「で、でも!本当に酷かったのは、はじめの一週間くらいじゃん!」
「そ、そうだったか?」
なんか、こういう時の―――お兄さんに甘えてる時の―――
桐乃は、いつもとはまるで違って、本当に子供っぽい。
わたしにも妹がいたら、こんな感じだったのかなって思えちゃいます。
「はじめのっ・・・そのっ、炭化しちゃったキャベツは・・・
さすがにあたしも大失敗だってわかってるし!」
「次の日はボヤ騒ぎも起こしたよな?」
桐乃・・・やっぱり、炭化物を作ってたんだ・・・
あの時のバレンタインチョコを思い出して、つい噴き出しそうになってしまいます。
「あ、あれはっ、あんたが料理中にキスをせがんでくるからいけないんでしょ!」
「だってよ?おまえの裸エプロン姿だぜ?キスぐらいしたくなるっていうか―――」
「お、おおおおお、お兄さんっ!?」
わたしはお兄さんの発言の中に、聞き捨てならない単語を聞き取りました。
「はっ、裸エプロンってどういうことですかっ!?」
「いきなりどうしたんだ?あやせ?裸エプロンは裸エプロンだろ?」
「妹が料理をする時の標準装備だよねー?」
キョトンとして何が不味いのかも理解してない桐乃とお兄さん・・・
二人の言動からはいかがわしい物は感じられませんけど・・・
「まあ、それはともかくよ。次の週だって、調味料がむちゃくちゃだったろ?」
「だ、だって、大さじとか言われたってわかんなかったし!」
「いや、そもそも塩と砂糖から間違ってなかったか?」
「だって!あんたがキスしてくるからっ!手元が狂っただけだもん!」
・・・はあ・・・もうおなかいっぱいです。
「本当に、仲がいいんですね」
「あ、あったりまえじゃん!」
「ま、まあな」
「本当に、楽しそう」
「桐乃と一緒だからな」
「京介と一緒だもん」
桐乃とお兄さん。
ふたりの暮らしぶりを聞いていると、
ちょっと胸焼け気味ですけど、なんだかわたしも元気を貰える気がしてきます。
「ちょっと騒がしいけど、わたしもこんな生活にあこがれるなあ」
「そ、そうか?」
「はぁ?『そうか?』ってどういうことよ?」
「いや、騒がしいのはおまえが原因だからともかく、あやせが騒がしいのにあこg―――」
「ちょ、ちょっと!何言ってんのよ!
た、たしかにあたしが原因の事もあるけど、あんたも原因でしょっ!?」
ほら。
ケンカしてるのに、すごく楽しそう。
わたしの周りにもたくさんの人―――家族、友人、仲間、ライバル、そのほかにもたくさん―――が居るけど、
こんなに深く繋がってる人は、見たことがない。
わたしと親友達の繋がりでは、とてもかないっこない。
仕事仲間との信頼関係も、まるで異質なものです。
わたしがお父さんとお母さんに感じている繋がりよりもきっと重い。
お父さんとお母さんでも、たぶん、桐乃とお兄さんの繋がりには負けてしまう。
だから、わたしは二人を見続けていきたいのです。
いつか、わたしも、こんな関係を持つ事のできる人になれるように・・・
「待て待てっ!いつ俺が騒ぎの原因になった!?」
「先週!」
「先週って・・・あーーーアレかっ!!!」
・・・そういえば桐乃たち、ヒートアップしてますけど一体何の話でしょう?
「大体な、アレはおまえが『こないの』とか言うからっ!」
「ばっ、馬鹿じゃん!だからっていきなり病院に問答無用で連れて行くとかっ!」
「仕方ねーだろっ!『こないの』とか言われて思いつくことなんて一つしかねーだろっ!」
・・・・・・・・・
「つかな、ただエロゲーがこなかっただけ―――」
「お・に・い・さ・ん」
自分でも分かります。
でも、当然です。
わたしは今、悪鬼の形相をしています。
「なんで、『こないの』で、病院に連れて行かなきゃいけないと考えたのか・・・
教えていただきます、ね」
End.
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最終更新:2012年11月08日 17:52