130 名前:【SS】しすこんぶらこんぱんでみっく!?:2012/12/22(土) 11:58:45.30 ID:Ge11C2MB0
  クリスマス・イブの帰り道、京介と桐乃はひと山いくらのチンピラっぽい風体の連中に絡まれた。 
  自分が動かないと、桐乃が何か迂闊なことを口走りそうだ。京介はテンパリながらも作戦を立てる。 
 一瞬でも注意をひきつけることができれば、桐乃の足に追いつけるヤツはいないはずだった。 
 ただし、今日みたいに着飾っていなければ。 
  そこで京介は「ちょっと脱げ」とアイコンタクトを送ったのだが、真意が伝わりきらず「死ね」というアイコンタクトが返ってきた。 
 「なに、俺たち無視しちゃってんの?」 
 「一緒に遊ぼうよ~」 
  自分たちを蚊帳の外におく二人のやりとりをみて、ヤンキーたちは包囲の圧力を狭め、口々に囃し立ててくる。 
 自分たちに向けて伸ばされる手に京介は叫んだ。 
 「待て!……俺に触ると、病気が感染るぞ!」 
  口からでまかせに連中の動きがピタリと止まる。妹まで身を引いたことを京介は極力視界に入れないようにした。 
 しかし、効果は持続せず、奴らはニヤニヤ笑いながら聞いてくる。 
 「兄ちゃん、なんの病気だよ?」 
  追いつめられた京介の頭脳は時にキテレツな答えを弾き出す。この時もそうだった。 
 「俺の病気は……シスコンだーーっっ!!こいつは俺の妹だ!お前たちに妹はいるか? 
  俺に触るとシスコンが感染してクリスマスを毎年妹と過ごすことになるぞ!!」 
  寒い冬の空気が完全に凍った。突拍子もないことを口走った男を気持ち悪いそうに見やりながら、ヤンキーたちは 
      こんな風 
     ∧,,∧  ∧,,∧ 
  ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧ 
 ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` ) 
 | U (  ´・) (・`  ) と ノ 
  u-u (l    ) (   ノu-u 
      `u-u'. `u-u'      になる。 
 「わけがわからん」 
 「でも、あいつらが出てきたのって……」 
 「確かに髪のハネは似ているな」 
 「髪のハネって遺伝するのか?」 
 「風呂上がりでも完全に一致するレベルならばあるいは」 
  話合いの終わった彼らは高坂兄妹に向き直った。その間に逃げればいいのに、何故か二人は律儀に待っていた。 
 「俺に妹はいねーし」 
 「つーか、俺たちが触りたいのは妹ちゃんの方だし」 
 「そんなの絶対おかしーし」 
  そういってゾンビのごとく桐乃ににじり寄る。京介は妹を身体の後ろに庇い、最終手段に訴えた。 
 「バーロー!こいつは俺なんかメじゃない重度のブラコンだぞ!!寄るな触るな! 
  触ったら血の繋がらないアニキでもラブラブになっちまうぞ!お前らの間で(瀬ハ)な関係にハッテンしちまってもいいのかっ!?」 
  男たちは大変気持ち悪そうな顔をして動きを止めた。普通の人間が咄嗟にこんな妄想を思いつくものだろうか。 
 そんな不安に駆られたのである。こうなれば京介の独壇場だ。 
 「いいか、良く聞け。俺のシスコンと俺の妹のブラコンは不治の病だあああああああっ!!!」 
  変態の放った絶叫が、ビルの谷間にこだまし、クリスマスの星空に消えていくと、ヤンキーたちも逃散した。 
  京介の叫びを信じたと言うよりも、こんなことを叫ぶ変態のカップルに関わりたくないと思ったのであった。 
  かくして脅威が消えた。「決まったぜ」と振り返る京介のドヤ顔にこぶしがメリ込む。 
 「あああ、あんたねぇ!何か迂闊なことを口走るんじゃないかと思っていたけど、まさかここまでとは……ッ」 
  桐乃の握り拳がワナワナ震える。顔を押さえながら京介は自己弁護した。 
 「ま、まあまあ、おかげで無事に済んだだろ?」 
 「っさい!あたしのブラコンは病気じゃないっつーの!……ハッ」 
  桐乃はあわてて口をつぐんだ。そんな妹に兄は威厳をもって鷹揚に言ってやった。 
 「俺のシスコンだって病気じゃねえよ」 
 「……病気じゃなかったらなんなの?」 
  ちょっと上目遣いで桐乃は問いかけた。京介はナイススマイルで即答する。 
 「人生、だな」 
 「キモ」 
  ブラコンはジト目で短く漏らした。高度に発達した8ビットシスコン脳で「キモ」を256通りに翻訳できるシスコンは腕をさしだす。 
  二人は寄り添って、同じ方向に歩き出す。 
  これからの人生を示すように――
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最終更新:2013年01月31日 03:17