535 名前:【SS】そんなある休日の朝の光景:2013/03/28(木) 08:18:45.12 ID:HEsLC7gCP
朝なので。
AM 6:30
「ん・・・・・・」
意識がゆっくりと浮上する感覚。
少しずつまぶたに力が入ってきて、うっすらと風景が見えてきた。
薄暗い部屋。
カーテンの隙間から光が入ってきてるのがわかった。
「ぁふ・・・・・・?」
あくびがと一緒に身じろぎをしようとしたけど、動けない。
何かに体を締め付けられてるみたい。
でもそれが嫌だという感じはしない。むしろこれが心地いいというか・・・。
「・・・・・・あ」
と、そこで思い出した。
そういえばあたしが寝てた場所って・・・。ということは。
「やっぱり」
あたしを抱きしめるように後ろから回された手。
あたしの手よりも一回り大きくて、ごつごつした、男の手。
昨晩枕にしたはずの腕が、いつの間にかあたしの体に回されていた。
「んしょっと・・・」
腕が外れないように器用に体を反転させる。
そこには思ったとおり、京介の寝顔があった。
どうやら京介はまだ起きていないらしい。
まったく。あたしを抱き枕代わりにするなんて。こいつってばちょー贅沢者だよね。
あたしをそんな風に扱っていいのはあんただけだっていうのを自覚してるんだろうか。
「このシスコンめ」
幾度となく口にしてきたフレーズを口にする。そこに嬉しさが混じるは否定しない。
このままこいつを起こしてやってもいいんだケド、それはそれでなんかもったいない。
それにこれは絶好のチャンス。この機を逃すわけにはいかないもん。
抱きしめられた状態から、更に自分から体を密着させた。
536 名前:【SS】そんなある休日の朝の光景:2013/03/28(木) 08:19:52.54 ID:HEsLC7gCP
スンスン、クンクンクン。クンカクンカ。
京介の匂いを思う存分堪能する。
あたしの大好きな、京介の匂い。
他の人にとってはどういうものか知ったこっちゃないけど、あたしにとってこの匂いは幸せの象徴だ。
こうして誰よりも近い場所にいられることを実感できるんだから。
だから、あたしはこの匂いをかぐのが大好きだった。
「ほんと、どうしてこうなっちゃったんだか」
頭を上げて、京介の顔を見る。
のん気にぐっすりと寝ている顔はどうにもまぬけだ。
指先でつんつんとほっぺをつつく。
あ、眉毛しかめた。なにこれ面白いんですケドw。
「うりうり。にしし♪」
京介が起きないのをいいことにほっぺをいじって遊ぶ。
これまであたしをヤキモキさせてきた報いよ。うりうりうり。
つんつんつんつん。ムニムニムニ。
ムニムニムニムニ・・・ムニュ。
「ほえ?」
「気はすんだか?桐乃」
頬をつままれると同時に京介の目がパチッと開いた。
「ふぉ、、ふぉきてたの?」
「おう」
「い、ひつから?」
「お前が俺の腕の中でごそごそしてたあたりから」
それってほとんど初めからじゃん!
え、てことはあたしが京介の匂いをかいでたことも!?
「俺の匂いはそんなによかったか?」
「な、な、な――!?」
やっぱりバレテル!
顔がどんどん熱くなるのがわかった。
きっとあたしの顔は今真っ赤に違いない。
「~~~~~」
あたしは恥ずかしさのあまりに再度体を反転させた。
恥ずかしすぎて京介の顔を直視できるわけないじゃん!
「ひっ!?」
首筋に生温かいものを感じてゾクゾクとしたものが背中をかけのぼった。
537 名前:【SS】そんなある休日の朝の光景:2013/03/28(木) 08:21:45.24 ID:HEsLC7gCP
「やっぱお前いい匂いするよな」
「あ、アンタなにやって――!?」
言葉を言い切る前に再度さっきと同じゾクゾクとしたものが体を伝う。
京介があたしの首筋に顔をうめて匂いをかいでいるのだ。
「ちょっと、やめてってば!」
「んだよ。お前だってさっき同じことやってたじゃねえか」
「そ、それとこれとは」
「同じだろ」
も、もういいでしょ!? もうちょっとだけ。今すぐやめろ!
そんなやり取りを数分して、あたしはようやく解放された。
「はぁ・・・はぁ・・・。このバカ。変態。シスコン」
「悪い。ちょっと調子に乗りすぎた」
ホント、調子に乗りすぎだっての。あたしが首筋弱いの知ってるクセに。
今度絶対に仕返ししてやるんだから。
「許して欲しい?」
「許してくれるのか?」
「・・・許して欲しいなら、やることがあるんじゃないの?」
「・・・ああ、そうだな」
ちゅっ
「ごめんな、桐乃」
「しょうがないから許してあげる」
ふひひ♪
「そんじゃ仲直りしたってことで。おはよう桐乃」
「うん。おはよう京介」
538 名前:【SS】そんなある休日の朝の光景:2013/03/28(木) 08:23:14.14 ID:HEsLC7gCP
AM 7:30
「ねえ京介」
「ん?」
「あんたいつまでこうしてるわけ?」
あんたがずっとあたしを抱きしめたまんまだから、動けないんですケド。
「イヤか?」
「べ、別にそんなこといってないでしょ」
アンタの腕の中はあったかいし、安心するし、いい匂いするし。
嫌なわけないじゃん。
そういえばなんか忘れてるような気がするけど、なんだっけ?
「んじゃあもうちょっとだけ」
「・・・あたし、じゅーでんきれそうなんですケド」
「じゃあじゅーでんしないとな」
「あ、んんん・・・・・・」
ま、いっか。
540 名前:【SS】そんなある休日の朝の光景:2013/03/28(木) 08:25:24.16 ID:HEsLC7gCP
AM 9:00
ピンポーン ピンポーン (きりのー? いないのかな?)
(もしかしてきりのんでかけてる?)
「ん? 宅配か? 桐乃なんか頼んでたのか?」 (靴はあるぞ。まだ寝てんじゃねえの?)
「ううん」 (か、加奈子かって入っちゃマズイよ)
「じゃあ親父かお袋か。じゃあ別にいいか」 (鍵かけてねえのがわりーんだろ)
「そだね」 (そうそう。それにもしきりのん寝てるなら
もしかしたら寝顔みられるかもよ?)
今日はお父さんもお母さんも昨日から出かけてていない。 (加奈子、蘭、音立てちゃダメだよ?)
普段なら受け取ってたんだろうケド、今日はちょっと面倒くさい。 (うへぇ)
今はまだこうしてたいし。
(ここが桐乃の部屋だね)
「さすがにそろそろ起きないとまずいな」 (冗談だったのに)
「ええ~」 (まさか本気で実行するとはランちんびっくりだよ・・・!)
「お前さっきは不満そうにしてたくせに」 カチャリ(お邪魔しまーす)
「だって」 (あれ? きりのんいないね)
(リビングに誰もいなかったぜ)
たまにはあたしだって素直になりたい時だってあるもん。 (じゃあどこに・・・ってあやせ?)
いいじゃん。あたしはいつだってアンタと一緒にいたいんだもん。 (・・・・・・まさか!?)
(おいあやせいどこに行くつもり・・・ってここは)
「お前を置いてどっかいったりしねえからさ。今日は一日家にいるよ」
「あっそ。・・・じゃあ、いい」 (京介? ってきりのんのお兄さんの部屋?)
「うっし。じゃあとりあえず着替えようぜ」 (いやいや、さすがにそれはねーだろ)
「うん。あのさ、これでとりあえず最後にするから、その・・・」 (・・・・・・・・・)
「へいへい」 (あ~あ、加奈子し~らねっと)
「ん・・・・・・」 ガチャリ
「「「「「あ」」」」」
その後、大騒動が起きたのはいうまでもないお話。
もうあやせは絶対に暴走させないようにしようと心に誓った日だったとさ。
おわり
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最終更新:2013年04月13日 19:59