971 名前:【SS】ぺたん娘と聞いて【SS】:2013/04/04(木) 20:00:43.93 ID:szwwIMn6O
「なあ桐乃」
ある日のリビング。
二階から降りてきた京介がいきなり話しかけてきた。
「・・・なに?」
「お前に言っておかなきゃならないことがあるんだ」
ちらりと目を向けると、いつになく真剣な顔であたしを見ている。
やめてよ照れるじゃん。
「どうせくだらないことでしょ?」
「結構衝撃的かもな」
真剣な顔のままそう切り返してくる京介。
なにその前振り?
真剣な顔して衝撃的な言葉なんて・・・え!?嘘!?ま、まさか!?
「ちょっ!ちょっとタンマ!!」
「なんだ?」
「あ、あんた・・・な、なに言うつもり?」
「あー・・・まあちょっとした告白かな」
「告白!!」
予想はしていたけど、まさかなって思っていただけに今のはキタ!
やばいやばいやばい。顔がすっごく熱くなってきた。
「こここここ告白って、あ、あたしに?」
「まあな」
キッター!!
なにこれなにこれ!?
ねえねえここエロゲ?あたしの持ってる妹ものエロゲ空間!?
いつから仮想空間は現実を脅かすようになったの!?
い、いや今はそんなことどーっでもいい!
京介の告白とやらを早く聞かなくっちゃ!
「ふ、ふーん。ま、まあどうせくだらないことなんだろうけど、ま、まあ聞いてあげるから言ってみ?」
「ああ、悪いな」
そんなことないです!!
あたしは居住まいを正しながら、ばっくんばっくん鳴っている心臓を落ち着けるように一回深呼吸した。
・・・よし、オーケー!
「さ、さあどうぞ!」
「ああ。実はな・・・俺、女なんだ」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
「だからな?俺、男じゃなくて女なんだよ」
972 名前:【SS】ぺたん娘と聞いて【SS】:2013/04/04(木) 20:02:01.11 ID:szwwIMn6O
えーと・・・なにこれ?
告白って聞いてめっちゃ焦って、その結果がこんな陳腐な冗談?
・・・もしかしてからかわれたのあたし?
「あんたここまでひっぱっといてそんな冗談・・・」
「いや、いたって真剣」
言いながら京介は困ったように眉を寄せた。
そこに嘘や冗談を言っているような影は微塵も見えない。
・・・え?ホントに?
「お、女?」
「ああ」
「だ、誰が?」
「だから俺が」
「あんたは男でしょ?」
「いや違うんだ」
「だってその格好・・・」
「親父の趣味だ」
「あ、あんた胸無いじゃん」
「言うなよ。気にしてんだ」
「せ、背だって高いし・・・」
「沙織見といてなに言ってんだ」
「・・・ほんとに?」
「ほんとに」
頷く京介を見ながら、正直頭の中はグチャグチャだった。
なに?京介が女?兄貴じゃなく姉貴?お兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃん?
なんの冗談だ?いや冗談じゃないって?なんなんだわけわかんな・・・。
「だからさ」
「え?」
混乱する頭を抱えつつ見上げた視線の先。
京介はそれはもう嬉しそうにニッコリと笑って言ってのけた。
「これからは、京子お姉ちゃんて呼んでくれよな」
「い・・・っ!」
973 名前:【SS】ぺたん娘と聞いて【SS】:2013/04/04(木) 20:03:15.38 ID:szwwIMn6O
「いやーーーーーーーっ!!」
「うおびっくりした!!」
あたしは絶叫とともに、ハアハアと荒く息をつきながらリビングのソファから立ち上がった。
途端にクラリと眩暈がして、そのままソファに腰を下ろす。
「う・・・」
「お、おい・・・」
「あ、頭いた・・・」
「いきなり立ち上がるからだバカ」
かけられた声に視線を向ける。
見ると京介が心配そうな顔で覗き込んでいた。
「え?・・・あたし、今?」
「ソファで転寝してたんだよお前。そしたらいきなり悲鳴あげて起き上がったんだ」
言いながら京介は安心したように息を一つついた。
そっかあたし寝ちゃってたのか。
そんであんな・・・っ!!
「京介!!」
「おわあ!?」
あたしは起き上がるやいなや、覗き込んでいた京介の襟首をひっつかんで引き寄せた。
「ちょっ桐乃!?苦しい離せって!あと顔近い!!」
「うっさい!今からあたしの質問に正直に答えろ!」
「なんだよ質問て!?」
焦る京介を尻目に、あたしはすこし躊躇しながら質問を口にした。
「あんたは、お、男よね!?」
「・・・は?」
「お、女じゃないよね?あたしの・・・お姉ちゃんなんかじゃないよね!?」
「・・・一体どんな夢見たんだお前?」
呆れたような京介の顔を見て、あたしは体から力が抜けていくのを感じた。
※
974 名前:【SS】ぺたん娘と聞いて【SS】:2013/04/04(木) 20:04:09.58 ID:szwwIMn6O
「なるほど、俺が女ね」
クックッと笑いを堪えてるのが丸わかりの京介の声音に、あたしはますます渋面を深くした。
「そんで確認してみたわけか」
「うっさい。寝起きで混乱してたんだからしょうがないでしょ」
「にしてもな」
そこで言葉を切ってプルプルと小刻みに震えている京介の脛に蹴りを入れてやる。
いい加減笑うのやめろ。
「てて。いやあそれは災難だったな」
「うっさい」
「安心したか?」
「うっさいっての」
「へいへい」
言いながら京介は立ち上がると、そのままリビングの出口へと足を向けた。
「ま、眠りが浅いと変な夢見るって言うからな。気をつけろ」
「大きなお世話」
「そりゃどうも」
いつものやり取りに少しだけ安心する。
はあ。今日ばっかりは京介に感謝ね。
絶対言ってやらないけど。
「まあ」
「ん?」
「お前の方が年上なんだからしっかりしてくれよな姉貴」
「はいはい」
パタンと閉まるドアに向かいひらひらと手を振ると、あたしはンーッとひとつ大きく伸びをした。
「はあ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
END
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最終更新:2013年04月13日 20:13