196 名前:規制代理:2013/06/09(日) 22:06:03.46 ID:7Bd/CwOj0
SS『新しい道』 あ,加
「なー、あやせぇ?」
「・・・・・・・・・」
「なー、なあってばぁ」
「・・・・・・・・・」
あれから・・・桐乃とお兄さんが結ばれてから、一週間が経ちました。
いえ、正確には、桐乃とお兄さんが『関係を解消』してからでしょうか。
わたしはお兄さんにフラれて、桐乃はお兄さんの告白を受け入れて、
そして、桐乃とお兄さんは、二人だけの結婚式を挙げて・・・
それなのに、『普通の兄妹』に戻って・・・
「あーい?あーやー」
「ねえ加奈子」
「んだよ、聞いてんならちゃんと返事しろってーの」
「・・・ごめんね」
加奈子が心配してくれてるのは良く分かっています。
でも、わたしはまだ、わたし自身の気持ちを整理しきれていません。
桐乃とも、ちゃんと話せてません・・・
「加奈子。桐乃とお兄さん・・・なんで、恋人をやめちゃったんだろう」
「・・・・・・・・・」
「本当に、わたしや黒猫さんなんかじゃ相手にならないくらい愛し合っているのに・・・」
認めたくはありません。でも事実です。
『大嫌い』なお兄さんと、大好きな桐乃が、好きあっている事。
二人が恋人をやめてしまった事。
わたしにとって、悪い話ではないはずなのに、考えるたびに頬が濡れてしまいます。
息が苦しくなります。何も考えられなくなります・・・
「まーなぁ。つーかぁ、あやせもわかってんだろ?」
ううん。わたしにはわからないよ。
加奈子みたいに、割り切れない。
「桐乃もきょーすけもぉ、アタシたちのこと考えてくれてんだろ」
「・・・・・・・・・」
「アイツらかんっぺき好きあってるけどよぉ、それを恋人同士って言っちゃうとさぁ、
オメーやししょーみたいにぃ、受け入れられない奴らが出てくんじゃん?」
だって、気持ち悪いものは気持ち悪いんだもん!
桐乃の事は大好きだし、お兄さんの事は『大嫌い』だけど!
でも・・・
「それにぃ、親にも心配かけたくないじゃん」
そっか。加奈子も・・・
「だからぁ、妹の事が好きな兄とぉ兄の事が好きな妹って『普通の兄妹』に『戻った』んじゃねーの?」
加奈子の言い分は分かります。
好きな事は事実、そして、皆が受け入れてはくれない事も事実。
だから、その隙間に落とし込んで、両方を大切にする・・・
「でもっ、桐乃の気持ちはっ!」
永久に、死ぬまで、心の奥底で抱え続けるだけなんて、そんなの・・・
嫌いになってしまうより、きっと、ずっと辛い・・・
「だからぁ、アタシだって考えたんだぜぇ?
アタシたちが気分良く過ごすために、アイツらだけに我慢をさせるのが、
ししょーの言う、『大人の論理』なのかって」
「・・・・・・・・・」
「アタシは、たぶんちげーと思った」
「・・・・・・・・・」
「だからぁ、アタシはちょっとづつ、すこしづつ受け入れていく。
今はたぶん、キメーとしかおもえねーけどぉ、
きっと、10年も経つころには、アタシたちもアイツらの事を受け入れて、
アイツらも、アタシたちの事を受け入れてくれねぇかなって」
加奈子・・・でも、どうやって・・・?
「ホラ、アタシなんて単純だしぃ?
きょーすけがまた、スーパーアイドルのかなかなちゃんを見てくれれば満足っていうかぁ?」
「そっか・・・そういう受け入れられ方だってあるんだ・・・」
アイドルと敏腕マネージャー。
ある意味、恋人よりずっと強い信頼関係で成り立つ、そんな関係。
恋人も決して介入できない、そんな固い絆。
「でぇ、そんだけじゃあアタシしか得しねーからぁ、
アイツがアタシのマネージャーに復帰したら、御鏡のヤローみてーにぶっちゃけてみるかなー?
『かなかなちゃんわぁ、兄妹の間の恋愛だって応援しちゃいまーすっ♪』とかなー」
「ぷっ・・・ステージでそんなことやったら、大変だよ?」
つい、ふきだしてしまいました。
加奈子の言う事って、いつも無茶苦茶なんだから。
「でもよぉ?そんなのも、なんかイイって思わねぇ?
桐乃もきょーすけも、アタシたちの大切なトモダチだしぃ、
世界中の人達にぃ好きになっててもらいたいじゃん?」
世界中の人達・・・
今更ながらに加奈子のスケールの大きさに驚いてしまいます。
きっと、この子は誰もが羨むスーパーアイドルになれるのでしょう。
「そっか。そうだよね」
「おう!」
それなら、わたしはどうしたら良いのでしょう。
わたしはどうやって二人を受け入れて、どうやったらわたしを受け入れてもらえるのでしょう・・・
「そーいやよぉ?あやせってガキ手なずけるの得意じゃんw?」
「手なずけるって・・・せめて慕われるって言って欲しいな?」
「や、いまちょっと殺気をかんじたんだけどぉ。
とにかくぅ、このままだとぉあいつらぜってーヤることヤっちゃうじゃんw?
そしたらよぉ、家政婦とかベビーシッターとかいって、あいつらのなかに潜り込むのもおもしれーかもなぁwww」
加奈子・・・目がにやけすぎ。
冗談で煽ってるのがあからさまで、ちょっとイラっとします。
でも、桐乃の子供、お兄さんの子供を、まるで家族のように一緒に育てるなんて、そんな夢のような・・・あれ?
「ねえ、加奈子?ちょっと聞きたい事があるんだけど?」
「んー?なんだよ?」
「桐乃とお兄さん。『普通の兄妹』に戻ったんですよね?」
「そーだなぁ」
「なんで、子供が出来る事が前提なんですか?」
「・・・あ、あやせぇ?さっきから敬語こわいんだけどぉ」
「どういう事か、説明してもらえますか?」
「お、おう・・・」
加奈子はガクガク震えながらも、ケータイを差し出してきます。
どうやら写真を見せたいようですけど・・・
「まず、これだけどぉ、おとといのアキバでたまたま撮ったんだけどぉ」
「・・・なんでキスしてるんですか?」
「き、桐乃に聞いたら、兄妹だからしょうがないって」
「次の写真・・・抱き合ってますけど、どういう事ですか?」
「きょ、きょーすけもぉ、兄妹だからしょうがないって」
「・・・ねぇ、加奈子」
わたしは、努めて優しい声で加奈子に問いかけます。
「なんで、この二人、一緒にホテルに入ってるんですか?」
「きょ、兄妹だからしょうがないって・・・!」
End.
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最終更新:2013年06月15日 11:51