196 名前:規制代理:2013/06/09(日) 22:06:03.46 ID:7Bd/CwOj0
SS『ある朝の兄妹』桐,京
朝の涼しい風と柔らかな陽光が、眠りの淵にあったあたしの意識を呼び戻す。
目をうっすらと開けると、愛しい人の優しい寝顔が眼前に広がってる。
「そっか・・・昨日も一緒に寝ちゃったんだよね」
独り言のように呟いて、恥ずかしさを追い払う。
とは言っても、別にそこまでヘンな事をしたわけじゃない。
あくまでも兄妹なら当然のことをしていただけだ。
「京介・・・可愛い・・・」
これが、あたしの毎朝の楽しみ。
朝、あたしが起きてから京介を起こすまでの、妹の特権みたいなものだ。
京介を起こさないように少しずつ身体を移動させ、布団の中に潜り込む。
京介の寝顔も素敵だけど、今の内にやっておかなくてはならない事があるからだ。
京介の腰に手をまわして、傍目には分からないくらいのゆっくりとした速さで下げていく。
布団の中だからはっきりとは見えないけど、ひっかかりを抜けると芳しい香りが広がってくる。
『京介の匂い』だ。
そのままずっと嗅いでいたい気もするけど、心を落ち着かせて作業を再開する。
膝の部分を上手く抜け、一番引っかかりやすい足の部分も抜け・・・ようやく半分が終わった。
今度は新品(昨日の夜から準備は出来ている)を先ほどとは逆に上げていく。
暗くて見えないから難しいんだけど、作業の終了を確認するのは簡単だ。
・・・ほら、急に匂いが薄くなった。
あとは、古いのをちゃんとあたしの下着の中に隠して・・・これで作業終了!
京介も、まさか妹がパンツを盗んでるなんて、これなら気が付かないはず。
布団から這い出て、京介の寝顔をたっぷり堪能出来る。
ふと、ドアに目を向けると、昨日寝る時には閉じていたハズのドアがほんの少しだけ開いていた。
(お母さんに見られていたみたい。)
はじめて見られたとき、ちょっと顔が青かった気もするんだけど・・・
でも、これまで何度も見られてるけど、お父さんも何も言ってこないし・・・
やっぱり、兄妹なんだし当然の事だよね。
とりあえず、お父さんたちの事は頭の片隅に追いやって、京介の観察の続き。
広い大きな胸に、あたしのおしりや胸をさわってくる、いやらしい手。
あたしを抱きしめる力強い腕に、あたしだけにくれた唇。
全部が全部愛おしい。
でも、そろそろ京介を起こさなくちゃいけない時間だ。
名残惜しいけど、あたしは京介の唇に、そっとキスをする。
ぱっちり目を開けた京介に、そっとささやく。
「おはよ、京介」
「ああ、おはよう、桐乃」
まるで兄妹になったばかりのようなやり取りに、つい顔がにやけてしまう。
もう15年も兄妹でいるっていうのに・・・
「つかさー、あんたいつも妹に起こしてもらってどうも思わないわけ?」
「おまえの持ってるゲームだと、兄は妹に起こしてもらうもんだったはずだぞ?」
そうなのだ。妹は兄を起こしてあげたいものなのだ。
でも、簡単に引き下がるのはあたしらしくない。
「はぁ?あんたエロゲーと現実を混同しすぎ。
はっきり言って、ダメ兄過ぎてちょうキモいんですけどー」
でも、あたしを頼ってくれてるみたいで嬉しいんだ。
「おまえだって、『人生相談』とか言って俺に助けを求めてくるじゃねーか!?」
「あ、あんたこそっ!桐乃分が足りないとか言って、おっぱいさわったり、お尻さわったり!」
「お、おまえだって、『じゅーでん』とか言って、キスをせがんでくるじゃねーかっ!」
そう。・・・もう、遅いのだ。
あたしたちは、お互いの情けないところ、弱いところ、みんなさらけ出してしまったのだ。
お互いの本心も、これまで隠してきたことも、ぜんぶぜんぶさらけ出してしまったのだ。
お互いの弱点も、全部掌握されてしまってる。一生相手のものになりつづけなければならないのだ。
もう、完全に手遅れなのだ。
「ねっ、京介?」
「うん?改まってどうしたよ?」
「んっ」
―――不意討ちでキスをしてやった。
だって、あたしと京介は、兄妹なんだもん。
End.
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最終更新:2013年06月15日 11:53