ある日、俺が疲れてぼーっとテレビを眺めてたら、
スイーツ特集だか何だかで、焼いたフルーツが紹介されてた。
それを見て俺は、桐乃みたいだ、と思った。
桐乃「んで? どこまで進んでるワケ?」
京介「あー… 水族館デートのとこ、かな」
桐乃「っはあ!? それほぼ序盤じゃん!」
京介「そ、そうなんだけどよ… 仕方ねえだろ?
まだ大学のいろいろに慣れてなくて… レポートとかあったし」
桐乃「言い訳乙! ゲームする時間くらい作れるっしょ?」
京介「まあそうっちゃそうなんだが…」
桐乃「ったく… あたしなんか3日で全分岐回収済みだってのに」
京介「…それはそれで、いいのだろうか」
桐乃「何て?」
京介「サーセン」
桐乃「はぁ~~~~~~~… もういいや、エロゲーのことは」
解説。俺は晴れて大学生となった。そして…
やはり実家からはちょっと距離があるから、通学のことを考えて
一人暮らしをしてる。
桐乃は高校生となり、実家から通ってる。
つまり、なかなか会えないのである。
まあ、基本的に桐乃が俺の部屋に来るという形で、
何だかんだ週に数回は会ってるのだが。
…俺が実家に頻繁に帰ると疑いを持たれかねないからな。
とは言え、大事な時間に違いはないが、見ての通り
エロゲーの話からの俺への罵りと、以前と変わらない感じ。
いや、ほんっと、変わらないのな。桐乃さん流石っす。
とは言え。
桐乃「で?」
京介「で?」
桐乃「どこ連れてってくれんの、こんど」
京介「あ、その話か… そーだな」
桐乃「まさか… 忘れてたわけ?」
京介「違う違う! けど… んーまだ決まってはない」
桐乃「はぁ~~~~? ほんっとトロいよね、あんた」
京介「いやだってよ、俺こっち来てまだ一月経ってねえんだぜ?
まだ土地勘ねえしさ」
桐乃「そんぐらいパパっとリサーチしとけっつーの」
京介「思うんだが、こういうのって一緒に考えるとかもアリなんじゃねえの?」
桐乃「…あたしこのへん、あんま来ないし」
京介「いや、俺もまだあまり知らんのだが… いっそ秋葉まで出るとか?」
桐乃「……ダメ、今回はこの辺がいいの」
京介「そーなのか…」
こんな感じ、もある。デートの話だ。デートとは言わないが。
……一応、途切れずこういうことが続いてる。
しかしこいつも気まぐれで、俺が住んでる街とその周辺って
条件が課せられた。さて、どうしたものか…
京介「…あ」
桐乃「なに?」
京介「そういや、ちょっと前にあった飲み会で訊いた、いくつか」
桐乃「いくつかって?」
京介「こっちのな。夜景がキレイなとことか、これは車じゃないと
ムリだけど、他にも美味い店の話とかも聞いたよ。こっちが地元のやつに」
桐乃「…ふーん」
京介「イタリアンっていうかパスタが美味いとこ。どうだ?」
桐乃「…いーよ、べつにゴハンはそこで。つか、さっさと免許れっつーの」
京介「ぐ…まあ夏休みあたりかな。まだこっち慣れてないし」
桐乃「あっそ」
…免許は春休みにとろうかとも思ってたが、引っ越しとかいろいろと
バタバタしてたのだ。つか、桐乃は夜景の方にも興味があるらしい。
……それはそれとして。何か桐乃が機嫌悪そうになったのだが。
京介「……どうした?」
桐乃「は? べつに」
京介「いや、だって」
桐乃「てゆーかさ、飲み会とかってアンタでも呼ばれるんだ」
京介「呼ばれるわ! つってもさっき言ってたのはクラス会っつーか
学科の新入生歓迎コンパってやつだがな」
桐乃「未成年のくせに… 何か大学ってやっぱチャラいよね」
京介「おまえに言われてもな」
桐乃「は?」
京介「何もないっス」
桐乃「…女とかも来たりするわけ?」
京介「そりゃな、さっきの店とか教えてくれたのもそーだったよ」
桐乃「……」
京介「…ん? いや、ただ話しただけだぞ?」
Oh… 桐乃の表情が険しいぜ。そういうことか。
あれ以来、ワリと分かるようになったよ。
だって自惚れとは、もう言えないんだから。
桐乃「……どーだか」
京介「……なわけねーだろ?」
桐乃「アンタ、お節介なことしてたりすんじゃない?」
京介「いや、そーゆーことはまだ…」
桐乃「まだ?」
京介「そんなつっかかんなよ」
桐乃「は? べっつにつっかかったりしてないし!
勝手にすればいいんじゃん?」
そう言うと桐乃はむくれた顔になった。少し顔が赤い。
コイツはコイツで複雑なのだ。
あの期間のことだって、色々考えて…
そしてわがままに、付き合ってくれてありがとうと、桐乃は言った。
今は、事実上だろうが名目上だろうが、兄妹。
京介「なあ、桐乃」
桐乃「…うっさい」
それでもお互いの気持ちを知ってしまっている。
京介「桐乃?」
桐乃「…だから、なっんム!?」
桐乃の顔を引き寄せてキスをした。
桐乃は手でぐいっと俺の体を押す。
桐乃「アンタ何 っん!」
構わずもう一度。今度は手を掴んで。
少しすると上体を反らして辛うじて桐乃が離れる。
桐乃「ちょ…っんん!」
追うようにしてもう一度。
結局、俺が覆いかぶさった形になった。
そのまましばらく。桐乃はもう抵抗してない。
一分くらい経ったところで、今度は俺が離れる。
蕩けた表情の桐乃を無言で見る。
桐乃「……」
京介「……」
桐乃「………な、何っ…」
言葉が続かないまま、桐乃は顔を横に逸らした。
京介「…なあ、桐乃」
桐乃「…何」
京介「…俺、一途だからさ」
桐乃「っ!!」
京介「だから、そんなイライラすんなって」
桐乃「…べつにイライラしてないし」
桐乃が逸らした顔を正面に戻して、またすぐ逸らした。
そんな桐乃をまた、無言で見る。見続ける。
桐乃「………っ! な、何なワケ?」
京介「……どうしてほしい?」
桐乃「~~~~~~~~~~~~~っ!」
横目で俺を見ている桐乃。
その顔を手でこっちに向けてまたキスをした。
今度は長く。もう桐乃の抵抗はない。
しばらくすると桐乃は手を俺の背に回して。
桐乃「……きょ…すけっ」
キスの合間にそう呼ぶ声が耳をくすぐる。
甘く、熱を帯びている。
焼いたフルーツみたいだ。
END
最終更新:2013年12月25日 03:39