SS『休日のラプソディ』
今日はちょっと珍しく、妹と一緒にアキバではない場所に来ている。
というのも、数日前、いつものごとく桐乃が俺の部屋へ突然乗り込んできて、開口一番、こう言い出したからだ。
「来週の日曜日、原宿に行くから!わかった!?」
「な、なんだ?突然どうした?」
と問い返したものの、『いいから!わかった!?』の繰り返し。
「はいはい、わかった、わかった。わかったから。で、何があったんだ?」
しかたなく俺はこう言って桐乃を落ち着かせる。
で、話を聞いてみると、どうやら、みんなでファッション誌を見てた時に、加奈子がこう言っていたらしい。
『そういえば京介ってー、見た目はそんなに悪くねーのに、いっつもカッコはダサいよなーw』
あんのクソガキ、、、ったく、余計なお世話だっつーの!
、、、まあ、それは良い。いや、良くはないが、とりあえず良い、、、のだが。
「で、何でおまえはキレてんの?」
「キ、キレてない!」
ウソつけ、間違いなくキレてんじゃねーか、おまえ。
「だいたい、あんたがいっつもダサいカッコばっか、してるからじゃん!たまにはオシャレなカッコしろっつーの!」
え?俺のせい?なんで?なんで俺、妹の友達に悪口言われたうえに、妹に怒られてんの!?ワケがわからん。
と言うかだな、、、。
「いきなりそう言われてもなぁ。第一、オシャレなカッコってのがよくわかんねぇんだよな。今のカッコって、そんなにダメか?」
『んー、悪くはないんだけど、オシャレ、ってまではいかないかなー。』
ここでこんなふうに言い返してきたら、少しは可愛げがあるってなもんなのだが、俺の妹がそんなことを言うわけがない。
「ダメ。ダサい。」
バッサリこれだ。いいかげん、もう慣れてしまって、いっそ清々しくすらある。
「だから、あたしが直々にレクチャーしてあげるって言ってんの!感謝しなさいよね!」
「はいはい。」
最初からそう言え、バカ。
「なに?その態度?」
「ありがとうございます!感謝してます!」
「よし。」
、、、こんなんだから、御鏡にドMだとか言われるんだろうな。
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---ということで、俺たちが今いるのは、原宿の表参道だ。
前にも何度か来たが、やっぱり俺には場違い感が拭えない。
逆に桐乃は、水を得た魚のように、あちこちのショップを見て回っている。
その姿は、アキバのショップめぐりのときと重なって見える。
あっちを裏の桐乃だとすると、こっちが表の桐乃ってとこなんだろう。
結局、どっちもおんなじ桐乃ってことに変わりはないらしい。まあ、あたりまえのことなのだが。
てか、あちこち見て回っているのはいいんだけど、今回の目的は俺の服だったんじゃないのか?
ま、桐乃も楽しそうにしてるから、別にいいんだけどよ。
「あれぇ?桐乃さんじゃないですかぁ?」
しばらく、ぶらついていたところで、どこかの店員さん?のような人に桐乃が呼び止められる。
「あ、どうも、こんにちは。お久しぶりです。」
どうやら桐乃の知り合いらしい。どっかで会ったことがあるような気もするが、多分気のせいだろう。
「は~い、お久しぶりですぅ。今日はお買い物ですかぁ?」
「ええ、まあ。」
「へぇ、じゃあ、そっちの人がお兄ちゃんなんですかぁ?」
「えっ!な、なんでですか!?」
突然の質問に、慌てふためく桐乃。
「だってぇ、前に雑誌のプロフィール欄に書いてましたよねぇ~、休日は大好きなお兄ちゃんとお買い物して過ごしてますって?それで、そうなのかなーって。」
「え?や、そ、それは、違くて、、、。ざ、雑誌の取材で聞かれたから、しょうがなく適当に答えただけですってば!」
「ほ、ほう、、、へぇ~、、、。」
「あ、あんたも、ニヤニヤしてんじゃない!バカ!」
「あれぇ?でも、お兄ちゃんとも前にどこかで会ったことがあるような、、、?」
「え?」
原宿なんて、殆ど来たことがないのだが、それで人に覚えられるようなことをした覚えは、、、やべ、この人もしかして、、、。
「あぁ、思い出したぁ!前にパンツかぶってわたしとツーショット撮った男の子だぁ!」
やっぱりか!
途端に妹の目が冷たくなる。
「あの時のパンツくんがぁ、まさか桐乃さんのお兄ちゃんだったなんて、びっくりですぅ!」
俺もびっくりだよ!そしてパンツくんとか言うな!
「あ、あはは、、、その節はどーも、、、。」
どんな挨拶しろってんだよ!ちくしょう、、、。
「んー?ということはぁ、あのパンツは桐乃さんへのプレゼントだったんですかぁ?」
「んなワケないじゃないですか!」
いかん、これ以上、この人のペースで会話を続けると、ここから先、一人で行動する羽目になりそうだ。
「と、ところで、、、、えっと。」
「ん?あたしですかぁ?星野って言いまーす。ほっしーって呼んで下さいねぇ。」
「じゃあ、えと、ほっしー、、、さん。」
「はぁい?」
「俺たち、ちょっと次の予定があるんで、この辺で失礼しますね。」
「はぁい。じゃあ、デートの続き、楽しんでくださいねぇ。」
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とりあえず、その場を離れたものの。
すたすたと前を歩く桐乃。
「おーい、桐乃さん?」
ぴたっ、と歩みを止めて、身体ごとぐるんとこっちに振り向く。
あー、やっぱりな。怒ってる怒ってる。
「あんたのせいで、すっごい恥かいたじゃん!」
『俺のせいじゃねーだろ!』
と言いたいところだが、元をたどれば昔の俺のせいだから、言い返せない。
「仕方ねーだろ。あんなとこでたまたま出会った人が、おまえの知り合いで、しかも昔の俺を知ってる人だったなんて偶然、あるなんて思わねーし。」
ホント、なんつー偶然だよ。
これでも日ごろの行いは悪くないつもりなんだがな、、、。
「ホント、最悪!」
こりゃ、しばらく収まりそうにねーなー、、、。
「はれ?高坂?」
と、そこで背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返ってみると、そこに見覚えのあるクマさんが立っていた。
いや、正確に言うと、クマの着ぐるみみたいなのを着た女がいた、という意味なんだが、、、。
こんな変テコなカッコで歩き回るやつなんて、俺の知り合いには一人しかいない。
「櫻井か?」
「はっはー。そう!ラブリーユアエンジェルの櫻井秋美ちゃんだよーん。」
「誰が誰のエンジェルだ、ったく。てか、またパジャマで出歩いてんのか?」
「パ!パジャマじゃねーよ!って、コレ、前にも言ったし!」
「パジャマじゃなきゃ、その、ラブリーベアエンジェルとやらの着ぐるみか、コスプレってとこか?」
「そう!愛らしい天使のクマさんをモチーフにした、って、ちがぁーう!ユア!キミの!って、そこじゃなくて!ワンピース!クマさんワンピース!」
相変わらず、ノリのいい奴だ。
てか、どう見ても、向こうで着ぐるみを着てチラシを配ってるアルバイトの人と同じにしか見えんのだが。
「で?おまえはこんなとこでなにしてんだ?」
「原宿に来ている乙女に向かって、なにしてんだ?は、ねーよ!高坂!服!服を見に来てたの!」
「おまえが着てるよーな服って、アキバとかのほうが売ってあんじゃねーの?」
「アキバに売ってあんのは、あたし好みじゃないんだよねー。」
冗談で言ったのに、マジ回答が返って来ちゃったよ。
てか、、、あんの?違いが?
「で?高坂こそ、こんなトコでなにしてんの?」
「おまえと同じだ。服を見に来てたんだよ。」
「お!そーゆーことなら、この秋美ちゃんにお任せあれ!」
「やだよ。」
「即答!?」
「おまえに見繕ってもらうと、残念系ファッションになるからな。」
「な!相変わらずしつれーなやつだな、キミは!しかも、この最先端の秋美ちゃん系ファッションの良さが分からないとは!?」
最先端の残念系だろ。一生分かりたくねーよ。
「でも、あたしも見てみたいかな。楽しそーじゃん。」
さっきまで怒ってたはずなのに、いつの間にか機嫌が良くなってる。
「お、妹ちゃんも一緒に着るかい?」
「や、二人分になると選ぶのに時間が掛かるだろうから、あたしは遠慮しときます。こいつの分だけ選んでやってください。」
おまえ、それって間違いなく、自分は着たくないけど、俺に着せて面白がろうって魂胆だろ。目がニヤけてるし。
、、、ま、いいか。それで機嫌がよくなってくれるんなら、とりあえず着てやんよ。
もちろん買わないけどな。
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、、、ってなことを、考えるんじゃなかった、、、。
早くも後悔する俺だった。
「、、、なに?これ?」
「秋美ちゃん超オススメの逸品!その名もズバリ、『こめっとくんスーツ』!」
、、、どう見ても着ぐるみですよね?コレ。しかもあのアニメの。
「きゃはははっ!か、可愛えぇぇ!」
桐乃、おおはしゃぎ。
「ふふん、どうさ、この秋美ちゃんの超審美眼。絶対キミに似合うと思ったんだよねー。」
「なわけねーだろ!」
ゼッタイ似合ってないですから。てか、似合ってると思われたくないですから。
てか、これって、服なのか?
「ねぇ、あんた、『危ない!メルちゃん!まじかるフィールド、展開っ!』って言ってみてくんない?」
「やだよ!」
「えー、なんでー?」
「なんででもだ!」
「けち。」
「そーゆー問題じゃない!」
「ほら、妹ちゃんも気に入ったみたいだしさ。買っとく?買っとく?ってゆーか、むしろ、いつ買うの?今でしょ!」
「買わねーよ!」
どっかの予備校の先生か、おまえは!
てか、なんでこんな着るあても無いものを、わざわざ金だして買わなくちゃいけねーんだよ!?
「じゃあ、あたしが買ってあげる。」
「は?」
「あたしがプレゼントしたげるっつってんの。」
「いらねーよ!」
「ふひひ、遠慮なんかしなくってもいいって♪」
「してねーよ!」
「すいませーん、これくださーい♪」
なんで人の話を聞かないかね、この妹様は。
、、、こうして俺は、一生着ることはないであろう、『こめっとくんスーツ』を手に入れた。
「むふふー、高坂、ここで装備していくかね?」
「しねぇーよ!」
はあ。なんで、俺の周りにはこう、つっこみがいのあるやつばっかりしかいないんだろな。
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「じゃあ、次は、、、。」
「次があんのかよ!もうこれで十分だよ!」
「な!なにぃ!もうこれで終わり!?」
「ああ。だいたい、おまえが選ぶ最先端のファッションは、俺にはすぐ着こなせそうにねえからな。一着で十分だっつーの。」
「むう、、、。ならばしかたがない。キミにはもーちょっと精進が必要のようだな。」
ああ。あと100年くらいな。
「んじゃー、あたしはこの店の服をもう少し見てみよっかな。キミたちはどーするの?」
「そか。じゃあ、俺たちは別の店を見てみるよ。」
この店に、俺が着られる服は無いしな。
「りょーかい。じゃあ、次に会うときまでに、しっかり精進しておけよー。」
「へいへい。じゃあ、またな。」
「おー。」
てなわけで。
俺たちは、とりあえず櫻井の魔の手から無事に逃れることができた。
とりあえずカフェで一休み。
「だいぶ余計な時間を食っちまったな。で、次はどうする?」
桐乃に聞いてみる。
「んー、じゃあねぇ、、、。」
「あれ?桐乃じゃね?」
声のした方向に振り向くと、後ろのテーブルに加奈子とブリジットちゃんが座っていた。
なんでまた今日に限って、次から次へと、、、。
「こんにちは、マネージャーさん、彼女さん。お久しぶりです!」
「「え?」」
「あー、桐乃、京介、ちょっと耳貸せヨ。」
「?」
不思議そうにこちらを見るブリジットちゃん。
加奈子が俺たちに小声で話しかける。
「あのさー、ブリジットは色々事情を知らないからよー、とりあえずおまえら、ふつーの恋人ってことにしといてくんねー?」
あ、そーゆーことか。
確かに前に会ったときは恋人のフリしてたし、そのあと俺がマネージャーってことがバレたときも、桐乃との関係は説明してなかったしな。
「了解。わかったよ。」
「し、しかたないなー。」
「桐乃ー、顔、ニヤけてんぞ?」
「べっ、別にニヤけてなんかないってば!何言っちゃってんの!?加奈子!」
「へへー、とりあえず、そーゆーことにしといてやんよ。」
「ち、違うってば!ったくもう、、、。へへっ、こんにちは、ブリジットちゃん。」
「はい!あ!この前は、ライブに来てくれて、ありがとうございました!」
それって、桐乃と一緒にライブ会場に戻ったときのことか。あのときも見られてたんだな。
「あ、気付いてくれてたんだ。ごめんね、ステージに間に合わなくって。すっごく見たかったんだけど、用事が長引いちゃって。ホント、ごめんね。」
「はい!また今度ぜひ、見に来てください!」
「もちろん!ゼッタイ行くって約束するよ!」
言われなくても行くだろ、おまえ。
「桐乃って、メルルが好きなわけ?」
「あ、えっと、その、、、。」
「二人がライブに出るってことを俺が話したら、二人の応援に行きたいって、こいつが言い出してな。」
俺はすかさずフォローを入れる。いつものパターンだと、このままほっといたら、こいつが自爆するのは目に見えてるしな。
「そ、そうそう!と、友達が出てるんだから、応援するのは当然じゃん!」
「そっか。さんきゅーな、桐乃。」
「ありがとうございます!」
「へへ、、、えへへ、、、どういたしまして。」
盛大に顔がニヤけまくってるぞ、おまえ。
「あの、、、お二人はデート中なんですよね?」
「へっ?あ、えっと、うん。そう。」
何?その、納得いかない、みたいな顔。たった今見せたニヤケ顔と大違いじゃん。反応おかしくねぇ?
「いいなー。」
そうとは気付かず、素直な反応を見せるブリジットちゃん。
どこぞの妹にも、爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。
っと、そう言えば。
「そういや、加奈子、俺の悪口を言ってたらしーな。」
「あん?」
「カッコがダサいとかって。」
「あー、あれか。てか、あれってー、悪口じゃなくって、ジジツを言っただけじゃん。」
余計悪いわ。
「でも、あんときの桐乃、チョー面白かったんだゼ?加奈子がそう言ったら、すぐムスッとしちゃってさ。」
「ちょ、加奈子!」
「だけどー、あやせが『でも、お兄さんらしいカッコだよね?』とか言ったら、『そ、そう?』とか言ってニヘッとして。」
さすがあやせ。良く分かってんじゃねーか。
「んで加奈子が『それってフォローじゃなくね?』っつったら、あやせが『う、うーん、、、。』とか言って。そんでまた桐乃が、ムスッとして。」
ちょ、あやせ、、、それって余計、傷つくんですけど。
「だいたい桐乃ってー、普段大人ぶってるくせにー、京介のコトになると、すーぐムキになるんだよねーw」
「う~~~。」
唸るな、おまえも。
「でも、そのせいで加奈子、あやせサマにチョー説教食らっちゃったんだゼ?あのアト。ったく、やってらんねーっての!」
「かなかなちゃん、、、それ、自業自得、、、。」
「?何それ?何語?チョームツカシイんですケドー。」
おい。それは、外国人の小学生に、日本人の中学生が聞くことじゃねーぞ。
「ってゆーか、ひょっとして、おまえらがこんなとこでデートしてるのって、もしかして、それが理由なワケ?」
「う、、、ま、まあ、そんなとこだ。」
たまーに鋭いよな、こいつ。
「ひゃははっ、ダセーな、京介!」
「う、うっせ!」
「うひひ、ま、いーや。んじゃ、今日は京介のオゴリな?」
「なんでだよ!」
「あやせに説教された加奈子に対する医者料ってヤツ?」
「なんで悪口を言われた俺が払わなきゃならんのだ!」
あと、医者料じゃなくって、慰謝料な。どこの病院に行くつもりだ、おまえは。
「しかたねーなー。そんじゃ、桐乃とデートのコージツを作ってやったお礼?ってことでいーや。」
「ぐ、、、。」
確かに結果だけ見ればそうなのかもしれないが、、、。
結局、俺は加奈子とブリジットちゃんの分を奢らされることになった。
、、、納得いかねぇ。
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カフェを出たあと、俺たちは加奈子たちと別れた。
正確に言えば、加奈子は俺たちについてこようとしたんだけど、ブリジットちゃんに、
『かなかなちゃん!二人の邪魔しちゃダメ!』
と、言われて渋々諦めた、ということなのだが。
「もうだいぶ遅くなっちまったな。俺の服、また今度にするか?」
「はぁ?何言ってんの?せっかくここまで来たんだから、ちゃんとやらなきゃ、来た意味ないじゃん!」
「とは言っても、おまえの門限まで、そんなに時間ねーぞ?」
「んー、しかたない。じゃあ、そこの店で見繕ってみよっか、あんたの服。」
ということで、俺たちは近くにあったブティックに入った。
「で、早速だけど、あんたなら、ここでどれを選ぶ?」
ホントにいきなりだな、おい。
「うーん、、、。」
どれも同じようにしか見えんが。
「、、、これとか?」
とりあえず、適当に選ぶ。
「お、あんたにしては、いいセンいってんじゃん。で、何でそれを選んだの?」
そうくるか。適当に選んだとは言えんな。
「、、、この辺が、普通のヤツとちょっと違っててオシャレかな?って思ったんだが、、、。」
なんか、前に最初にやったエロゲの感想を聞かれたときのような感じだな。
「ふーん、、、。」
ど、どうなんだ、、、いったい?
「、、、ま、服を選ぶセンスはあるみたいじゃん。」
お、正解だったみたいだな。
「ふふ、まあな。」
「いばんな!選ぶセンスはあっても、いつもお母さんが買ってくる服を着てるんじゃ、意味ないでしょ!」
「まあ、確かに、、、。」
自分じゃ服なんてほとんど買わねえしな、俺。
「じゃあ、次。これに合うパンツを選んでみて。」
むう。なんか、ゲームをやってる気分になってきたぜ。
「うーん、、、これ?」
「、、、全然ダメ。何でジャケットがこの色なのに、パンツがその色になんの!?ありえなくない!?」
「いや、、、この辺がオシャレだと思ったんだが、、、。」
「確かに、そこの作りは変わっててオシャレだけど、色の組合せがありえないっつってんの!上下を合わせて着たときのイメージを考えてみろっつーの!」
、、、言われてみれば、確かにちぐはぐで合ってないな。
「組合せをイメージして、服を選ぶってすっごく大事なんだから!今度から、しっかり考えること!」
「ああ。」
「これは、新しい服を選ぶときだけじゃなくって、今の服を選ぶときも同じことだから!わかった!?」
「ああ。」
「じゃあ、次回までに、今の服の中からきちんと組合せを選んでおくこと!いい!?」
「ああ。って、次回?」
「たった1回で何が分かるって?言っとくけど、あんたのオシャレ道は始まったばかりだから。」
前に聞いた、似たような台詞よりも、ずっとサマになる台詞だった。
ま、こっちの道なら、頑張ってみてやらんこともないさ。自分のためにもなるし、なにより、、、いや、なんでもねーや。
「あ、でも、だからと言って、あんたのエロゲ道が終わるわけじゃないから。」
、、、どうやらコッチの道も、まだまだ終わりそうにないようだ。
はぁ。やれやれ、しょーがねーな。
ま、結局、どっちの道も、目的地はおんなじか。
それに、、、なにより、自分で選んだ道なんだからな。
一生かけて歩き続けてやるさ。
このはてしなく遠い妹道をよ、、、。
、、、へっ、カッコいい言い方にしてみても、やっぱ締まらねえな、こりゃ。やれやれだぜ。
「何してんの?今日はもう帰るよ。」
「へいへい。」
先に店の外に出ていた桐乃に追い付き、二人一緒に並んで歩き始めながら。
「、、、待ってろよ、桐乃。」
そう一人、小さくつぶやく。
「、、、なんか言った?」
「な、何でもねえよ。」
「、、、あっそ。」
返ってくる、すげない返事。
そして。
きゅっ。
俺の手を包み込んでくる、柔らかなぬくもり。
「、、、待ってるよ、兄貴。」
かすかに聞こえた、小さなつぶやき。
その言葉に、俺は精一杯、気付かなかったフリをしつつ。
「、、、な、なんか言ったか?」
「、、、な、何でもないよ?」
「そ、そっか。」
繋いだ手に、きゅっと力を込めるのだった---。
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そして、その数日後。
俺は、一生着ることはないであろう、と思っていた『こめっとくんスーツ』を、いきなり着る羽目になった。
メルルのコスプレに身を包んだ、桐乃と一緒に。
「よっし、ってわけで---着よっか。」
「は?」
「着よう。」
「、、、。」
「着ろ。」
、、、、、。
こうしてまた、俺たちのアルバムに、新たなる黒歴史が刻まれたのだった。
ちなみに、さらにその数日後、桐乃はこのコスプレ姿を親父に見られることになるのだが、それはまた、別のお話である。
Fin
最終更新:2014年04月18日 22:40