92 名前:SS『3回目のバレンタイン』SS:2014/02/14(金) 17:28:24.07 ID:oc1wwFtGO
「桐乃!今日はバレンタインだぜ!」
「あーそーね」
勢いよく開けたリビングの中。
桐乃はいつものようにソファーに腰掛け雑誌を読みながら、思いっきり気のない返事で俺を出迎えてくれた。
『3度目のバレンタイン』
「え?あれ?」
・・・おかしいな。思ってたのと反応が違うぞ?
俺はしきりと首を傾げながら、去年のバレンタインを思い出していた。
さんざっぱら練習し、櫻井の犠牲を乗り越え、見事俺の為に美味しいチョコレートを作ってくれたのだった。
はずだったのだが・・・。
「き、桐乃さん?」
「なに?」
「あのー・・・俺にチョコとかないの?」
「なんで?」
「な、なんでって・・・」
あまりにそっけない返事に少し頭にくる。
「去年はお前!手作りのチョコくれたじゃねーか!」
性格には一昨年もだけど。
「はあ?」
そこでやっと桐乃は読んでいた雑誌から顔をあげた。
とても胡乱な目をしながら。
「ばかじゃん?」
「はあっ!?」
「あんときゃあたしあんたの彼女だったっつーの。今はただの妹なんだっつーの。なんであたしがあんたにチョコ作ってやんなきゃいけないわけ?」
「うぐぐ・・そ、それは・・・」
いかん。なんかえも言われぬ迫力に押されてるぞ。
いやここで起死回生の言葉を・・・!!
「きょ、兄妹なんだからそれくらいしてくれてもいいだろ!!」
「きも」
俺のすべてを込めた渾身の一撃を、その一言でバッサリ切り落としてくれやがった。
93 名前:SS『3回目のバレンタイン』SS:2014/02/14(金) 17:30:29.19 ID:oc1wwFtGO
いや確かにけじめをつけるために別れたわけだけどよお・・・少しくらいは良いじゃねーか。
なんだかんだ言ってクリスマスもまた一緒に過ごしたし、初詣だって二人っきりで行ったじゃん。
なのにこのイベントだけそっけないとかないだろーよ・・・。
俺は心底うなだれると、大きくため息をついた。
「あー悪かった・・・部屋戻る「あ」
え?
「これならあげてもいいよ」
不意に背後から掛けられた声に振り返ると、桐乃は手に今自分が食べていたポッキーの箱を持って差し出していた。
「一応チョコでしょ?」
「は、はは・・・」
全く。去年は彼女の手作りチョコで、今年は妹から食べかけのポッキーかよ。
落差の大きさに涙が出るわ。
「ほら。いらないの?」
「へいへい。ありがたくいただきますよ」
「よし」
桐乃は不意にぱあっっと明るい笑顔を浮かべると、いそいそとポッキーの袋に手をかけた。
「ん?なんだ?くれるんじゃなか・・った、の・・・か?」
そうして桐乃はポッキーを一本取りだして・・・。
「ん」
チョコのついた方を口にくわえると、気持ち上向きに俺の方に顔突き出してきた。
「き、桐乃!?ちょ、おまっ!?」
「なにしてんふぉ?はやくたべなよ」
「い、いやだっておまえこれ・・・」
「うけふぉっておいてふべふぉべひゅうな」
「っ!?お、お前まさか最初からこれが目的でっ!?」
俺の言葉に桐乃はニカッと破顔すると、無言でもう一歩顔を突き出してきた。
「ひょーふへ」
「な、なんだよ!?」
「はっふぃーばれんふぁいん」
「・・・」
結局ポッキー一箱空けました。
END
最終更新:2014年05月25日 01:57