215 名前:【SS】:2014/03/15(土) 00:26:42.65 ID:zOv3MA0L0
俺の妹がこんなにエロゲーなわけがない~逆襲の秋美~ホワイトデー編
あの卒業式の日から2週間ほどが過ぎた。『約束』によって恋人期間を終了した俺と桐乃だったが、
その後の『人生相談』で、とりあえず恋人期間を延長することになった。
いきさつはまた別の機会に語る事にする。なにしろ今は―――
ピンポーン
桐乃「誰か来たみたい」
京介「そうみたいだな」
桐乃「みたいだなじゃなくて早く出てよ」
京介「え~、桐乃と離れるのやだよ」
ピンポーンピンポーンピンポーン
桐乃「ば、バカな事言ってないで早く出ろっての!」
京介「へいへい」
俺は桐乃の部屋を出て階段を下りる。
くそっ、今日は親父もお袋もいないから、桐乃と二人きりで『お布団デート』を満喫していたというのに…………。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!
京介「はいはい」
誰だ?こんな朝っぱらから……。鳴らし方からして宅急便の類いではなさそうだが……。
俺はドアをそっと開ける。
そこには―――
―――白クマがいた。
バタン!ガチャリ
ドアを勢いよく閉じ、即刻カギを掛ける。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン!!
高橋名人ばりの連打と共にドアの向こうから、う~~~~が~~~~~~~~っ!という声が聞こえる。
間違いなく変質者である。よし!あやせに通報だ。
携帯を取りに戻ろうとしたところで更に叫び声が聞こえてきた。
秋美「人を呼び付けておいてこの仕打ちはなんだこらぁ!!!!」
京介「誰も呼んでねーよ」
秋美「呼ばれたんだよ!キミの!妹に!」
京介「桐乃~、白クマが来てるぞ。呼んだのか?」
騒がしいのが気になったのか、桐乃が玄関まで下りてきた。
桐乃「シロクマ?呼んでないケド?」
秋美「白クマじゃねーよ!フェレット!ホワイトフェレット!!」
わからん……。どう見ても白クマだろ、あれ。いつものくまさんが真っ白になっただけじゃねーの?
……まあどっちでもいいか。それより近所迷惑になりそうだから、そろそろ入れてやるか。
ガチャ
京介「入っていいぞ」
秋美「お…おじゃましまーす」
桐乃「なんだ、櫻井さんじゃん。いらっしゃーい」
秋美「よ、きりりん氏。」
桐乃「てゆーか櫻井さん、今日はシロクマなんだ」
秋美「だ~か~ら!ホワイトフェレットだっつーの!!そこ重要だから!」
桐乃「ふーん。で、なんでホワイトフェレットなワケ?」
秋美「よくぞ聞いてくれました!今日はホワイトデーなので、ので!本日限定特別仕様、ホワイトフェレット秋美ちゃんですっ♪」
相変わらず残念なヤツだ。つか、こんな格好で俺ん家来るのやめてくんねーかなぁ……。
とりあえず玄関じゃあれなので櫻井をリビングに通す。
秋美「とゆーわけで高坂、あたしにホワイトデーのお返しちょーだい(はあと)」
京介「なにが『とゆーわけで』だ。俺、バレンタインにおまえから何も貰ってねえじゃねーか」
秋美「バレンタインは寝込んでたの!キミの妹のせいで!」
そういやこいつ、桐乃の手作りチョコレートの特訓に付き合わされてたんだっけ。
あんなに食わされてよく生きて帰ってこれたな……と、感心するが――
京介「それがなんでおまえにホワイトデーのお返しするって話になるんだ?」
秋美「どうせキミ、妹からラブラブ愛情たっぷりのチョコレート貰ったんでしょ!」
桐乃「ちょ!ななななに言ってんの櫻井さん!?」
秋美「まっずーい試作品を食わされ続け……意識が……遠のく中、チョコを作りながら
『京介喜んでくれるかな~』とか!『京介美味しいって言っ――」
桐乃「わーわーわーわーっ!!」
慌てて櫻井の口を押さえる桐乃。
ヤバい……嬉しくて泣きそうだ。櫻井がいなければ今すぐに桐乃をぎゅっと優しく抱きしめるのに……。
秋美「…………うぐっ!……このブラコンが!とにかく!キミが貰ったバレンタインチョコはつまり!あたしときりりん氏の合作なのだっ!
だからあたしには高坂からお返しを貰う権利がある!」
京介「……ものは言いようだな。確かに桐乃のチョコはめちゃくちゃ美味かった!おまえの功績を少なからず認めよう。
だが……さっきも言ったけど、今日おまえには何も用意してないから、また後日あらためてって事でいいか?」
秋美「フッ。そんなことだろうと思ってキミにとびっきりのスペシャルなプランを用意してきましたー」
京介「ほう……」
櫻井の妄想プランは時々ぶっ飛んじゃいるが、男子高校生のツボは押さえていて実は密かに期待していた。
……あ、俺もう高校生じゃねーや。
桐乃「櫻井さんの妄想って京介ばっかり得するようになってるよね。いつもあたしが損してる気がするんだケド……」
秋美「そこは心配いりません。なんたってホワイトデー限定プランですから!彼女さんに満足いただけること請け合いですよ!」
桐乃「でもなぁ……」
桐乃、なぜ顔が赤い……?それに櫻井、おまえの為のプランじゃないのか?桐乃を勧誘してどうする。
秋美「このプラン、他にも検討中の方がいまして、今お見送りされますと他の彼女さんに決まってしまう可能性もございますが……」
あほか……。なんだこの流れ……。それに、そんな不動産販売の決まり文句をパクっただけの勧誘に桐乃が食いつくわけ――
桐乃「じゃあ聞く」
食いついただと?!…………まあいい。ツッコミたいのは山々だが、櫻井のプランが気になるし桐乃も乗り気のようなのでスルーすることにしよう。
秋美「それではいきますよー。じゃーん!その名も『朝から晩までお姫様デート』!」
京介・桐乃「ほう…………」
秋美「キミたちは『お姫様デート』と聞いてなにを連想するかな?」
京介・桐乃「……………………姫初め?」
秋美「ちげーよっ!!このエロゲ脳兄妹がっ!!お姫様つったらあれしかないでしょ!」
桐乃「もったいぶらないで早く言ってよ」
秋美「おっけ。ちなみに今回は秋美ちゃん視点になってるよん。では…………」
想像してみてください―――
俺は頭の中に桐乃をイメージしながら櫻井の妄想に耳を傾ける。
朝。まどろみの中、あたしは包み込まれるような温かさに目を覚まします。
ふと横を見ると彼の顔がくっつきそうなくらい近くにあります。どうやら腕枕をされていたようです。
あたしはその心地良さに彼の胸に顔をうずめて匂いを嗅ぎます。とてもいい匂いです。
すると彼も目を覚まし、あたしの頭をそっとナデナデしてくれました。
あたしは幸せいっぱいな気持ちになり、彼にぎゅっと抱きつきます。
京介「……………………」
桐乃「……な、なんか具体的だけど『お布団デート』と変わんなくない?それにお姫様は?」
秋美「焦るでないきりりん氏。まだまだこれからですぞ!」
桐乃「……わかった。続けて」
秋美「ほいほいー」
このままずっと彼に密着していたいところですが、寝起きの顔を見られ続けるのと、
お口のエチケットが気になるので、洗面所に行くと告げ部屋を出ようとします。すると彼が
『俺にまかせろ』
と、あたしを抱きかかえました。いわゆるお姫様だっこです。
桐乃「お姫様だっこキタぁ!!」
秋美「そうです!これが『お姫様デート』の所以、全ての女子の夢!憧れ!お姫様だっこです!」
桐乃「櫻井さん、続き続き!」
秋美「ういういー」
『今日はホワイトデーだから俺が連れて行ってやるよ。あと、してほしいことがあったら何でも言ってくれ』
お姫様だっこされたあたしは彼に
『絶対離さないでよね』
と言うと彼は
『ああ、絶対離さない』
と。あたしは彼にそっと抱きつき身を委ねます。
そして部屋を出て階段を下りていきます。一段一段ゆっくりと慎重に。
その度にあたしは彼の首に巻き付けている腕の力をぎゅっと強めます。
無事階段を下り終わり、洗面所までたどり着きました。
名残惜しいけれど、だっこから降ろしてもらい、洗顔をします。
そして歯磨きをしようとしたところで彼が
『それ……俺にやらせてくれないか?』
『え……?歯磨き?京介が?あたしに?』
『ああ』
桐乃「……こ、これはまさかあの伝説の――」
秋美「ふっふっふ。そうこれがあの伝説の『阿良々木兄妹の歯磨きプレイ』!!」
桐乃「うひょーーーー!!火憐ちゃんktkr!!!!すっごーい!櫻井さん天っ才!!!!」
秋美「とーぜんっ!ホワイトデーだけに歯をホワイトにするプランだぁーーーっ!!」
桐乃「早く次!次!!」
秋美「あいあいー」
『…………いいよ』
『じゃあおまえの歯ブラシ貸してくれ』
『えっと……あたしのじゃなくて……京介の、使っていいから』
『俺の?』
『べ、別に間接キスしたいとかそんなんじゃなくて!磨いてもらうからにはちゃんとして欲しいからさ、
いつも使い慣れてる歯ブラシで磨いた方が磨きやすいかなってゆーか…………』
『わかった。そういう事なら俺のを使わせてもらうぜ。でも本当に俺のでいいのか?』
『し、しかたないっしょ!今日は特別だかんね!』
京介「オタクってすげえな。俺には元ネタがサッパリわからねえが、『歯磨きプレイ』……超してえええぇぇぇえええーーーーーー!!!!」
秋美「ついに堕ちたな高坂ぁ!!さっそくあたしん家で『お姫様デート』しようよ!」
京介「しない」
秋美「なんでだよー!!超したいって言ったじゃんか!!」
桐乃「あ、櫻井さん!ちょっと待ってて!」
桐乃は櫻井の言葉をさえぎり、急いで階段を上がっていく。部屋に戻ったようだったがすぐに下りてきた。
桐乃「櫻井さん、これっ!」
きれいにラッピングされた小さな箱を櫻井に渡す桐乃。
櫻井「これは……?」
桐乃「バレンタインのチョコ作り手伝ってもらったお礼。ちゃんとおいしく出来たやつ食べてもらってないからさ」
櫻井「今日呼ばれたのって……これのため?」
桐乃「そ。……櫻井さん、チョコ作り手伝ってくれてありがとね」
櫻井「きりりん氏……」
桐乃「とゆーわけで、櫻井さん今日はおつかれさま。帰っていいよ」
京介「おう。櫻井またな」
櫻井「ちょ!ちょっと待ったぁ!!まさか君たち、あたしを追い返して『お姫様デート』するつもりじゃ……」
桐乃「しないよ?」
京介「しないぞ?」
秋美「う……う……うそだあああぁぁぁあああ!!!!高坂のばかーーーー!!!!こんちくしょおおおぉぉぉおおおーーーー!!!!」
ダダダダダダダダダダダダダダダダ
バタン!!
断末魔の叫びと共に家を飛び出していく櫻井。
あんな格好の女の子が家から叫びながら出てったらまたご近所さんの噂になっちまうだろうが!
そんな心配をしていた俺をよそに桐乃が、
桐乃「あんたさ、さっき歯磨きプレイの元ネタわかんないとか言ってたじゃん?」
京介「ん?ああ」
桐乃「しかたない。今からその元ネタのブルーレイ見せてあげるから、あたしの部屋いくよ」
京介「お、おう」
歯磨きプレイ……か。さっき櫻井の妄想は途中で中断されたから続きが気になるところではあるな。
そう思い、桐乃の部屋へ向かおうとリビングから出ようとしたが、言いだしっぺの桐乃がなぜか動こうとしない。
すると―――
桐乃「ん」
京介「ん?」
桐乃「だから!ん!」
京介「……どうした?」
桐乃「もう!なんでわっかんないかなぁ!」
京介「…………あっ」
俺は桐乃のそばまで戻り、ひょいと『お姫様だっこ』をしてやった。
桐乃「絶対離さないでよね」
京介「ああ。絶対離さない」
それから桐乃の部屋で、阿良々木くんと火憐ちゃんの歯磨きプレイを視聴した後、
俺と桐乃は少しだけ仲良くなったのであった。
ちなみに今日俺が桐乃のために用意したホワイトデーのお返しは、風呂上りの桐乃に開けてもらおうと風呂場の前で待っていたのだが、
予定より少し早く帰ってきた親父とお袋に先に開けられてしまい、その後すぐに家族会議が開かれた。
~終~
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最終更新:2014年10月03日 18:40