20 名前:【SS】:2014/07/09(水) 13:20:30.72 ID:A0rlO4V9I

SS『初夏のねがいごと~妹編~』



日増しに強くなっていく日差しに、真夏の到来を感じるような、そんな初夏のある日の午後。

さっきまで一緒だったあやせと別れたあたしは、ひとり商店街を通り抜けて帰宅していた。

その出口付近で目に入ってきたのは、色とりどりの短冊がついた笹かざり。

「へぇ、七夕かぁ。懐かしいなぁ~。」

そんなことを呟きながら、眺めていると、とあるひとつの短冊が目にとまった。



『妹がいつまでも幸せでありますように。』



「か、かわえぇぇっ!」

思わず頬が緩みまくる。

へへへ、どんなお兄ちゃんが書いたんだろ?

この妹ちゃん、幸せ者だなぁ。

そんなことを考えながら、横を見ると、短冊とペンがテーブルに置いてあった。どうやら誰でも書いていいらしい。

「、、、。せ、せっかくだからあたしも書いてみよっかな。」

短冊とペンを手にとったあたしは、昔、子供のころにずっと書き続けていたねがいごとを書いていく。

『お兄ちゃんとずっと一緒にいれますように』

そして。

「、、、。あ、あしたには片づけられちゃうんだから、これくらい、いいよね、、、。」

ちょっとだけ付け足す。

『-きりの』

「へへ、、、へへへ、、、。」

なんとなく、懐かしさと気恥ずかしさで笑みがこぼれる。

「そーだ!せっかくだから、さっきの短冊の近くにつけよっと。」

そう言って、その短冊の近くに手を伸ばしたとき。

不意にその短冊が風でめくれる。



「!!!」



そこに書かれていた名前を見て、あたしは思わず息をのむ。

「なっ、、、なっ、、、なっ!」

い、い、い、今のって!

ばっ、と、その短冊を手に取って確かめる---間違いない。

こ、これって。

これって、ぜったい、、、ぜったいあいつだよね。

この商店街で、この名前で、こんなねがいごとを書くような兄貴なんて、あいつ以外にいるわけがない。

なに書いてくれちゃってんの!あいつ!

驚きで一杯だった心の中を、恥ずかしさと照れくささと嬉しさと感動と感謝と幸せがごっちゃになった想いが一気に駆け巡る。

そしてそれを頭が理解した途端、ボッと顔が赤くなるのと同時に頬が緩んで目頭が熱くなるのを感じたあたしは、慌てて顔を隠すようにして両手で頬を押さえつける。

ヤバい。ヤバいヤバいヤバい。

堪えろ。堪えろ、あたし。

~~~~~~~~~~っ!



---ひとりのときで、ホント良かった。

今のあたし、どんな顔してるか、わかんないし。

そんな顔、ほかの誰にも見せたくないし。

ったく、あいつめ。

あいつめ!

なにしれっと、こんなことしてんのよ!

あたしを殺す気!?

帰ったら絶対!ぜ~ったい、からかってやるんだから!

覚悟しとけっての!



しばらくして。

ようやく少しだけ心の凪ぎを取り戻したあたしは、改めてもう一度その短冊を見つめなおす。

そして。

あたしは自分の短冊の裏にそっと小さく、小さく言葉を書き足した。

とめどなくあふれてくるこの想いを、ひとつ残らず、その言葉に込めるように。

いつかきっとまた届くと信じて。

織姫と、彦星と、そして、、、あいつに。



その想いを込めた短冊を、あいつの短冊に添えるようにして、あたしはそれを、そっと結んだのだった。

しっかりと、力強く、二度と離れないように---。



Fin



でもね、、、。

なにもその翌日に届けることないじゃん!

神様のいじわる!




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最終更新:2014年10月04日 14:42