205 :【SS】:2014/11/06(木) 10:27:02.22 ID:bQ+Xavn/0

SS『賑やかな朝の勉強会(ガールズトーク)』



ぴろろろろん。ぴろろろろん。

「ん?電話?誰だろ?」

向かいに座ってノートで問題を解いていた桐乃が、シャーペンを止めて携帯をバッグから取り出す。

ぴっ。

「やっほー、ランちーん。」

どうやら電話の相手は蘭のようだ。

宮本蘭。わたしと桐乃の中学からの友人で、モデル仲間の一人だ。

「えー?いまー?あやせんちで一緒に勉強してるとこだよー。」

そう。今日はわたしの部屋で、桐乃と一緒に試験勉強をしているところなのだった。

とは言っても、桐乃はいつもちゃんと勉強してるから、試験で慌てることなんてないんだけど、、、。

「なー、あやせー。そろそろ休憩しよーぜー?」

そう言ってくるこの子は、来栖加奈子。

蘭と同じく、中学からの友人で、モデル仲間。

まあ、最近は専らそれ以外の仕事が多くて、どっちかって言うと、ちょっとしたアイドル、って感じ?になっている。

「まだ始めたばかりじゃない、加奈子。」

「加奈子ってー、短期集中型なんだよねー。」

まったく、、、すぐ、へ理屈ばっかり言うんだから。

「加奈子?今、何時?」

「んー?10時、、、5分。」

「で、勉強を始めたのは?」

「、、、10時。」

「加奈子の言う短期って、5分間のこと?」

「う~~~。ちぇっ、やりゃーいーんだろ、やりゃーよー。」

「そうそう、その調子、その調子。あとでお茶するときに、朝、焼いておいたクッキーを持ってきてあげるから。」

「ったく、食い物なんかで釣られるかってーの。んで?それってチョコが入ったやつ?」

「うん。そう。」

「へへー、加奈子、あのクッキー、好きなんだよね~。よっしゃ、いっちょやるか。」

、、、しっかり釣られてるじゃない。



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「うん、、、うん、、、わかった。じゃあ、ランちんも今から来るー?」

電話口でそう言いながら、桐乃が目配せで聞いてくる。

わたしはこくんと頷く。

「あやせもそう言ってるしさー。うん、うん。りょーかい。じゃあまたあとでねー、ランちん。」

ぴっ。

「ごめん、ごめん、さ、続きやろっか。」

「その前にね、、、桐乃?」

「ん?なに?あやせ?」

「その、、、それ。」

「ん?」

わたしは桐乃が電話してる最中に何気なくシャーペンを走らせていたノートを指差す。

そこに書かれていた文字を見たとたん、ぼっ!、と桐乃が真っ赤になる。

「あ、、、や、、、や、、、こ、これは違うんだってば!」

慌てて、ばっ、とノートを隠す桐乃。

「ん?なになにー?加奈子にも見せろよー?」

「だ、だから何でもないんだってばっ!」

「へへへー、どれどぐぇ。」

「はいはい、加奈子は勉強勉強。」

「いきなり襟、引っ張んじゃねーよ、あやせ!ってゆーか、加奈子にも見せろよー!」

「加奈子は見なくてもいいの。」

「なんでだよ!?」

「どうせ加奈子が見ても、『うへぇ』とか言うだけなんだから。」

「、、、、、うへぇ。」

どうやら何となく察したらしい。

そしてその横で、桐乃が必死になって消しゴムで書いた文字を消していた。



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それからしばらくして。

ぴんぽーん。

「あ、ランちん、来たのかな?」

「そうかも。じゃあ、ちょっと下に降りてくるから、加奈子を見張っててね、桐乃。」

「うん。」

「おい。ふつーに納得して返事してんじゃねーよ、桐乃。」

「へへ、ごめんごめん。」



「やっほー。ちゃんと勉強してるー?加奈子ー?」

「だからなーんで加奈子だけに聞くんだよ?」

「だって加奈子のための勉強会なんでしょー?これって?」

「ちっげーよ!」

「またまた~、って!?!ああーーーーっ!き、きりのんが指輪してるぅーーーーーっ!!!」

「あー、うっせーっての。耳元で叫ぶんじゃねーよ。」

加奈子が片耳を塞いだまま、そう口にする。

「蘭、大声出しすぎ。お母さんに怒られちゃうじゃない。」

わたしはそう言いながら、入ってきた扉をぱたんと閉じる。

「え、、、え、、、?な、なに?その反応?二人とも、軽くない?」

「そんなことないよ?」

「んなんことねーって。」

加奈子と同時にそう答える。

「だ、だって、だって!ほら!左手の薬指だよ!?」

そう言って蘭が桐乃の手をぶんぶんと指差す。

「ああこれ?」

桐乃が左手の指輪を見ながら答える。

「や、特に意味はないんだってば。単なるナンパ除け?ってやつだから。」

「え、、、?あ、そーゆーこと?な、なーんだ、びっくりした。てっきり婚約指輪かと思っちゃったよ。」

「あ、あはは、そんなわけないじゃん?」

「そうそう、婚約指輪じゃなくてぇー、けっ、、、むぐぐ。」

「え?なに?なに?」

「、、、けっ、、、こうオシャレなファッションリングだよね?でしょ?かなこ?」

こくこくこくこく。

涙目で頷く加奈子だった。



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「ねーねー、きりのん?それって自分で買ったのー?」

桐乃の隣に座った蘭が、バッグを横に置きながら桐乃に話しかける。

「これ?あー、、、えっと、、、た、誕生日プレゼントでもらったんだ、、、家族から。」

「それって、もしかしてー、この前迎えに来た、きりのんのお兄さん?」

「え?あ、うん、まあ、一応、そうなんだけど、、、。」

「へえ~。やさしーお兄さんでうらやまし~な~。」

「そ、そんなことないって~。」

「でも妹に指輪をプレゼントするって、めずらしいよね?」

「え?、、、えっと。」

「あいつ、すっげーシスコンだもんな~。」

「あはは、確かに。」

「そうなの?」

「う、うん。あ、あいつってば、超シスコンで、おまけに超心配性だからさ~。ナンパとかで変なのに声かけられないように付けとけってうるさくって。そんで仕方なく付けてあげてるんだよ、仕方なく、ね。」

「とか言ってー、ホントは嬉しいんじゃないの~w?」

それを聞いた加奈子とわたしは二人でうんうんと頷く。

「や、そ、そんなことないってば~。」

桐乃?そんな顔で言っても、ぜんぜん説得力ないよ?



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「まー、でも、あの痛チャリはさすがにちょっとキモかったけどね~w」

腕を組んで考え込むようなしぐさで、ため息をつくようにしみじみと蘭がつぶやく。

「、、、ああ、あれ?てか、それ、忘れてって言ったじゃん。」

「あに?それ?」

「やー、前にきりのんのお兄さんが、すっごい痛チャリできりのんを迎えに来たんだよー。」

あ、それって、お兄さんが御鏡さんに借りたって言ってた自転車のこと、かな?

「ふーん、それってどんなやつ?」

「えっとねぇ、、、なんか小っちゃい女の子向けの自転車をそのままおっきくして、それをすっごくエロくしたやつ。」

どんだけ変態なんですか、あの人。

「マジ?すっげーな、京介。」

「あ、でもそれ、お兄さんのじゃなかったんだって。」

このままだとお兄さんがあまりにも可哀想なので、わたしはちょっとだけフォローを入れる。

「え?そーなの?」

「うん。なんかね、知り合いに借りたんだって。桐乃をイベントに間に合わせるためにどうしても必要だったから、仕方なく、って言ってたよ?」

「そのイベントってもしかしてー、桐乃と京介が一緒に来てた、加奈子のライブイベント?」

『加奈子の』じゃないでしょ。まぁ別にいいけど。

「そーそー、あんときのライブ。」

と、桐乃。

「ってことはー、加奈子のライブに桐乃を間に合わせるためにー、痛チャリ借りてカっ飛ばして撮影現場まで桐乃を迎えに行ってー、んでまた会場まで戻ってきたってワケ?」

「うん。そんときの撮影が結構おしちゃってさ。そんであいつに、ライブに行けそうにない、ってメールで送ったら、なんか速攻で来た。」

「京介、ぱねぇー。」

「やっぱりあの時のメール、桐乃だったんだ。」

わたしは思わずつぶやく。

「え?どゆこと?」

「お兄さんがね、それまでソファーでぐったりしてたのに、メールを見たとたん、いきなり起き上がって、飛び出して行っちゃったんだもん。それでびっくりしちゃって。」

「ぐったり?」

「あ。」

「ひひひ、桐乃ー、実はよー。」

「か・な・こ?」

「」

「え?なになに?」

「えっとね、お兄さん、マネージャーの仕事でちょっと疲れてたみたい。ねぇ、加奈子?」

「、、、ぉぅ、、、。」

素直で大変よろしい。

「へぇ、あいつ、ちゃんと仕事してたんだ。」

「うん。結構サマになってたよ。」

これは間違いない。初めてマネージャーのフリをしたときからずっと、何故だか分からないけど、妙に板に付いた様子だったし。やっぱり奴隷の才能があるのかも、お兄さん。

「加奈子ー、けっこー気に入ってたんだよねー。またマネージャーやってくんねーかなー。」

「え!?」

「ひひひー、冗談だって、桐乃。そんなに焦んなヨ。」

「あ、焦ってなんかないってば!」

「へぇ~、きりのんのお兄さん、結構人気あるんだ。ただの変態さんじゃなかったのか、、、。」

「蘭、それ、言い過ぎ。」

と、蘭を注意するわたし。ま、まぁ?お兄さんがもしここに居たら、速攻で『お前が言うな』って、言われちゃいそうだけど。

「や、だってさ。あの痛チャリでの登場シーンはマジでシャレになんなかったんだってば。あんとき一緒に仕事してたみんなも唖然としてたし、きりのんも汗だくだくだったし。ねぇ、きりのん?」

「ま、まーね、、、。確かにあんときは、すっごい焦りまくったし、ちょう恥ずかしかった。」

「でも、、、ちょっとカッコいいね。」

「え?」

蘭からの思いがけない一言に、桐乃が大きく目を見開く。

「いやー、最初の印象はアレだったんだけどさー。でも今の話聞いてたら、なんかさ、、、。妹のためにそこまでできちゃうお兄さんって、ちょっとカッコいいな、って思う。」

そっか、、、。その気持ち、すっごくよく分かるよ、蘭。

「そ、そうかな?」

「うん、スゴく羨ましい。」

「へへ、そっか、、、。へへへへへ、、、。」

「、、、ホントに好きなんだねぇ、、、。」

「うん、、、?!じゃ、じゃ、じゃ、じゃなくてっ!んなワケないじゃん!」

「そーなの?」

「あ、あったりまえじゃん!なに言っちゃってんの!ランちん!」

「だって、きりのんのこと大好きだから、そんだけ妹のために頑張れるんだろうな、って思うんだけど、、、?違うの?」

「え?あ、そっち?」

「?そっちって、どっち?」

「あ!いや、な、何でもないよ?」

「?」

「ぷっ。」

「ぷひゃはははははっ!」

「?????」

「~~~~~~っ!か、加奈子!笑いすぎ!」

「うひひ~~~wだ、だってよ~~~w」

「え?え?なに?なんなの?」

「な、なんでもないんだってば!そ、それより!ほら、勉強、勉強!試験まで時間ないんだから!」

「そ、そうだね。」

「ちぇっ、しゃーねーなー。」

「ちょ!ちょ!ちょ!!!なに?みんなして!?なんか、あからさまに話を変えようとしてない!?」

ふふっ。

「まぁ、蘭も、いつか、お兄さんと会って話してみたら分かると思うよ?きっと。」

「へ?な、なにそれ?どーゆーコト?」

「ひひひ、そーゆーコト。」

「答えになってなぁーーーいっ!なんなのさっ!?いったい!?」

「だ、だ、だ、だーかーらーっ!ホントになんでもないんだってばーーーーーっ!!!」



そしてこのあと---部屋にやってきたお母さんに、みんなで仲良く怒られたのだった。



Fin



あ、そうそう。試験のほうは、なんとか無事に終わりましたよ。まぁ、加奈子はギリギリでしたけど。



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最終更新:2014年12月29日 21:24