ごぉぉぉぉ………………
ん…………
暗闇の中で目覚めたあたしは、着けていたアイマスクをゆっくりと外してみる。
あ……そか。
まわりを見回しながら、改めて今いる場所を認識する。
あたし、日本に帰ってんだ……
ぼんやりとしたまどろみの中で、昨日までの記憶を思い起こしてみる。
……いろいろあったなぁ……
短かったけど……充実していたけど……何かが足りない……そんな日々。
ぜんぜん勝てなくて、悔しい思いしてばっかりだったけど……最後に一度だけ……勝つことができた。
でもきっと……ひとりじゃ勝てなかった……だろうな……
……このアメリカでの留学は、あたしにとって良い経験になったんだろうか。
そんなことを考えながら、あたしは窓のほうに目を向ける。
窓の向こうから降り注ぐ、柔らかな月明かり。
そして。
その月明かりの中、となりでアイマスクを着けて眠っている、その横顔を見つめる。
『おまえがいないと寂しいんだよ!』
その言葉が、あたしの頭の中でリフレインする。
……こいつも……あたしとおんなじ……気持ちだったんだ……
段々と熱くなってくる目頭。それを堪えるようにあたしはゆっくりと上を向き、そっとまぶたを閉じる。
どれくらいそうしていただろうか。
ようやく心が落ち着いてきたあたしは、さっきと同じように窓のほうに目を向ける。
あ…………ったくもう……世話がやけるんだから……
そんなふうに心の中で言いながら、下がっていた毛布をその肩にかけ直す。
……結構、肩幅、広いんだ……。知らなかった。
そしてあたしも、自分の毛布をかけ直す。
ん~…………
それと同時に、ちょっとだけ寝返りを打ったそいつが、その寝顔をこっちに向ける。
どきん。
………………急にコッチ向くなっての……びっくりするじゃん……
……そう……今のは……驚いたから……なんだからね?
そんなあたしの気持ちに気づくこともなく、すやすやと眠っているそいつ。
むー・・・
そんな寝顔をじっと見ていたあたしの脳裏に、ふと、こんな言葉が浮かんでくる。
1.むにっと頬をつねって起こしてみる。
2.頬をつんつん突いてみる。
3.そっと優しくキ---
ぼっ!!!
いや!ち、違うんだって!い、いつものエロゲみたいな感じだなって思ったら、つい思い浮かんだだけなんだってば!!!
そりゃ海外とかだったら、ほっぺにお礼のちゅーとかするかもしんないけどっ!
一人で真っ赤になりながら、その考えを振り払うように、あたしはぶんぶんと首を振る。
……でも………………
赤くなった顔を毛布で隠すようにしながら、あたしはまた、そいつの寝顔をじっと見つめる。
……あたしのために……来てくれたんだよね……こいつ……
………………………………。
ごそごそ……
あたしは毛布から手を出して、その自分の指先をじっと見つめる。
…………………………このくらいだったら……別にいーよね……うん……よし……
………………ちゅっ………………ぴとっ。
んん?
!!!!!
…………すー……すー……
……はぁ~……びっくりさせんなっての。またどきどきしちゃったじゃん……
……………………。
ばふっ!
……おやすみ……………………………………………………ありがとね、兄貴。
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最終更新:2015年11月29日 01:02