84 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/10/19(月) 21:59:51.80 ID:741pE8Y00
SS『だいたい全部妖怪のせい』桐,あ,麻
あまり人には自慢できないのですけれども、わたしはスナイパーとして働いています。
元々、人の死に興味があったわけではなく、ただ親友の貞操と世間体を守るために働いていたら、この職業に就いていました。
桐乃スレに出没する変態を狙撃したり、愛用の包丁でつんつんしてみたりすることも、
慣れれば単調な日々の仕事になりますし、特に何か嫌なことがあるわけでもありません。
雨の日も風の日も、早朝でも深夜でも、千葉でも秋葉原でも、あらゆる状況下で仕事をしなければいけない分大変な事もありますけど、
わたし自身はとても充実しているのです。
ただ、この仕事をしていると、ときおり信じられないものを目にすることもあるのです。
わたしがこの仕事をしていて一番衝撃だったこと。それが、妖怪「くんかたん」です。
くんかたんは、桐乃スレの変態達の間ではかなり有名な妖怪らしく、公にはされないものの、必ずどの変態もくんかたんをひと目見ようとしています。
妖怪「くんかたん」がどのような悪さを働くかというと、非常にシンプルで、「パンツを盗む」のです。
わたしの仕事は、桐乃の貞操と世間体を守る事で成り立っているわけですから、このような妖怪を理由に桐乃スレ住人を近づけるわけには絶対にいかないのです。
―――さて。このような話を聞かされたとして、あなたは信じることが出来るでしょうか?
わたしが新人の頃、ベテランの(おばあちゃんみたいな人ですが)方からこの話を教えられたのですが、当然信じることはできませんでした。
それこそ業界ならではの「都市伝説」的な何かだとばかり思っていたのです。
でも、わたしはすぐに「くんかたん」に遭うことになります。
それは、わたしがようやく桐乃スレの変態を「つんつん」する作業に慣れてきた頃。
その日のお仕事は、深夜0時を既に大きくまわっており、部屋の明かりも全て消え、住宅街は静寂に包まれていました。
わたしはいつも通り、千葉のお山に埋めるため、動きの止まった変態を袋に詰め、
運搬用のハイエース(父の名前が車の上の板に書かれてますけど、気にしないことにしています。)に運び込みました。
今でこそ普通にこなす作業ではありますけど、気持ち悪いオタクを運ぶ、という行為に、なんとも言えないやりきれない気持ちを感じていました。
その時にふと、ベテランおばあちゃんの話を思い出していたのです。
「あやせちゃん。『くんかたん』には気をつけてね。」
・・・くんかたん。そんなもの居るわけないじゃない。と、わたしは訝しみました。
妖怪がぱんつを盗むだなんて、そんなわけのわからない事。
―――そう思いながら、ふとお兄さんの部屋の窓に目を向けたわたしは、思わず大声をあげそうになりました。
部屋の中を、裸の女子中学生のような、なんとも言い表しにくい人物が駆け回っていたのです。
よく見ると、その人物は男ものの下着を嗅いでいるのも見えました。
わたしは大混乱に陥りました。
絶対に不審人物の入る余地の無い桐乃の家の中に、不気味な人物がぱんつを嗅ぎながら走り回っている・・・。
わたしは桐乃の事が心配でたまらず、つい叫んでしまっていたのです。
「桐乃!逃げて!!!」
すると突然、くんかたんはピタッと走り回るのを止め、慌てたような仕草を見せました。
そしてすぐに、隣の部屋に吸い込まれるように走り去って行ったのです。
「桐乃、昨日は大丈夫だった!?」
翌日、わたしは学校に着くなり、すぐに桐乃の様子を確認しました。
ですが、わたしの心配をよそに、桐乃はむしろいつもより元気そうで、お肌のツヤがいつも以上に輝いているのでした。
昨日の事を質問しても、
「あ、あたし、ぱんつなんて絶対に盗んでなんかいないんだからねっ!」
などと、妖怪「くんかたん」については何も気がついていないようで、桐乃には何も危害は加えられていませんでした。
そもそも、妖怪「くんかたん」の現れたのは、よくよく考えて見れば、あの変態お兄さんの部屋なわけで、桐乃に何かあったわけがないのです。
その後もわたしは100回以上「くんかたん」に遭遇しましたが、出現するのはいつも変態お兄さんの部屋でしたので、
あまり気にせずに放っておく事が多くなりました。
むしろ、どこかでこの話を嗅ぎつけた桐乃スレ住人の退治の方が面倒だったくらいです。
もし、あなたが桐乃スレ住人で、「くんかたん」に出会いたいと思ったとしても・・・
わたしが公にしたこの話で満足して、決して桐乃には近づかないでください。
あなたたちは、わたしの最大の敵なのですから・・・
end.
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最終更新:2017年08月26日 10:18