329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2015/12/26(土) 18:14:47.40 ID:99VWpBWL0

SS『未来のあたしへ』



、、、こほん。

えっと、、、ひさしぶりだよね、こうして未来の『あたし』に向かってメッセージを吹き込むのも。

それと、、、こうして昔の『あたし』のメッセージを聴くのも。

やっぱり恥ずかしいよね、あらためて聴いちゃうと。でも、、、ちゃんと忘れてないから、安心してよね。

それと、、、未来の『あたし』へ。

、、、こうしてメッセージを吹き込むのは今でもやっぱり恥ずかしいんだケド、、、それでも大切で大事なことだから。

ちゃんと残したいって思ったんだ、、、あんたのために。

あんたがどんな気持ちでこれを聴いてるのか、、、聴くことになるのかは、、、まだ分かんない。でも、、、これが今の『あたし』の正直な気持ち、、、だから。

たとえあんたがどんな『あたし』になっていたとしても、、、今のこの気持ちだけは、ぜったいに、、、ぜったいに忘れないでいて下さい。

じゃあ、、、そろそろ始めるね。



えと、、、ね。

、、、少し前のことなんだけど、、、やっと分かったんだ。

、、、兄貴が、、、京介が変わっちゃった、ホントの理由ってやつが。

それはあたしが思いもしなかった理由でさ、、、。

兄貴にとって、、、京介にとって、それはすごくすごく辛くて、、、きついことだったんだ、、、。

ただ伝え聞いただけのあたしでさえ、、、その辛さを感じられるほどに。

でもあたしは、、、あたしはそんなことも知らずに、、、自分勝手な思い込みで全部決めつけちゃって、、、。

自分勝手な勘違いで、兄貴を、、、京介を、、、ずっと無視し続けて、、、嫌い続けてたんだ、、、。

、、、どうして、、、どうしてもっと早く気付いて、、、分かってあげられなかったんだろ、、、。

、、、どれだけ遠回りして、、、どれだけ多くの時間を無駄にしちゃったんだろう、、、。

、、、兄貴はいつだって、、、いつだってずっと、、、ずっとずっとあたしのそばにいてくれてたのに、、、。

ホント、ばかだよね、、、あたし、、、。

、、、、、、ッ、、、ッッ、、、、、、



、、、、、、、、、。ごめん、続けるね。

初めて人生相談した、あの日から、、、失くしたものを見つけたって思った、あの日から。

ちょっとずつ、また兄貴と話をするようになって、、、さ。

だんだんと分かってきたんだ、、、。それは失くしたんじゃなくて、、、見失っていただけだったんだ、、、ってことが。

あたしが憧れてた人は、最初からどこにもいなかった。

勝手な理想を膨らませて、、、その影だけを追いかけ続けて、、、あたしは本当の兄貴を見失ってしまっていた。

無茶しなくなった兄貴を、、、本当の兄貴じゃないと決めつけてしまって。



でも、あの日から。

兄貴は、、、京介は、、、平凡な兄貴のままで、、、何度もあたしの人生相談を聞いてくれた。

そしていつだって必死になって、、、妹を、、、あたしを護り続けてくれた。

今の兄貴は、昔みたいに自信満々、、、そんな風には言ってくれない。でも。

自分が平凡な奴だって分かってて、、、凄いヤツじゃないって思い知ってて、、、それでもなお、全力で妹のことを護り続けてくれる、、、昔とおんなじ兄貴だったんだ、、、。



そしてそれは、、、あたしも、、、あたし自身もおんなじで。

昔の『あたし』が伝えてくれた想いも。

今の『あたし』の中にある想いも。

どっちも大切で、ずっとずっと変わらなかった、、、おんなじ想いだったんだよね。



、、、でもそれは、、、やっぱりどうしようもないことで。

、、、探し続けても探し続けても、、、答えはずっと見つからないままで。

あたしはその辛さを、、、自分の辛さをぶつけて、、、ずっとずっと大切な人を傷つけてしまっていた。

、、、ゴメンね、兄貴。、、、ゴメンね、京介。



そして、、、ゴメンね、『あたし』。

これがあんたたちが望んだ答えじゃないってことは、あたし自身がいちばんよく分かってる、、、。

でも、、、それでも、、、、あたしは自分で答えを出さなくちゃいけない。

これはあたし自身の、、、あたし自身にしか出せない答えなんだから。

自分自身のために。

そして、、、、誰よりも大切な人のために。



あたしは、、、あたしは、好きでいることを、絶対にやめない。

この想いを捨てちゃったら、あたしがあたしでなくなっちゃうから。

でも、、、今のままでずっと近くにいたら、、、あたしはきっとまた京介を傷つけてしまう。

自分の辛さをぶつけて。

あいつの幸せを奪って。

だから、、、決めたんだ。



あいつを困らせるだけかもしれない、、、。

またキモがられるだけかもしれない、、、。

全部、、、全部なくしちゃうことになるかもしれない、、、。

怖くて怖くてたまんない、、、、、、でも!



昔の『あたし』に、ちゃんと胸を張れるように。

今の『あたし』が、ぜったい後悔しないように。

これからの『あたし』が、笑って旅立てるように。

未来の『あたし』が、ずっと前を向いていけるように。



あたしは明日、あいつに想いを伝える---そう決めたんだ。



未来の『あたし』へ。

これが今の『あたし』のホントの気持ち。

たとえどんな結末になるとしても、、、叶わなくても、、、届かなくても、、、想いってのは伝えなくっちゃダメなんだよ、きっと。

今のこの想いを伝えずにため込んだまま前に進んでも、、、それはきっと、ホントのあたしでなくなっちゃう、、、そう思うから。

だから、、、そう、決めたんだ。



だからさ。



あんたはちゃんと、前を向いて進んでいってよね。



それと、、、あと一つだけ。



、、、もし、、、もしもだけど。ぜったいぜったいあり得ないことだと思うけど、、、。



もし願いが叶ったとしても。

もし想いが届いたとしても。



何よりもいちばんに考えてあげて下さい。

誰よりもいちばんに考えてあげて下さい。

世界中で誰よりもいちばん大切な人の幸せを。

世界中で誰よりもいちばん大好き人の幸せを。



これは、今の『あたし』との約束だからね。



じゃあ、明日。行ってくるね、『みんな』。

それと、、、勇気をくれてありがとう。



Fin



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最終更新:2017年08月26日 10:43