372 名前:桃の節句【SS】[sage] 投稿日:2011/03/02(水) 22:50:39.46 ID:F2G5+6E0O [4/4]
「……熱は下がったみたいね。咳もあまり出なくなったみたいだし。頭は痛くない?」
「うん、ママ。いたくないよ」
「それはよかったわ。もうちょっとしたら、みんなと遊べるわね」
「…きりの、みんなとひなまつりをしたかったな…」

ひな祭りの直前に、桐乃は風邪を引いてしまった。幸いにも悪化することはなかったが
楽しみにしてたひな祭りをお友達と祝うことができなくなったのは、残念なことだった。
「ねえ桐乃、もう起きても大丈夫?」
「うん」
「それじゃあ、お兄ちゃんが帰ってきたら、3人でひな祭りをしましょうか」
「うん。やったあ」顔をほころばせる桐乃。
京介が帰ってくるまでの間に、急いで準備をすることにした。

「京介、桐乃の体の調子が大分良くなったから、
ひな祭りをやりたいんだけど、いいかしら」
「いいよ。桐乃の熱、下がったの?」
「ええ、もう少しで完全によくなりそうよ」
「よかったー。早くきりのの風邪が治るといいなって思ってたんだ」

※※※
お菓子や飲み物の準備も終わって、桐乃を布団から起こそうとした時、
京介のお友達がやってきた。サッカーの誘いだという。
京介は一度はひな祭りの約束の話をしたが、友達の中には
「女の子の祭なんだからパスでいいじゃん」
みたいなことを言ってくる子もいる。
「ひな祭りは京介が帰ってきてからにしましょう。桐乃にはママから言っておくから」
「わかった。じゃあ、行ってきます」
何となく心残りのある様子で、京介は出かける。
桐乃には、ひな祭りの時間を遅らせることを話したが、
もうひな祭りをやる気まんまんだった桐乃は、やや気落ちしたような顔でまた布団に入った。

※※※
それからしばらくして、ドアチャイムが鳴る。
玄関に向かうと、そこには京介がいた。
「もう帰ってきたの?」
「急にものすごくお腹が痛くなったから、帰ってきたんだ」
「大丈夫なの?」
「家の前まできたら、急に治った」
「ふうん。遊びにもどんなくていいのかしら」
「だって、みんなの前で『うわあ、お腹痛い』ってふり、じゃなくて
お腹痛いって転げ回ったのに、すぐに戻ったらおかしいし」

やるじゃないの、わが息子は♪

「そうね、じゃあ手洗いとうがいを済ませたら、ひな祭りを始めましょう。
ママは桐乃を起こしてくるわ」
「すぐやってくるよ」

※※※
再び満面の笑みを見せる桐乃を連れて、私はリビングへ向かう。

「おにいちゃん、おかえりなさい。きりの、おにいちゃんをまってたよ」
「きりの、熱が下がってよかったな。これからみんなでひな祭りをやろうな」
「うん。おにいちゃんとママとのひなまつり!!」
そうか、ママよりお兄ちゃんのほうが先なのね、桐乃ったら♪

『春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひな祭り♪』



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最終更新:2011年03月06日 02:50