790 名前:妹の授業参観に兄が出るわけがない(とある初夏の金曜日)【全編】[sage] 投稿日:2011/03/05(土) 15:57:28.08 ID:hVI6kwFL0 [2/2]
妹の授業参観に兄が出るわけがない(とある初夏の金曜日)
※オリキャラ有り
――――前編――――
・・・パァーン!
とある初夏の金曜日、俺は微睡からビンタで覚醒させられた。これは間違いなく桐乃、あの野郎…、今回はガツンといてやる!!
「おい、桐乃。何度寝ている兄を深夜に叩き起こせば気が…、え、お…や…じ?」
「桐乃?深夜に?何度も?一体、何の事だ京介」
えっと、何で親父と…、お袋もいるし。どうして両親が俺の部屋に居んの?
「えーと、何度も夢の中で桐乃に起こされる夢をみて…さ、その」
「ふん、まあいい。今回はそういう事にしておいてやる」
あれ、何でこんなにあっさり引いてくれるの、実はまだ夢の中なのか?
「それよりだ、京介、頼みがある。今日はお前も知ってのとおり、桐乃の授業参観だ。だが、俺は出れん…!牡蠣に当たったようで家から出れそうにない」
どうやら、親父は不運にも昨日、家に届いた頂きものの牡蠣を生で食べて食中毒になってしまったようだ。
桐乃とお袋は当たると怖いからという理由で、かくいう俺も明日は学校の創立記念日で休みだから真奈美と1日みっちり勉強する予定があるわけで、金曜の夜にでも食べようという話になり無事だった。
「母さんに代わって出てほしいところだが、俺がこの様だ」
全身に悪寒が走る、この流れはヤバい、絶対にまずい!!
でも、常識的に考えてありえないだろうと思って親父に聞いてみた。
「親父、まさか、俺に出ろと…?」
「無論だ、お前に拒否権はない」
マジかよ、ありえねー、俺が桐乃に超嫌われてるの知ってるだろーが!
「えぇー、妹の授業参観に兄が出るなんで聞いたことねーよ!」
「馬鹿者め、何を言うか。桐乃が学業に勤しむ姿を見守れる残り少ない機会なんだぞ…!ぐっ、すまん、不浄へ行ってくる…!」
腹を押さえつつ、とても情けない恰好で親父が俺の部屋を飛び出しトイレに向かっていった。
「ねぇ、京介。お父さんの願いを聞いてあげてくれない?あの人、そうでないと這ってでも行くよ、学校に」
「だがな、お袋、いくら何でもさ…」
「へぇ、京介。そういう態度を取るのね。なら、さっきお父さんが聞けなかったことを代わりに尋問しましょうか?」
「へっ!?」
「桐乃?深夜に?何度も?このキーワードから推理すると、アンタたちは深夜にア・イ・ビ…」
「んがー!!わーったよ、俺が行く。っていうか桐乃の授業参観に行かせてください、お願いします!!」
「分ればよろしい、なら、このカメラを貸すわね。でも授業中に撮ったら締め出されるから、ちゃんと授業が終わって先生の許可をもらってからにしてね!」
「えーっ、写真も撮るのかよ」
まぁ、あの親馬鹿共(桐乃限定)なら仕方ない。それに、デュフフ、ラブリーマイエンジェルも盗撮、いやいや撮影出来るじゃないか!!
ほら、きっと俺が桐乃を撮影しようとしたら、あの豚を見るような目で『お兄さんのような変態に桐乃だけの写真は撮らせません』とか言って、フレーム内に割り込んでくるよね…。
なんだ、そうだよ俺、桐乃のクラスにはエンジェルがいるんだよ。
エンジェルのうなじを1時限中、見つめ続けても問題無いんだよ。グ、沈まれ、俺のリヴァイアサン!!
両親の仕掛けた超ブービートラップにより、麻奈美と朝から図書館で勉強と思っていたが予定を強制的に変更させられた。
とりあえず、牡蠣に当たって死にそうだから今日の予定はキャンセルさせてくれ、という感じのメールを送った。すぐ返事が来て、看病しようかといってくる幼馴染の優しさに罪悪感を覚えつつも、牡蠣の食中毒は感染しやすいノロウイルスの可能性があるから遠慮しておく、と返信しておいた。
本当にごめんな、麻奈美。ってか、これで桐乃の学校に行く前にあいつにばれたらどうしよう!?
ふふふ、嘘の皮が剥がされるのも時間の問題だな…。
現在、イチイチゼロゴー、こちら高坂京介、妹の学校に侵入した。現在、教員用男子トイレの鏡前で最終チェック中だ。
鏡に写る超イケメンに対して、これで俺を高坂京介だと直ぐに判る人間は余程俺を見ている奴だけだ、と自画自賛している。
フフフ、やはり俺はコスプレなどしなくてもイケメンではないか!
詳細は割愛するが、親父からヘソクリ10万円を頂戴して、某所で店員にすべてを任せつつスーツ他一式&伊達メガネを購入し、グーグル先生でも評価の高い人生初体験となる美容院(極力カットしない様お願いした)を経て今に至っている。
丁度、今は昼休みが終わる直前、生徒たちが急いで教室に向かっている廊下を急く音が聞こえる。
さて、俺もそろそろ行くか、わがエンジェルの待つ部屋へ!!
教室に入り桐乃と目が合うと、こちらに向かって地響きのする位の強い歩みで近づいてきた。
「よぉ、桐乃。親父とお袋がどうしても出れなくて仕方なく…」
「ねぇ、オニイチャン。ちょっと、廊下でお話ししようか?」
今、お兄ちゃんって言ったなこいつ、豪く棒読みだったおかげで死ななかったが。なるほど、あれですか、学校だと『品行方正』でも通っていらっしゃるわけですね?ふむ、兄に残存な対応はできないと。
「ねぇ、なんでここにいるワケ…!?それに、なにその恰好…ッ!!」
小声で威圧しつつ、顔を真っ赤にして怒る桐乃。
似合わないとでも言いたいようだな!!だがな、仕方がなかった、どうしようもなかった、俺にはどうすることもできなかった…、と必死に目で訴えるが、首まで真っ赤にして全身を震わせて視線を外されてしまった。
こりゃ、絶対、後で説教だな…。
「もういい、来ちゃったものは仕方ない。あんた、絶対にジッとしてて。そんで、授業が終わったら、さっさと帰って…!!」
「へいへい、言われんでもそうするつもりですよ」
「ふん、どうだか。言っとくけど、無防備だからって、あたしを後ろから視姦したら殺す」
「…ッ、気を付けます、桐乃さん」
言いたいことを言って満足したのか桐乃は教室へ戻っていった。
さっきは場所が場所だけに声に出して言えなかったが、心の中で叫ばせてもらおう。んなこと、しねーよ馬鹿!!!
第一、視姦するなら…。ゾク…、この全身を走る悪寒は、エンジェルアイ!!
何ですかその恰好は、まるで某掲示板のキジョのAAみたいじゃないですか!!
いいね、その目、グッドだよ。隠し持った彫刻刀で今にも切り刻みそうなその目…。
うん、わかるよ言いたいことは『お兄さん、とうとう桐乃の学校にまで来たんですね。そんなに学校でも桐乃といかがわしいことがしたんですか。そうですか、なら、少し頭冷やしましょうか?』だよね。
俺が本気で身構えていることを悟ったのか、あやせは恐ろしいまでの冷笑を見せつけつつ桐乃の元へ向かっていった。
―――中編―――
いきなり気の滅入る事が起きたせいで、すっかり高まっていたテンションが下がっちまったよ、クソが!
仕方ない、おとなしく見学して帰るか…。さて、教室の隅にでも居ますかね、目立たないように。
一応、桐乃の座席を確認するため、教室を見渡すと一瞬で発見した。
俺でなくてもライトブラウンの長髪だから直ぐわかるぜ。それにオーラが違うね、輝いている気がするしよ。
んっ、あいつ、何やってんだ?
桐乃は髪留めをカバンから出して手慣れた手つきでロングヘアをきれいに纏め始め、あっという間にロングヘアを束ねてアップにしやがった。
学校だと、そうしているってわけじゃなそうだ…。さっきまでは、いつもと同じく髪おろしていたし。
なるほど、あれですか、気合を入れているワケですか。
大嫌いな俺の前で無様な姿を見せないようにってか。
俺は得心し、教室の時計を確認すると、あと授業開始まで3分位だった。
…そうそう、実はさっきから気になって仕方がない事がある。言わなくても分るだろうが、桐乃の事ではない。
奥様旦那様からの視線を感じるのは仕方ないとして、どうも入室してからチラチラとこっちをのぞき見るような視線を前方から感じるわけで…。
―ねぇ、あの隅っこの、廊下側にいる人―
―だよね、私も―
―うそー、あっ、ホントだ。結構―
―あの人、お父さんじゃ―
―でも、兄はふつう授業参観にはで―
―だれのお兄さんだろ―
―もし、そうなら私、絶対に自―
うーん、何か囁いているのが聞こえる。違和感があるのは理解している。明らかに俺は浮いている。
でも、よってたかって酷いぜ、ミンナ。
両親に脅迫され、イケメン化して桐乃に見せつけてやろうと思ったら罵られ、妹の友人には殺意を向けられ、女子中学生の笑いのタネにされて…。いかん、すこし眩暈が…。あぶねぇ、後ろに壁がなかったら倒れてたぜ、マジで。
もう、良いよ。こういう目に遭っているのも、らしいことはするなっていう神からの啓示だったんだ。
俺らしく、イケメン高坂京介ではなくピエロ高坂京介として今日は立ち合おう。
心の中で葛藤していたらいつの間にか女教師@おばさまが入ってきて授業を始めていた。
授業内容は数学だった。桐乃の学校はすげぇな、これ高校一年でやる内容だぜ。あいつの学力は、日頃の授業によるところもあるんだな。俺、この学校でやっていける自信ないわ。
本当にすげぇな、あいつ。
…、と感心しきりの中、回答者に指名され、黒板にすらすらと算式記入。ふむふむ、なるほど、俺の中で出した答えと一緒だ。きっと、合っている。
「うん、正解だ、高坂。途中経過も完璧。それでは席に戻ってください」
「ありがとうございます」
沸き起こる拍手。当然、俺も拍手をした。そういえば、桐乃に向かって拍手したことなんて初めてのような…。
自席に戻る桐乃と目が合ったが、一瞬で顔が真っ赤になり、視線を外されてしまった。
『妹に向かって拍手とか超キモいっての!!もう、恥ずかしいことすんな、このシスコン!!』とでも言いたいわけね。へへん、わかってるって。
でも、そんなに怒るなよ、うなじまで真っ赤だぜ…。
ゴクリ…、ずっと黙っていたんだが、あの綺麗なうなじは反則だと思う。どうしても視線が向いてしまう。
ってか、綺麗なとか馬鹿か、俺は!!
いかん、いかん、だめだ京介。あれは妹のうなじだ、ノーカンだ!!
―キンコンカンコーン。授業が終了するチャイムが鳴り響いた。
「これで本日の授業参観は終了です。生徒の親御様、お忙しい中、ご参加いただき誠にありがとうございました。」
はぁ、やっと終わった。結局、両親がきているであろう、あやせを後ろから見守ることなど出来るはずもはなく、本当に仕方なく桐乃ばかり見ていた…。
さぁて、帰るか。そういえばお袋に写真を撮ってこいなって言われてたっけ…。
常識的に考えて無理な話だし、どうやって写真撮るんだよ。そもそも、被写体に断固拒否されんぞ。
もういい、授業風景を詳細に報告すりゃ満足すんだろ、親馬鹿共は。
「桐乃のお兄さんなんですか?」
「ふヘっ!!」
唐突に女子中学生から声を掛けられた俺は変な声をあげてしまった。
「先生に聞いたんです。あの廊下側の隅にいた若い人はだれですかって。そしたら、桐乃の兄さんだって。両親が急に出れなくなったから出席したんだよって教えてくれたんです!」
ああ、成る程ね。先生に聞いたわけですかい。
「でも、今日は平日なのに大丈夫なんですか?」
「俺の高校は偶然にも今日が休みでね」
「わざわざ桐乃の為に休日を潰したんですか?」
「えーと、妹のため、だからね」
どこかで見たような記憶がある女子中学生に捲し立てる様に俺に質問をされ、回答をしていると。
何故か俺は壁を背に女子中学生に三方を囲まれてしまっていた!!
某RPG風に例えるならば、京介は逃げ出した、しかし女子中学生の群れに囲まれていて逃げられない!!ハッハッハ、訳が分からない状況だぜ!!
「こんなにカッコ良くって優しそうなお兄さんがいるなんて知らなかった私」
「それに落ち着いてて、大人って感じがするし」
「うらやましいよね、桐乃が」
「うんうん、私なら超自慢する!!」
今、『カッコ良い』って言った!?マジで!?って、いかん、いかん、舞い上がるな!!
焦るな、落ち着け、これは俺を陥れるための罠なのだ。
「君たち、勘違いしているようだがね。俺は全然カッコ良くないし、まだまだ子供だよ。君たちだって、授業参観が始まる前、俺を見てニヤニヤしていたじゃないか」
「あれは、みんなでカッコ良くてイイ感じの人がいるけど誰だろうって噂してたんです。」
「ねーっ!」
「うんうん!!」
夢であってもいい、暫く覚めないでくれ!!女子中学生に囲まれて褒めちぎられるシチュエーション。エロゲでも中々お目にかかれないだろう。デュフフフ、いかん、顔面が崩壊してしまう。
「もう、お兄ちゃん、すぐに帰ってって言ったでしょ!!」
猫かぶり声で桐乃が急に女子中学生の輪の中に入ってきた。うぅ、気持ち悪い。でも、お蔭で顔面崩壊が防げたぜ。
「桐乃のお兄様ぁ!あの時は失礼な態度を取ってしまってごめんなさぁい。」
桐乃に続いて来た子は俺にペコリと頭を下げた。見ると、あのチンチクリン加奈子じゃねーか!
「ちょっと、加奈子。なにらしくないことやってんの!?」
「ほら、あの時は超恥ずかしくてキチンと挨拶もできなかったからだよぉ。ねぇ、お兄様、彼女っているですかぁー?」
「いや、いないけど…」
「なら、加奈子なんてどうですかぁー?」
といって、腕を絡めてきやがった。でもな、相手がチンチクリンじゃ全然嬉しくねーよ!!
「加奈子!!」
桐乃が加奈子の名を叫んだ直後、急に腕に当たる温もりが消えた。
加奈子を俺の腕から無理やり引っぺがした桐乃が俺の正面に立ち、両手を精一杯広げ、背を向けた姿勢をとっていた。
「みんなで寄って集って…。こいつはあたしの兄貴なのっ!!だからあたし以外、近づくのも触るのも絶対禁止!!!」
「おまっ、今なんて…」
「うっさい、バカ!!」
ゆでダコ桐乃は自分が発言してしまった内容に気づいたのか、逃走してしまった。
「お兄さん、桐乃を追いかけて!!」
放心状態になってしまった俺に突如現れたあやせが俺にハッパをかけてきた。
「おう、じゃ悪い、これ持っててくれないか。落とすとヤバいし!!」
「えぇー!!何でカメラを持ち込んでいるんですか!?お兄さん、まさか桐乃を…!?」
一瞬で目から光彩が消えたよ!!この女、やっぱりエンジェルだけど超こえー!!
「事情は後で説明すっから!!」
そう言って俺は教室を飛び出したわけだ。
―――後編―――
桐乃のやつ、自分以外兄にだれも近づくな、触るな…か。
ふぅ、一瞬、あいつが本当にブラコンなんじゃないかと思って焦ったぜ。
安心しろ桐乃、分っているよ。ここは学校だ、家族思いの優等生という設定なんだろ?
だから俺がお前との約束を守れずにいて激怒してでもそれは守ったんだな。
ふふふ、だが、甘い。俺の呼び方が『お兄ちゃん』から『兄貴』になってしまったことと、その後の罵声は減点もんだぞ。
闇雲に探しても埒があかないので、廊下にいる中学生諸君に桐乃の行方を聞いてみたら屋上に向かった事がすぐに分り、俺は急いで向かった。
学校の屋上といえばエロゲでは告白の王道シチュエーション。だが現実は非情である。探し人は妹であり愛しい人じゃない。
おお、いたいた。しょんぼりと柵に手をかけ景色を見てやがる。
本当に見た目だけは俺の知る中では一番の美人だからな、その姿は良く映えやがる。エロゲならこの光景は間違いなくイベントCGが用意されているね。
「おーい、桐乃ー!」
「ふん…」
せっかく超爽やかに声を掛けてやったのに、ソッポを向かれてしまった。
「なぁ、俺が悪かった。さっさと帰れって言われたのによ…」
「っさい。なら、さっさと帰って。今すぐ!!」
こらえろ俺、ここは桐乃の学校だ。兄妹喧嘩をしていい場所じゃねーだろ。
「分った、じゃぁ帰るわ。ホントにごめんな。俺のせいで恥かかせちまって」
「あたしの中学生活の中で一番の超大恥だから、あれ。後で絶対にセキニン取ってもらうからね。覚悟しときなさい!!」
「わーったよ。っと、せっかくだ、帰る前に一言だけ言わせてくれ」
「ハァ…、何!?それ言ったら直ぐに…」
「おまえ、やっぱり凄いな。」
「えっ…!?」
「桐乃は凄い。噂では聞いちゃいたけどこの学校の授業って本当にレベル高いんだな。俺だったら付いていくだけで精いっぱいだ。それなのに、お前は塾にも行かず、独学だけでこの学校でもトップに居続けている。」
「うん…」
「学業、趣味、仕事、部活と、まったく、どこからそんなパワーが出てくんだよ」
「そんなの、あたしが好きなことを思いっきりやれば幾らでも湧いてくるし!!」
理由はよくわからんが機嫌が直った桐乃の頭を自然と撫でていた。
「へへへ」
桐乃の照れ笑いを見ていたら、大昔こんな事があった事を思い出した。冷戦状態から脱したとはいえ、未だ超仲の悪い兄妹である。昔の様な関係は無理だろうけど、もうちょっと位は仲良くなったほうがいい気がする。
桐乃との関係を思い起こす内に、すこーしだけ、こそばゆい感情が沸きだしてきた。
・・・カシャ!!
「えっ!?」
桐乃と俺は同時に静寂を突如切り裂いたシャッター音が聞こえた方向を向いた。
センチメンタリズムを感じていた俺たちを現実に呼び戻した犯人を見つけるために!
「へっへーん、この加奈子様が、最高の一枚を撮ってやったぜ!!」
「加奈子!!勝手に撮らないでよ!!ってか、それ誰のカメラ!?」
「お袋に頼まれて俺が持ってこさせられたブツだ」
「お…、お母さんが!?あんたに!?ウソ、絶対あたしを盗撮するつもりで勝手に持ってきたんでしょ!?」
「違ぇーよ、バカ。ってかもう良いのかよ、すっかりいつもの調子に戻りやがって。仮面が崩壊してんぞ…」
「あっ…」
必死で怒りを抑える桐乃に対し、メルル@ダークウイッチは追撃を仕掛けてきた。
「桐乃が彼氏を作んない理由って、理想が高すぎるからじゃなくってぇ。やっぱり、あn」
「加奈子、お遊びはその位にしようか?」
「うげっ、あやせ…」
加奈子の後ろから音もなくスッとあやせが現れた。暗殺者かよ、お前は!!
「加奈子がそれ以上、踏み込んだ話しちゃったら、私どうしようかなと思ってたの」
今までの出来事がトラウマとなっているのか、あやせに凄まれた加奈子はすっかりおとなしくなった。
わかるぜ、その気持ち。俺も被害者の一人だからな!!
「加奈子、今、なんて言おうとしたワケ?ねぇ、怒らないから教えてよ?」
桐乃にも追撃で攻め立てられている加奈子について更に同情してしまった。
あやせは、つづいて俺にとても丁寧な言葉で牽制をしかけてきた。
「お兄さん、桐乃の機嫌をなおしていただきアリガトウございます。これで用件はすみましたので、お帰りください。それに、もう授業参観は終了していますし。」
「おお、どういたしまして。じゃあな、あやせ」
「そういえば、お兄さん」
あやせの横をそそくさと通り過ぎようとした時、不意に呼び止められた。そして、例のあの目で俺を見つめてきた。
「んっ、何かな、あやせ?」
「さっきの二人は認めたくないですけど、とてもいい雰囲気でした。私たちがとめていなかったら、あのまま…」
「おい待て!!ここは妹の学校だぞ!!」
ありえないことを口走りそうになったあやせに言葉を重ねて制した。まったく、近親相姦上等野郎でも妹の学校でなんてハードル高すぎんだろ!!
「フフフ、折角、授業参観が始まる前に忠告しておいてあげたのに…。きっと、カメラも桐乃のいやらしい写真を撮るために持ってきたんですよね?」
「違うって、だから、カメラはお袋が…」
「分りました、そういう事にしておきましょう。さよなら、この変態!!」
桐乃が介入するまでは女子中学生に黄色い歓声を受けていたのに、何で罵声を浴びさせらて帰ることになってんの?もう、わけがわからん。
俺はガックリと肩を落としつつ、麻奈美や黒猫に出くわさないようなルートを通って帰路についた。
あっ、カメラ回収すんの忘れてた…。
学校に戻るのはもういやだし、仕方ねぇ、桐乃にメールして加奈子から分捕るように依頼しておくか。
――エピローグ――
家に帰り、居間にいたお袋に授業参観の光景と、カメラは桐乃が持って帰ってくる事を説明した。
お袋の話では、どうやら写真が撮れないのは想定済みだったようだが、建前上だけ持っていかせたんだと。桐乃のためだけに購入したブツを一緒に持っていけば、少しくらいは親父が満足してくれると思ったとか何とか。
おいおい、おかげでこっちは実妹とその親友に犯罪者呼ばわりされたんだぜ…。本当に勘弁してくれよ!!
居間を出て、自室に戻りベッドに倒れこんだ。
もう、色々と疲れ果てていた俺は、せっかく買った一張羅が皺くちゃになるのが嫌だったんで普段着に着替えてから昼寝をした。
・・・パァーン!
頬に衝撃が走り、夢の中から強制的に呼び戻された。最悪だ、日に二度もビンタで叩き起こされるなんてよ!!
同じ轍は踏まんぜ、こんどは、お袋か!?
慎重に目を開け、相手を確認してから俺は第一声を発した。
「桐乃!?てんめぇ、寝ている兄を何度叩き起こせば気が済むんだ!!」
よかった、今度は桐乃だった。いや待て、良くねぇよ、俺!!
「あんた、よくも今日あたしに恥かかせたくれたわね」
「あん?悪かったよ、んで、何をすればいいんだ?」
「それは……。これから考える………」
バツが悪そうに、弱々しく答える桐乃。
「じゃぁ、何で兄に馬乗りになってんだよ!!」
「キモッ、バカ、変態!!馬乗りとか言うな!!」
罵声を浴びせつつ、バチンと再度強烈なビンタを食らわせてきやがった!
「…ってぇな。分ったから先ず、ベッドから降りろ。そんで用件をさっさと言え」
訝しげにベットから降りて、仁王立ちになり俺を見下す桐乃。
「あんたが今日着てた服、メガネ、靴を回収しに来たの!!」
「なんでだよ!!」
「もう、今日の出来事はトラウマになったから!!あんたがそれを着てるのを見たら…、それだけでフラッシュバックするし!!それに、お父さんにお金出してもらったんでしょ!!」
「そうだけどよ…。でも俺が買ったもんだろ?」
「うっさい、そもそも、お父さんがあたしの授業参観に出るつもりだった→出れなくなった→お母さんも出れない→残る一人に任せた→でもそいつにはまともな服がない→仕方ないからお父さんがお金を出した→その金で色々買った→それは実質あたしのもの。ほらこんなもんよ。」
「なんだ、その超理論は!?」
「問答無用!!あたしのものだから、これは回収していくかんね!!」
あっという間に店で買った時の袋ごとブツと回収されてしまった…。
相変わらず理不尽な女だ。もういい、さっさと出ていけ!!
「あと、ひとつ忠告しておくから」
桐乃は、俺の部屋のドアノブを握りながらか細い声でそう言った。
「…なんだよ?」
「その髪型、気合入れすぎ。ワックスでセットしても、どーせ、あんたは自分じゃ再現できないでしょうケド!だから、諦めて明日から今まで通りの髪型に戻すこと。」
「おい、今の発言は超傷付いたぜ…。」
妹様は俺に死ねとおっしゃっているんですか!?
「………。…似合ってないとは言ってないじゃん、…バカ」
「あぁ、なんか言ったか?」
桐乃がボソボソと何かを言った気がするんだが良く聞き取れなかった。
「……、キモッ。何でも無いっての!!」
バタンと勢いよくドアを閉めて桐乃が部屋から出て行った。
ほんの少しの淡い体験の代償に、多大なイライラをため込んだこの日、俺は誓ったよ。
もう二度と妹の授業参観に出るものかってな!!
終
252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/07(月) 21:59:08.66 ID:vjIsHAjrP [4/4]
最終更新:2011年06月10日 00:53