379 名前:【SS】if 桐乃の同級生京介 告白式前編[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 00:02:14.03 ID:p77uQwKHO [1/5]
※※※
ひょんなことから俺、高坂京介が中学三年生として暮らすようになってはや幾月、
もう学年末、明日には卒業を迎えることになった。
「一年間、あっという間だったなあ」
「高坂君の周辺は毎日が大騒動の連続だったからねえ」
「ほんと、ランには世話になったよ」
「なに改まっちゃってんの」
この子はラン。桐乃の親友の一人であり、俺の素性を知る人物の一人でもある。
俺が桐乃のクラスに転入した当初、なかなか馴染めなかったときから
いろいろフォローしてくれたクラスメートだ。
てか、本来なら桐乃やあやせ、加奈子がもっとフォローしてくれていいのに
あいつらはむしろ率先して俺を騒ぎの中心に引っ張り出してた気がする。
「ランがいろいろ教えてくれなきゃ、今頃引きこもりだぜ」
「そこまで言ってくれると嬉しいな。じゃあ、これはあたしからの最後のアドバイスになるね」
「ん、なんだ?」
「桜桃学園の最後のイベント、『告白式』が高坂君を待ち構えてるからね♪」
「な、なんだそれは?」
ランの説明になると桜桃学園の伝統で、卒業式の後、
卒業生が校内の桜の大木の下で告白を受け、両想いになれたカップルは生涯添い遂げられる…
そんな風習があるらしい。
告白の指名を受けた卒業生は逃げることなく相手の告白を受け、イエスかノーか確実な返事をしなければならないとのこと。
「高坂君は人気者だったからね。きっと長蛇の列だよ」
「それはどうだろうな?」
「まあ、うちの学年の女子は高坂君を取り巻く3人組に圧倒されて諦めた子ばかりみたいだけど、
下級生はそういう状況知らない子もいるからねえ」
「ちょっと待て、3人組って?」
「そりゃ桐乃とあやせと加奈子に決まってるでしょ。何を今更」
「いやいや、後二人はともかく、桐乃は…」
「マジな話、桐乃は高坂君のこと好きだからねえ」
「そんなわけねーよ」
「それはどうかな?高坂君と話してる桐乃は、口調や言葉はキツイけど、
すごく楽しそうなんだよね。まさしくバカップルの痴話喧嘩だし」
「………」
「…高坂君は、確かに桐乃の兄さんだけどさ、もし、もしもよ、
桐乃が真剣な気持ちで告白してきたらきちんと受け止めてあげてよね」
「ラン、俺達兄妹のことを気にかけてくれてありがとな。あとは俺の好きにやらせてくれ」
俺はそう言い残して教室を離れた。
もし、桐乃が告白してきたら、か…
俺は、どうしようか……
考え出すと、きりがなかった。
※※※
翌日、卒業式の一連の行事も終わり、いよいよ「告白式」に俺は向かう。
玄関の手前に、あやせが立っていた。
「お兄さん、これから告白式に向かうんですね」
「おう、あやせ。お前も告白式に来てくれるのか?」
「四月馬鹿にはまだ早過ぎます。
お兄さんはそんなに桜の木に埋められたいんですか?」
「相変わらずラブリーマイエンジェルは言う事為す事がキツイぜ」
「…私には、まだ、お兄さんと生涯添い遂げるだけの覚悟がありませんから…」
「何か言ったか?」
「何でもありません!せいぜいお大事に!」
そう言い残すとあやせは去っていった。
あやせの本心は、今でも読み取るのが難しいんだよな、まったく……
380 名前:【SS】if 桐乃の同級生京介 告白式後編[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 00:05:16.31 ID:p77uQwKHO [2/5]
靴箱の前には、加奈子がいた。
「うへぇ、まったく、モテるマネージャーはつらいヨなあw」
「うっせーよ」
「ま、おめーはこれからもずっと加奈子のマネ決定だからいいんだけどさー」
なんじゃそりゃ?
「まっ、おめーに告白する女達も真剣なんだから、
そこんとこは忘れずに後腐れなくうまくフってやれよ、じゃーな」
「お、おう」
まあ、加奈子らしいと言えばらしい会話だった。
口調はあんなだが、根底には他者への思いやりというか心くばりがあるんだよな、あいつは……
さて、あやせと加奈子がいるなら後は桐乃か、と思ってたんだが、
桐乃は、ここまで姿を見せなかった……
※※※
ランが教えてくれた桜桃学園の伝統によると、告白する生徒は、その予告として
相手の靴箱に消しゴムを入れる習わしらしい。
何故消しゴムかはランにもわからないそうだが。
俺の靴箱にあった消しゴムは、8個。正直こんなにモテていいんだろうかとの思いはある。
ランが言ったように、俺に告白してくる子は下級生ばかりだった。
確かに可愛い子が多いんだが、俺は一人一人にきちんと断りの話をした。
断られた子は、俺の足元にある、自分が靴箱に入れた消しゴムを引き取って帰る。
俺の足元にはあと一つだけ、消しゴムが残ってる。
その消しゴムのスリーブは、「星くず☆ういっちメルル」のイラストが描かれていた……
※※※
「…やっぱり、メルルの消しゴムは、桐乃だったか」
「兄貴、あのね」
「待てよ桐乃!」
「最後まで言わせて! あたしは、兄貴とずっと一緒にいたいの!
だからここで告白する!!だってあたし、兄貴が……兄貴のことが、好きだから」
「いいのかよ、俺なんかで」
「バカ兄貴、よくないならわざわざこんな告白するわけないジャン」
「桐乃……大好きだ」
俺は桐乃の肩を抱き寄せ、唇を重ねた。
一瞬、幼い日にこうして桐乃にキスしたのが思い出された。
年月は経ったが、あの時と同じ、純粋に桐乃を好きで好きでたまらない気持ちは、きっと一緒に違いない……
※※※
「まさか、兄貴があそこでキスするとは思わなかったんだけど…」
「いや、だってこれが桜桃学園の告白式の伝統なんだろ?
両想いになった印のキスって」
「…そんな話、初めて聞いた…」
待てよ、それじゃあ……
「よっ、ご両人。さてはめでたく結ばれたね。めでたいめでたい」
「ラン、お前騙したな!」
「ちょっとランちん!兄貴に変な入れ知恵したでしょ!」
「マンネリな告白式に、小さな刺激のエッセンスを加えてみただけだよ」
「小さくなんてないから!」
「まあまあ、二人が結ばれて大団円なんだから
小さな悪戯は水に流してよお」
「まだ終わってないし。あたしたちの戦いはこれからも続くんだからね」
「戦いって、なんだよ!!」
「二人とも、お幸せにー♪♪」
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最終更新:2011年03月10日 00:45