392 名前:【ss】感じていたくて 1/3[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 02:18:06.42 ID:et7XDszEO [2/5]
諸君、聞いてほしい。俺の名前は高坂京介、高校三年生で18歳だ。
俺には妹が居る、三つ下で中学三年生の15歳だ。
妹の名前は高坂桐乃、容姿端麗文武両道、俺とは完璧に出来が違う本物の優等生様だ。

あぁ、そのはずなんだが。目の前のこの光景は何だろう。

「お兄ちゃん、どうかしたの?」
俺の顔を覗き込むこの穢れの無い瞳はどうしたことだろうか。
そこには俺の記憶と違わぬ小学生時代の桐乃が居た。

……何を言ってるか判らねーと思うが、俺も何が起こっているのか判らねー、頭がどうにかなりそうだ

そんなアホなことを考えている俺の様子を眺めていた桐乃だったが、何か俺が苦しんでいると勘違いしたんだろう

「お、お兄ちゃん大丈夫?何処か痛いの?」
オロオロしながら、俺を気遣ってか背伸びして頭を撫でてくれている桐乃。

昔の妹のこの天使ぶりにお兄ちゃん正直泣きそうだ。

「桐乃ありがとう、お兄ちゃんは大丈夫だ。桐乃のおかげで後10年は生きていける」
「へ?」
よく判らないといった風に首をかしげる桐乃(幼ver)←かわいい

「ところで桐乃、その……なんで、そうなってるんだ?」
「どういうこと?」
またもや首をかしげる桐乃(幼ver)←超可愛い
「あっと、なんて言ったら良いのかな……」
いや、マジでどう聞いたら良いんだよ、下手な聞き方とかして桐乃恐がらせたりしたらマジ殺すぞ俺。
「えっと……桐乃は今日、なにしてた?」
「はぁ?…っじゃなくて…よく判んない!」
なんか今、凄く聞き慣れたフレーズが聞こえた気がするけど、気のせいだろう。目の前に居るのは桐乃(天使)だし、うん。
「おっ、お兄ちゃん!な、何だかよく判んないけど……大丈夫だよ!」

健気にも俺の不安を拭ってくれようとしてるのだろう。俄然ヤル気が出てきた。
「桐乃!絶対にお兄ちゃんが何とかしてやるからな!」
「いや、だから大丈夫なんだって、え?キャッ」
そう言って小さい桐乃の身体を抱きしめると、流石に驚かせてしまったのだろう。腕の中の桐乃はビクッと反応したかと思えば、遠慮がちに縋り着く様な距離感をとろうとしていた

「あ、ごめんな、いきなり」
「べつに……いい……ケド……」
「へ?」

一瞬目の前の桐乃から現代の桐乃の様な雰囲気を感じたがそんなわけがない、今の桐乃を抱きしめようものなら即殴られてるな……

393 名前:【ss】2/3[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 02:19:44.82 ID:et7XDszEO [3/5]
このやり取り以降は、桐乃をもとに戻すべく、色々試してみたが……結局のところ無駄だった。

幸い明日も休みのため、今日は諦め明日に回そうということにした。
寝支度も済ませ、後は寝るだけというとき、ここで問題が一つ。

今、桐乃を1人で寝かせるのはどうかということ。だが、今は小さくなっていても俺の中ではどうしても普段の桐乃のイメージが取れないということ。

このことから、どう寝るかという問題が沸き起こっていた。
もちろん最初はお袋にそのことを言ってみたのだが、ゴキブリを見る様な目でこちらを見て
「あんた、今のあの子に興奮するの?」
などと言われてしまった。
流石に傷ついた。勿論全力で誤解を解いて名誉を挽回したのは言うまでもない。
まぁ、なんだかんだで
「今のあの子、あんたを一番頼りにしてるみたいだから一緒に居てあげなさい」
なんて言われてしまった以上、桐乃を寝かすのは俺の役目なんだろう。

部屋で寝る準備をしてる桐乃を迎えに行くか……
「おーい、桐乃寝るぞー」
「桐乃?入るぞー?」

部屋に入ると、こちらに背を向けてベッドの上でタコを抱きしめている桐乃の姿があった。

「桐乃?どうした?」
「ぉ、お兄ちゃん……」
赤い顔をしてこちらを振り返る桐乃、心なしか目も潤んでいる様な気がする。
「なんかあったのか?」
「……なんにも、無い……よ」
「そうなのか?寝るぞ、どっちのベッドが良い?ここか?俺の部屋のか?」
「うん……お兄ちゃんのが良い……」
「そうか」
タコを抱き締めながら、うなずく様に返事をした桐乃を連れて俺の部屋に連れていく。

タコを連れて来ていた桐乃はベッドの上でタコを抱きしめて横になっている。俺もその横になった。
「おやすみ、桐乃」
「おやすみなさい……」

目を閉じた桐乃の横で、俺は仰向けになって考える。
明日はどうしたや良いのか、どうするべきなんだろうか。
考えても一向に答えの見つからないまま、ふと桐乃の方に目をやると、先ほどまで抱かれていたタコは足元に追いやられ、何やら桐乃がこちらを見つめていた。
「どうした?桐乃、寝れないのか?」
「あのね……お兄ちゃん、寝るまでで……寝るまでで良いから抱きしめて、ギュッとして?」
なんだかんだで、周りが不安そうにしてるせいでコイツを不安させてしまっていたのだろうか
「ごめんな……これで良いか?」


394 名前:【ss】 3/3[sage] 投稿日:2011/03/09(水) 02:21:09.04 ID:et7XDszEO [4/5]
「うん、ありがとう……ずっと……ずっとこうして欲しかったの……それに、これからも……お兄ちゃん……」
俺の胸の中でつぶやく様に桐乃が何か言っていた様だが、聞き取れなかった

程なくして穏やかな寝息をたて始めた桐乃を見届けた後、やがて俺も桐乃を抱きしめたまま眠りに落ちていった。





翌朝、目は覚めたが、昨晩桐乃が完全に寝付いたと思えるまで一応は起きていたため眠気が残っておりまだ意識が朦朧としている。

暖かい物と触れている感触があるあたり、まだ桐乃を抱きしめたままだったのだろう。

その柔らかく、自分の肩から足先にかけて密着する感触が有ることに違和感を感じる。

その違和感の正体を探るべくして、朦朧としていた意識を揺り起こす。

はっきりとしてきた視界に見えたのは、ライトブラウンに染めた髪の美少女。
高坂桐乃15歳である。




桐乃の伏せられたまぶたがゆっくりと開き、俺たちの状況を把握するまでの数十秒間
今、身体を絡ませる様に抱きしめている状況をどうにかしようと思った所で俺の平凡な日常は返って来た様だった。








おわり



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最終更新:2011年03月10日 00:45