877 名前：名無しさん＠お腹いっぱい。[sage] 投稿日：2011/03/23(水) 00:38:21.98 ID:Av92kkXf0 [1/2]
SS『メルル毛布の届いた日』
ピンポーン
「きたーーーーっ！」
あたしは嬉しくって、つい大声を出してしまう。
だって今日は、半年前にあらゆる限りの手をつかって予約することの出来た、
特別限定版『星くずういっちメルル・スペシャル毛布』の届く日なんだもん！
あたしが小躍りしながら玄関へ向かうと、既に兄貴が荷物の受け取りを終えたところだった。
せっかく、あたしが一番にさわろうと思ってたのに、まったく、空気の読めないヤツだ。
「桐乃。おまえあての荷物だぞ。」
「うっさい。そんなんわかってる。」
「な、何怒ってるんだよ？」
あーもう、これだから鈍感な男って。
「あんたが、穢れ一つ無いめるちゃんをあたしの許可なくさわるからでしょ。」
「お、おいっ、ダンボールに入ってちゃ分かるわけねーだろ！？
つーか、ダンボール越しにさわって問題があるのかよっ！？」
「うざっ。いちいち細かいとこまで、うざいんですケド。って、あんた何逃げようとしてんのよ？」
「なんだよ、まだ何かあんのか？」
「わっかんないかなー？こんな重い荷物、あたしに運べっていうの？」
「………………………」
「………DMMアダルト………」
「ぜひ運ばせていただきますっ！」
脅されてようやく動くなんて、なさけないやつ。
というか、この前のエロサイトもそうだったけど、妹のパソコンでエロアイテム探しとかありえないよね？
これも、あたしに不快な思いをさせた罰みたいなものだ。
「意外に…重いな？」
「そりゃそうでしょ？一応ちゃんとしたメーカーの作った毛布なんだしー」
「毛布？いつもの抱き枕じゃないのか。」
「抱き枕って、いかにもあたしが抱いてあげるって感じじゃん？
めるちゃん可愛いし、いつまでも抱いていたいけどー
でも、いつもあたしが抱く側じゃ、めるちゃんかわいそうでしょ？
それが毛布だといつもと逆で、めるちゃんに抱きしめてもらってるって、そう思えるし。
それに、抱き枕だけだと寒くって、本当にめるちゃんと抱き合ってる気がしないじゃん？
抱き枕と毛布なら、もっとめるちゃんと一緒って感じで気持ちよさそうなんだもん。」
ふと兄貴をみると、なんか３歩くらい後ずさってる気がする………
「そ、それはともかくっ、さっさと運びなさいよっ！」
「わかった。わかったから。」
「あっ、気をつけなさいよっ、壁にぶつかるじゃん」
「でかくって、前が見にくいんだよ。」
「あ、足元っ、階段っ」
「お？あ、あぶねえ」
「荷物にも注意してってば。ずり落ちてきてるでしょ？」
「重いんだよ！」
もうっ、いちいち頼りにならないんだから。
………………
………………仕方ないんだからっ！こいつが落としそうなのがいけないんだからっ！
「なっ！？桐乃！？何………やってんだ！？」
「あんたが、荷物重いって言うから………支えてあげてんでしょ？」
「いや、後ろからは、あぶねえ？つか、あたって………」
「………何よ？」
「………………か、階段はもうとっくに、終わってるぞ？」
「あとちょっと、あるじゃん」
「………………手、荷物、支えてねーぞ？つか、それ俺の腕………」
「………届かないから仕方ないじゃん。」
「………………と、とにかくっ、む、………あたってんだよっ！」
「………………………」
「とりあえず、つ、ついたぞっ！？」
「………………………」
「き、桐乃………？」
あれっ？
あ、あたし何してたんだっけ？
たしか、荷物を持つのを手伝って………！？
「き、キモっ！い、妹に荷物運び手伝わせて、そ、そのうえ、妹の胸に欲情とかっ！」
「お、おまっ、おまえが勝手にっ！？」
「いいわけすんなっ！よ、用事はおわったからっ！」
「おまえ、言ってる事支離滅裂だぞ！？」
「うっさい！変態っ！さっさと部屋から出てってよっ！」
「わ、わかったから、機嫌直せよ…な？」
「………………………」
バタン
兄貴が出て行ったあと、あたしはちょっと反省する。
はずかしくて、また、やってしまった。心にもないことばかり、口をついて出てきてしまう………。
でも、あたしも悪いけど、あいつも悪いんだもん。
あたしのこと、全然みてくれない、京介だって………
夜になって、あたしは新品のめるちゃん毛布に包まれて眠る。
毛布には、めるちゃんの絵がでかでかとプリントされていて
子供に戻ったみたいでちょっと恥ずかしい。
めるちゃんと、夢の中であえるかな。
あたしを頑張れって応援してくれるかな。
でも、努力したって、どうにもならない事もあるんだもん………
あたしにも、なんでも解決できる魔法の力が手に入らないかな………。
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最終更新：2011年03月26日 23:25
