946 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/23(水) 23:07:38.49 ID:Av92kkXf0 [2/2]

下猫の黒猫への呼び方は特典小説仕様です。
(アニメでは『ねえさま』、口調はアニメ準拠)



「はぁ………」

いまいち闇の世界との対話が進まず、私はため息をつく。
さっきからペンが………魔術を書き連ねる筆が進まない。

私は熾天使ウリエルとの戦いに敗れ、この仮初の肉体の中に、
その力と想いとを封印されてしまっているためだ。

だが………ククッ………半分は私の思い通りだ。
あの熾天使はタブーを犯した。私の敷いた罠にかかったのだ。
今後は、封印されたとはいえ、私に逆らうことはできまい。
そう思うと、少しは慰め………いえ、今後の展開に期待ができる。

そうだ。あのビッチが、実の兄に犯される同人誌でも描いて溜飲を下げるとしよう。
いえ、あの熾天使が強大なリヴァイアサンに犯される………かしらね?
どう思うかしら、あの二人。
以前の『ベルフェゴールの緊縛』も中々好評だったけど、
また、顔を真っ赤にして騒いでくれるかしら?

私自身、しょうもない妄想だとは思う。
だけど、今の―――元々そうするつもりであったとはいえ―――
大好きな人を、譲ってしまった感情は、消しようがない。
冗談にして、悪ふざけにして、解消してやるしかないではないか………と―――

「おねぇちゃん、おねぇちゃん?」
「あら、ごめんなさい。少し集中しすぎてたわ。」

小さな、私の………いえ、この仮初の肉体にとっての天使。
あのビッチに共感するわけではないが、私の妹は痛々しい程に幼く、可愛らしい。
それこそ、あんなビッチに会わせるわけにはいかない。

「おねぇちゃん、本を書いてるのですか?」
「そうよ。今は、本の原稿を書いてるのよ。」
「げんこう………ですか?」
「ええ、そうね………本の元になる文章よ。」
「わかりました。おねぇちゃん、すごいです。」

妹は、これがどういうものかはわかっているまい。
本と言っても、市販されるようなものではなく、売れるかどうかすら分からない。
私は自嘲気味に、そう思う。

「ところでおねぇちゃん?」
「何かしら?」
「このご本にたくさん書いてあります、せっくすって何ですか?」
「なっ!?」

私はすっかりあのビッチが犯される妄想に浸っていたため、
とてもじゃないけど、妹に見せたらいけない文章になっている事を忘れていた。

「ちょ、ちょっと待ってね。このご本は、子供は見てはいけないのよ。」
「はい!」

うぅっ、素直な笑顔が胸に突き刺さる。

「それで、おねぇちゃん?どういう意味なのですか?
 気持ちいいとか、大好きとか書いてありましたけど。」
「うっ………」

ど、どど、どうしよう!?
いくらなんでも、本当の意味を教えるわけにはいかない。
私は散々悩んだ挙句………

「そっ、そう、男の人と女の人が二人だけで大きな建物に入ることよ。
 それで、その………あなが………な、なんでもないわ。」

そう誤魔化してしまっていた。
………まあ、嘘は言っていない。

「おねぇちゃん、何でも知っててすごいです!」
「え、ええ………」

お願い。その純真な目で見つめないで………
闇の眷属は、光り輝く心に弱いのよ………

「おねぇちゃん、それじゃあびっちさんはせっくすなんですか?」
「ブフッ!?な、な、な、何を言ってるの!?」
「おかぁさんとえきまえにお買い物にいったときに、びっちさんと男の人がうでをくんで、
 なんとかのあなって書いている、おおきなたてものの中に入っていきました。」

あ、あの二人っ!
両想いだとわかったら早速ホテルですって!?
………まるで野獣ね。汚らわしいわ。

「いい?さっきの言葉は、大人にならないと使っちゃいけない言葉よ?
 これからは人前で使っちゃだめよ。」
「はい!わかりました、おねぇちゃん。」

とりあえず、これで何とかなったのだろうか?

まったく………これではこの構想もお釈迦だ。
あの二人でも出来ないような、恥ずかしいシチュエーションを考えるべきなのか………
いや、案外他人から指摘されるのは、恥ずかしいものかもしれない。

………結局の所、私はあの二人を見てるのが楽しいのだ。
私自身の事を考えると辛く、沈んでしまう所もあるけど、
二人の事を考えると様々なインスピレーションが湧いてくる。

これからは二人をからかいつつ、見守っていくこととしよう。
そうしたら、今までの自分を超えて、新しい何かを見つけられるかもしれない。
或いは、もう、私は新しい自分に目覚めたのかもしれない。

私が物語を作るその原動力は変わらない。
でも、今までの、何かよくわからない『この世界に対しての嫉妬』が、
今では、『ある個人への嫉妬』に変わっている。

そういった他人とのかかわりの中で物事を考えられるようになったのは、
ほんの少しではあるが、私自身の成長なのではないだろうか?

私はほんの少しの悔しさを封印し………
少しの誇らしさと共に歩んでいける気がしている。



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最終更新:2011年03月26日 23:31