79 名前:一緒に…【SS】[sage] 投稿日:2011/03/25(金) 00:10:33.86 ID:/8Z5cORTO [1/5]
西暦2000年代、とある小学校の授業風景
先生「みんなが生まれた頃に、大きな地震がありました。『阪神・淡路大震災』といいます。」
ビデオや写真などを使って先生は大震災を説明する。
ビルや高速道路が倒れ、大火事が起きてる様子に目を奪われる子供達。
「じゃあ、みんなに質問。みんなは、もし地震がきたら、何を持って逃げるかな?」
子供達は先生の問い掛けを受けてそれぞれの考えを発表する。
「はい、それでは高坂くん」
「僕は、妹を連れて逃げます。」
周りからは「やっぱりなあ」「言うと思ったよ」などと声があがる。
「はい、みんな静かに。高坂君、じゃあどうして妹を連れて逃げようと思ったの?」
「妹は、足が遅いから、僕が連れて逃げないと家の下敷きになっちゃったり、
火事にやられちゃうかもしれないからです。
それに、妹は怖がりだから、ビデオで見たような物凄い地震が起きても
『お兄ちゃんがいるから大丈夫。心配するな』ってついていて頭を撫でてやります。」
「なるほどね。」
※※※
現在、高坂家のリビング
「…なんてことを授業で京介が話してたって、
先生が保護者面談で話してくれたのを思い出したわ」
「うむ、まったくもって京介らしいな。」
という両親の会話があたしの耳に入ってくる。
兄貴の過去のシスコン度合いはホントすさまじい。
まあ、以前はそんな逸話に辟易してた頃もあったけど、
今では素直に、兄貴のあたしへの愛情を理解できる自分がいる。
今でも、兄貴は、あたしのことを真っ先に考えて一緒に逃げてくれるかな……
「ねえ、兄貴」
「なんだ桐乃」
「もし大きな地震が来て、あたしが腰が抜けちゃったら、
あたしを連れて逃げてくれる?」
「お前が腰を抜かすとか、とても想像できないんだが。
それに足だって、お前のほうがずっと早いし」
「もしもって言ってるでしょ。真面目に聞いてんの!」
思うような答がかえってこなかったので、あたしはつい怒鳴ってしまった。
※※※
「…悪かった。まあ、今の俺でもいざとなったら
お前をお姫様抱っこして逃げるくらいの力は出せるさ。何とかの馬鹿力ってやつで」
「シスコンの馬鹿力ですね わかりますw」
「それを言うなら火事場だろ、馬鹿…」
兄貴はちょっと恥ずかしそうな顔を見せた。
とその時
「地震?」
「そうだな、また余震みたいだ」
揺れがしばらく続く。
「怖い…」
あたしは思わず兄貴の身体に身を寄せる。
「心配するなよ、この家はしっかり出来てるし、それに、」
「それに?」
「俺がいるから大丈夫、心配するな」
兄貴は、お母さんが話してた子供の頃の気持ちそのままで、あたしに接してくれている。
あたしの頭を撫でる手は、やっぱり温かい。
こんな時だからこそ、兄貴が近くにいてくれることに、ほっとできる。
早く世の中が落ち着いて、みんなで笑える日がくるといいな
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最終更新:2011年03月26日 23:45