964 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/03/31(木) 22:13:36.75 ID:5KQa3QyD0 [4/6]

SS『同人誌』



取り立てて特別なことも無い、ある日曜日。
沙織から突然電話がかかってきた。
いや、多分この前送ってきた『プレゼント』とやらの件だろう。

「京介氏、最近送らせていただいた同人誌はどうでしたかな?」

って、折角俺が誤魔化そうとしたのにっ!?
まあ、言っちゃったもんはしかたねーな!ちょっと、沙織に頼んでたんだよ。

「ああ、結構良かったぜ?あのメルル同人は粒ぞろいだったぜ。
 触手モノとか、メル×アル本とか、マジ興奮したぜっ!」
「さ、左様でござるか」

なんか、沙織はちょっと引いている気がすが………なんでだろーな?

「桐乃のやつに渡してやったらよ、はじめちょっと微妙な表情だったけど、
 すぐに大喜びで持っていったぜ!ありがとなっ!」
「ま、まさかっ、きょ、京介氏、一旦『使った』モノを渡したでござるか!?」

ん?沙織やつ、何を慌ててんだ?

「おう。あんなに面白れー同人誌、桐乃にも見せてやらないと勿体無いだろ?」
「………ブツブツ(使用後………大喜び………)」
「どうかしたのか?」
「い、いや〜、なんでもないでござるよ。」

なんか歯切れが悪いなー。
………そうかっ!メルル本以外の感想も聞きたいんだな!

「それとな、まず、マスケラ本だが………」
「おぉっ!京介氏。あれも見られたのですか!」
「俺にはBLは無理だ………」
「あ〜、かなりソフトなものを選んだつもりなのでおじゃるが、
 さすがに厳しかったでござるな〜。」
「つか!な、なんなんだよっ、あ、あの、『飲み込んで、僕のエクスカリバー』だの、
 『今夜のスペシャルデザートは、生俺』だのっ!」

あれはマジでキモかった………赤城兄妹のこと、俺は誤解してたぜ?
あいつら、重度の変態じゃすまされねぇ!もっと違う何かだっ!

「きょ、京介氏………まさか、全部見たでござるか?」
「………見ちまった………折角おまえが送ってくれたもんだと思って………」
「な、南無でござる。せなちー氏に渡して頂けるかなと思ったのでござるが………」
「と、とにかく、アレは俺には無理だ………せなちーに、直接送ってくれ………」
「す、すみませぬ。」

しまったな。沙織を責めるつもりは無かったんだが………

「そうだ。オリジナル本でも結構良いのがあったぜ。」
「ほう。どういったモノでしたかな?」
「どこのサークルかは忘れたけどよ?眼鏡っ娘にぶっかけ。アレは神だね。」
「うわあ………」

な、なんだよ、その反応は。

「年頃の女の子にセクハラ発言とは、京介氏も相当の変態ですな。」
「さっきまでのと比べて、なんで今のだけセクハラなんだよっ!?」
「拙者、眼鏡っ娘でござる。」
「………………………」
「………………………」

眼鏡っ………娘?

「………最近は、ぐるぐる眼鏡も、眼鏡っ娘って言うのか?」
「拙者、傷ついたでござるよ〜。と、冗談はそれくらいにして。
 京介氏。先ほどから、全く触れてないモノがありませぬか?」

………やっぱ気がついたか。
だけどよ、アレについては、色々マズイんだよな………

「さすがの拙者も、送った同人誌の80%について全く触れられていないのは、
 さすがにちょっと悲しいでござるよ。」
「ま、待て。」
「あの、大量の妹モノ同人誌はどうだったのでござるか!?」

ああ………折角気持ちを押さえつけ、封印してたのに………
この感情、沙織にぶつけるしかねえ!

「沙織………」
「京介氏?」
「妹モノの同人誌をあんなに大量に贈ってくれたのは嬉しい。感謝してる。
 そして、送ってもらった同人誌のうち、確かに5%位は良かった、そう思う。」
「ご、5%でござるかっ!?ほ、他はダメだったでござるか。」

沙織にはわりーが、今の俺は止められねーぜ?

「そうだ。まず、ほとんどの同人誌が『義妹』だ。」
「………は?」
「『義妹』だよ『義妹』っ!『実妹』じゃねーんだよっ!」
「きょ、京介氏!?」
「折角、実妹キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!とか思ってもよっ、大抵義理オチじゃねーかっ!
 あ、挙句の果てにっ、幽霊オチだぁ?猫又オチだぁ?てめーら実妹なめてんじゃねーよっ!
 そもそもだな、実妹じゃないキャラが『お兄ちゃん』とか、ありえねーだろっ!
 ただの従妹や幼馴染のくせに、兄貴扱いしてんじゃねーよっ!
 そもそもだな、妹ゲーの基本は、実の兄妹であることに由来する背徳感なんだよっ!
 法律的に全然オッケー!じゃお話にならんだろうがっ!わかってねー!全然わかってねー!
 シナリオもそうだ。ただ兄妹でエッチ三昧?馬鹿にすんなっての!
 ただの恋人なら兄妹じゃなくて、幼馴染か友達程度で十分なんだよっ!
 兄と妹との微妙な関係が絶対の必須条件だろっ!?その上でイチャコラしろってんだよっ!
 恋人になったら、名前で呼ぶ?じょーだんじゃねぇ!そこはぜってー譲れないだろっ?
 最後まで『お兄ちゃん』って呼んでくれんのがいいんじゃねーか!
 それに、妹の性格だ。家事万能、性格もよくって、少し控えめだと………?
 妹ってのは、ツンツンしてなきゃならねーだろっ!
 最初は大っ嫌いだった兄に、だんだん惚れていく様………これこそが至高のエロゲー!
 普段はツンツンしてるくせに、思わず漏れてしまう本当の気持ち………っ!
 このギャップが素晴らしいのにっ………なんでみんな分かってくれねえんだよ………」
「京介氏、さ、さすがにそれ以上は、色々な意味でやばいのではないかと」
「お?ちょっと熱く語りすぎたか?」
「え、ええ。ちょっと………ですな。」

沙織は、先ほどまでと違って、何故かげっそりとした喋り方になってしまってる。
いくら沙織でも、疲れてる時ってのはあるもんだな。

「とにかく、沙織。本当にありがとな。これからも、色々と頼むぜ!」
「りょ、了解しました!京介氏。次こそは京介氏のお眼鏡にかなうものを探して参りますぞ!」
「それじゃ、またな。」
「ええ。それではまた。」

電話を切り一息ついたところで、俺は、いつの間にか桐乃が部屋に入ってきている事に気がついた。

「お、お兄ちゃん。やっと、やっと分かってくれたんだ!」

お兄ちゃん?………どうした、頭でも打ったのか?

「やっぱ、実妹って最高でしょっ!ツンデレ妹って神だよねっ!」

ああ、そういうことか。

「そうだな!俺やっと気付いたんだよ。実妹は最高だ!ツンデレ妹は最高だってな!」
「うんっ、うんっ!」

桐乃の顔には、あふれんばかりに笑みがこぼれ、
これまで見てきたどんな時よりも楽しそうにしている。
こんなにもエロゲーをやってきて嬉しかったことはねえっ!
俺は、桐乃とこの嬉しさをもっと共有したくて、自然と口から言葉が出る。

「本当に最高だよなっ!二次元の実妹って!」





この後、俺は桐乃から謂れの無い攻撃を散々受ける事になったんだが、
一体何が悪かったんだろう?

やっぱ、三次元の妹はかわいくねーよな?



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最終更新:2011年06月04日 11:02