527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/09(土) 23:49:14.11 ID:iF7UsAsd0

SS『妹姫』




「ふひ、ふひひひひっ!あ、あやかちゃんのぱんつはぁはぁ」

今日も隣の部屋から不審な音が聞こえてくる。
親が居ないからって全開すぎねーか?
つか、いつもお前のエロボイス聞かされてる俺の身にもなってみろよ………

………そういや俺がエロ本使ってる時って………
そ、そんなわけないよな、あいつの声がでか過ぎるだけだっつーの!

「ふぉぉぉぉぉっ!?あ、あやかちゃんっ!綺麗だよぉ………」

………………………………
な、何を見てやがるんだ………?
いや、想像すんな、想像すんなよっ、俺っ!
だ、だから!あられもない姿になってんのは『あやか』であって桐乃じゃないっての!
こ、これも、あいつがエロボイス垂れ流しなのがまずいんだよ!

「あやかちゃん、あやかちゃん、妹になってよぉ!」
「いくらなんでもうるさすぎだろっ!」
「なっ!?………あ、あんた、盗聴してたの!?」
「と、盗聴じゃねーよ!普通にうるせーんだよっ!」
「あんたっ、そこを動かないでよ」
「ん?」

ドタドタ………ガチャッ

いきなり俺の部屋の扉が開け放たれ、何故か赤い顔の桐乃が姿を見せる。

「あ、あんたっ!や、やっぱり!?」
「ご、誤解だっ!」

ちなみに俺の状態はといえば、桐乃に文句を言うため、
桐乃の部屋との仕切りの壁に張り付いている状態だったりするわけだ、ハハッ………
俺は天を仰ぎ見て、自分の取り返しのつかない過ちを後悔した。

違うんだよ!さっきまでちゃんと勉強して、机に向かってたんだよ!

ど、どちらにしてもやべぇ、殺される。
俺は身の危険を感じつつも、桐乃に向き直ると……

予想に反して、桐乃は体をモジモジとさせて(なんだ、この可愛い生物は!?)
まるで恥らうかのような視線を向けてきた。

「も、もうっ、ほんとにシスコンなんだから………」
「ちょ、ちょっと待て。」
「あたしの声、そんなに聞いていたかったんだ」
「いや、その、つまり………」

やばい、この流れは何故か分からんがやば過ぎる気がする。

「それはともかく!さ、さっきまで何をプレイしてたんだ?」
「えっ?」

桐乃は一瞬急に顔を曇らせ、逡巡する様を見せた。
だが、それも一瞬のことで、ごく普通に楽しそうな表情が取って代わった。
俺は心にチクリと何かが刺さるような感じを受けたんだが………
最悪の想像から逃れられた点については安堵していた。

「前さ、あんたに貸したラブタッチってゲームあったじゃん?」
「ああ、あのゲームか………」

知らない人のために補足しておこう。
ラブタッチとは、女の子と仲良くするタイプの携帯ゲームで、
ゲーム中の女の子と会話したりできるのが魅力だ。

何より、俺にとって重要なのは、
ゲームの女の子に桐乃を奪われたと勘違いしたあやせたんが、
俺に相談をしに来てくれたことだろう!
あれがあやせたんの『相談』のはじまりだったな………

「でさぁ、これは前代未聞の事なんだけどさっ!
 携帯ゲームがパソコンに移植されて、しかも18禁版になってくれたのっ!」

せっかく俺があま〜い過去の追憶に浸っていたというのに、この妹様は………

「そのうえ、キャラ設定も改変されて、全員妹になってくれたのっ!」
「む、無茶苦茶だな?」
「は?何か言った?」
「いえ、何でもありません!」

妹ゲーへのツッコミは野暮だったな。
つか、ゲームメーカー何考えてんだ?
妹しかいねーとか、どんだけコアなターゲット狙ってんだよ?

「それにねっ、キャラクターも追加されて、全部で12人になったの!
 その妹達がまた、全員呼び方を変えてくれるのがいいんだ〜
 『お兄さん』でしょ?『お兄ちゃん』って無難なのもあるし〜『兄さん』とかぁ
 『兄上氏』って変なのもあるよね〜」
「そ、そうか、よかったじゃねーか」

あぶねえ、また無駄に突っ込んじまう所だったぜ。

「まず、この子。前から出てるあやかちゃんでしょ」

桐乃はゲーム機を取り出し、俺の目の前に突きつけてきた。

「ああ、なんかあやせに似てる子な」
「あやせに?うーん、そう言われればそうかもしれないけど………
 似てる所っていえば、黒髪ロングで目が同じ藤色で、基本的には清純派だけど、
 お兄さんの事が好き過ぎて、少しヤンデレっぽい所くらいかな?」

おまえも、あやせをヤンデレと認識しつつあるんだな………

「それと、この子。真奈ちゃん!眼鏡っ娘で天然なのも可愛いよね!
 英語をうまく喋れなくて棒読みになるところとか〜
 家事万能で性格も優しいって、萌えポイント突いてくるよね〜」
「………麻奈実に似てねーか?」
「あんた目が悪いんじゃない?全然地味じゃないし」
「だから地味子ってのはやめろと」
「この子はカナミちゃん。ロリツインテって神の組み合わせだよね!
 口はちょっと悪いけどさぁ、実はモデルもやってるちょう天才!
 ちっこいけど男気があって、他の妹たちがピンチなら助けてあげようとしてくれるし!」

聞いてねー………つか、これも加奈子に似てねーか?
なんか、俺、すげー嫌な予感がしてきたぜ?

「この子、ルリちゃん。黒髪ロングもいいよね〜。
 あ、それにこの子自身にも二人の妹がいて、それがまためちゃくちゃ可愛いの!
 それに〜、実はこの三人の正体は〜って、これは秘密なんだっけ?」
「よ、よくわかった。よく分かったから、この辺で終わりにしてくれ。」
「まだ半分しか言ってないじゃん?」
「プレイしての楽しみもあったほうがいいだろ?」
「そっか。そういう考えもあるよね!」

とりあえず納得してくれたらしい。
………それにしたってよ?

「ちょっと疑問なんだが」
「何よ?」
「おまえ、友達に似てるキャラ………攻略してるんだよな?」
「は?何言ってんのあんた。」
「ちょっと想像してみろよ、例えばあやせがおまえの妹で、それを攻略―――」
「何それっ!あ、ああ、あんたっ………!」

や、やべぇ!?選択肢ミスったか!?

「あんた!実は天才なんじゃないっ!?」
「………おまえ、本当は馬鹿だろ?」
「妹………あやせや黒いのや加奈子を妹に………」
「聞いてねえ………」

桐乃は、これまで見たことのないような必死な表情で考え込んでいる。
おまえ、絶対に本気を出す所間違ってるぜ?
まあ、それでもそういった表情は魅力的な………
いや、他のやつだったら魅力的に感じるかもな。

「よし、決めた。」
「な、何をだよ」
「あたし、12人の妹を作る!」
「………………………………」
「あやせでしょ、加奈子に〜、ランちんもいいなぁ。黒いのも妹セットなら美味しいしぃ」
「ところで、俺には13人の妹が出来ることになるわけか?」
「………アニメ版なんて、無かったんだから!」

何を言い出すんだよ、こいつは。

「そもそも、どうやって妹になってもらうんだよ?」
「お父さんの養子になってもらう?」
「無茶言うな!あの堅物親父がそんな事を認めるわけねーだろ?」
「そっかぁ………」
「それに、おまえより年上なら姉だぞ?」
「姉かぁ………」

そういや、姉モノってこいつ持ってないよな?
眼鏡かけたきつめのお姉さんキャラって、俺には結構ツボな所があんのになー

「そういや桐乃。俺が誰かと結婚したなら、そいつはおまえの姉になるぜ?」
「だ、だめっ!」
「な、なんだよ急に。」
「だっ、だからそのっ………い、妹じゃないとダメなのっ!」

そうか、こいつはどこまでも『妹』じゃねーとダメなのな。
それにしたって、これじゃどうしようもねーよな?

ピンポーン―――ん?





「おじゃまします。お兄さん」

突然の来訪者は、ラブリーマイエンジェル、あやせたんだった!
タイミングがいいのか悪いのか。

「それにしても、桐乃と一緒だなんて珍しいですね?」
「ああ、まあな」
「ちょ、ちょっとね」

その瞬間、あやせの目から光が消え、急に部屋の温度が下がり始める。

「お兄さん。一体桐乃に何をしたんですか?」
「待て、何を勘違いしているのか分からないが、俺は何もしてねーぞ!?」
「桐乃が答えに詰まるような事をしてたんですね?」
「あやせっ、ち、違うよ。あ、あたし、女の子が欲しいなって話してただけで!」
「なっ、桐乃っ、何言ってやがる!?」

桐乃。『ゲームの中の』って言葉を省くと大変な勘違いを………
って、あ、あやせの後ろにどす黒いオーラがっ!?

「お兄さん」

あやせは背中のオーラと裏腹に、とても可愛らしく天使のような表情で話しかけてくる。
そうだったんだな。俺を天国に連れて行くから、天使だったんだな!
ふ、普通に怒ってるのの数万倍こえーよ!

「今日は運が良かったですね。私、ナイフも包丁も鋸も持ってきていないんです。」
「ふ、普段持ってんの!?」

可哀想に、桐乃は部屋の片隅でガタガタ震えてしまっている。
お、俺がなんとかするしかないのか!?

「今日は………加奈子から取り上げたライターしかないんです………
 火炙りにしましょうか?それとも………?」
「げ、ゲームだよっ!」
「この期に及んでゲームの話ですか?」
「だ、だから、桐乃が欲しいのは、ゲームの中の女の子だって!」

あやせのオーラは雲散霧消して、ようやく部屋が温かみを取り戻す。
あやせ自身もぽかんとした表情で、とりあえず今回も助かった事を知った。

「なあ、あやせ、おまえからも言ってやってくれよ。
 ゲームの中の女の子は手に入らないんだってな。」
「え、ええ、わ、わかりました。」

メルルの抱き枕を抱きかかえて、うずくまってる桐乃は、
何故か妙に可愛らしく、抱きしめてやりたいような気分になってしまった。

あやせも同じような気持ちのようで、手をわきわきさせながら桐乃に近寄っていく。
つーか、あやせたん?それじゃおまえもエロオヤジの仲間入りだぜ?

「桐乃〜、ちょっとお話しようか〜?」
「う、うん?」
「お兄さんの言うとおり、ゲームの中の女の子が欲しいって本当?」

俺って信用ねーのな。

「う、うん。半分は………」
「それじゃ、残りは?」
「え、えーと………ゲームに出てくるキャラクターにあやかって子がいるんだけどぉ」
「あ、あやかって………ま、まさかラブタッチ………?」
「えっ!?あやせ知ってるの!?」
「え、ええ、一応」

ゲーム内のキャラクターになりきる特訓までしたもんな!

「なんだー、それならそうと言ってくれればいいのに〜」
「で、でもっ、あのゲームは」
「あやかって、あやせにちょう似てるじゃん?
 だから、あたしもあやせみたいな妹が欲しいな〜って話してたの!」

普通、本人を前にして言うか?

「桐乃………あたしが妹じゃ、だめ………かな?」
「って、あやせたん何言ってんだよ!?」
「うるさい、兄貴は黙ってて。つか、ホントに妹になってくれるの!?」
「うん………桐乃がお姉さんだなんて、私、嬉しくて涙がでちゃう………」
「あ、あやせ………」

おいおい、いいのか?いいのか?
それ以前にどうやって姉妹になるんだよ?

「そ、それじゃ、桐乃っ、ロザリオを………ください」
「………………………へっ?」

………これは、あれか。
桐乃を理解するため、と思って買ったアイテムが、明後日の方向だったわけだな?

「えっ?き、桐乃と姉妹になるって言うから、姉妹の契りを………?」
「姉妹の契りって………何だっけ?」
「おまえは見てねーかもしれないが、マリみての姉妹制度だろ?」
「もしかして、私はとんでもない勘違いを………」
「あたしの言ってるのは、マジの妹の事。」

もうやだ、オタク脳ってなんでこうなんだよ。
つか、俺のあやせたんまでオタク化するなんて、この世には神も仏もねえってのかよ!?
あの純真で穢れない俺の天使を返してくれよぉ………

「それじゃあ、桐乃の本当の妹になってもいいの!?」
「う、うん。あたしはあやせが妹になってくれると嬉しいよ!」
「二人とも落ち着け、第一どうやって妹になるってんだよ?」
「そ、それは………」
「あやせがうちの養子になれば簡単じゃん?」

こいつ、まだその考えを捨ててなかったのかよ?

「そんなに簡単にいくものかよ………」
「そ、それに桐乃。誕生日、私のほうが先だから………」
「それじゃ、このままじゃあやせがお姉ちゃんになっちゃう?」
「う、うん。」
「ほれ見ろ。そんなに簡単に妹を増やせたら、エロゲーライターだって苦労しねーよ。」
「あんた、さっきからずっと否定することばっかじゃん?
 ちょっとは方法を考えて見なさいよ。」

俺が何も得しねーのにか!?
いや、あやせたんが俺の妹か………
ちょっとは考えてもいいかもしれねーが、でもなぁ?

「いや、だって、ぜってー無理だろ?
 そもそも、年齢が上で妹ってのがあるわけねー………いや、一応あるか。」
「な、何っ!?」

うおっ!?すげー食いつき?
だけどよ、これ考えてるとなんか気分が悪くなるんだよな………

「いや、例えばおまえが結婚したとしてだ、
 その相手の妹は、年上であってもおまえを『お義姉さん』って呼ばねーか?」

クソッ、なんでこんなに胸くそわりーんだよ………

「つまりだ、あやせに兄貴がいたとして、おまえがその相手と………
 いや、俺はぜってー認めねーからな!」
「なに興奮してんのよ、あんた。」
「そ、そうです。それに、私にはお兄さんはいませんし………」
「そうか、それならよかった」

あれ?何で俺、安心してんだ?

「でも、それで良いなら簡単じゃん?」
「おまえ、今、あやせに兄貴はいねーって聞いたばかりだろ?」
「要は、あやせに兄貴が居れば良くって、そいつとあたしが結婚すればいいんでしょ?」
「無茶苦茶いってんじゃねーよ!」

なんだよ、おまえそんなに結婚してーってのかよ!
ああそうかよ!そんなに俺と離れてーっていうのかよっ!

「つまりぃ、あやせがうちの養子になって、あんたの妹になった後、
 あたしがあんたと結婚すれば、あやせはあたしの妹になってくれるんだ!」
「………………………はい?」

俺と桐乃が結婚?
あーそっか、その手があったか、それなら俺も桐乃と一緒でいられ………
待て!?俺っ!?何を考えてやがる!?

「き、桐乃!?」
「しょ、しょうがないじゃん!
 べ、べつにあたしだってこいつと結婚なんてゴメンだけどっ、
 あやせが妹になってくれるんだったら、少しくらい我慢できるしっ!」
「待て、その話は何かおかしいぞ!?」
「あ、あやせだって、こんなやつと結婚したくないでしょ!?」
「うん!私、こんな変態お兄さんと結婚してまで桐乃の妹にはなれないです。」
「だ、だからっ、その話は論理的にだな!?」
「あんた、あたしと結婚するの?しないの!?」
「お兄さん。もし、断ろうものなら………わかってますよね?」
「なんで、こうなっちまうんだよぉぉぉぉ!?」





結局、この後散々桐乃とあやせに脅されて(嬉しくなんかねーぞ!?)
桐乃との結婚を承諾させられてしまった。
その後も、桐乃は妹候補を丸め込み、なんと12人もの妹を作る事に成功する。

………親父がどうして許可したのか、
それ以前に相手の親はどうしたのか激しく疑問点は残るんだが………
そういや、あやせはずっと桐乃と行動してたが………関係あんのか?

ともかく、俺たちはめでたく結婚。(これだって何故できたのか疑問だ)
桐乃との間に12人もの子供が生まれ、妹たちと一緒に子供の世話や仕事と、
忙しくも楽しい毎日を送っている。

「桐乃、俺は今でもたまに疑問に思うんだが………」
「何よ」
「あの時、妹を作りたいってのがお前の本音だったのか?
 それとも、俺と結婚するための口実だったのか?」
「それは、ないしょ!」
「ざ、ざんねんだなぁ………」
「でも、分かってるんでしょ、本当は?」
「そうだな。お前は昔からそうだったものな」

庭で戯れる子供達を見つめながら、桐乃は俺の肩に体を預けてくる。
その姿を見て、俺はこう思わずにはいられないのさ

俺の妹がこんなに可愛いわけがない

ってね。



End.



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最終更新:2011年04月10日 01:39