553 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 01:55:01.65 ID:8Qui08wG0 [1/10]
「ふいー……寒い寒い……ただいまー」
白い息を吐きながら帰宅した俺は、おかえりの声を待つ時間さえ惜しんで階段を上がる。
廊下もキンとした寒さに支配される今、俺が目指す場所はただ1つ。
俺の部屋である。
ふふふ。そう、何を隠そう、俺の部屋には今!冬と戦うための最終兵器があるのだ!
そいつを俺の部屋に導入するためにはいくつもの障害を乗り越える必要があったが……俺は成し遂げた。
これにかかれば、震えて過ごさにゃならない我が部屋の拷問生活ともおさらばだ。途端に極楽の世界へと進化を遂げる。
対寒波様絶対防御要塞「こたつ」。
一刻でも早く潜り込むため、俺は階段を駆け上がる。
大きくドアを開けた部屋の中、こたつは部屋の中央に鎮座して、俺を待っていてくれた。
帰宅途中には桐乃のやつが自分の部屋に持って行ってやしないかと気を揉んだが、どうやら取り越し苦労だったようだ。
さて、早速こたつ様の恩恵に与ると致しますか!
って、ありゃ?
こたつの奥側……見慣れた茶髪が目に入った。
入った瞬間には気がつかなかったが、桐乃がこたつに入って寝ているのだ。
なーるほどね。自分の部屋にこたつが無いなら、俺の部屋のこたつで寝ればいいじゃない……ってか。
なんとも桐乃らしい。自分がこたつを利用するのは決定済みって考え方だ。
まあいいさ。これは半分覚悟の上。こたつが俺の部屋にあり、それをいつでも使える状況にあるってことに意味があるのさ。
その極楽の価値と比べれば、妹と足をぶつけあうくらい大した問題じゃない。
554 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 01:56:04.52 ID:8Qui08wG0 [2/10]
「おーい、桐乃。こたつで寝ると風邪引くぞ?」
よほど熟睡しているのか、俺が入ってきたことにすら気付いていないようだ。
ったく、肩までこたつ布団の中に入り込んで……熱くねぇのか?
スイッチ入ってるんだろうな?
俺は手前のこたつ布団を捲り、中を覗き込む。
「―――ぶっ!!!」
一瞬で布団を戻す。
……中を覗き込んだ俺の視界に飛び込んできたもの……それは、スイッチが入っていることを示す赤い光、と。
白い足の付根に覗く、薄桃色の……布。
どあああああああああああああああああ何つーモノを見てしまったんだ!俺!俺の馬鹿野郎!
よりによって、妹の寝ている隙にスカートの中を覗き込むようなマネ……いや、見たくて見たんじゃない!違う、あれは事故なんだ!
そう、事故だ!それに、よーく考えてみれば、ほんの一瞬見ただけだから、あれが本当に……ぱ、ぱんつなのかは分からない……わけだし。
いや、分からない分からない。あれはきっとぱんつなんかじゃない。そ、そうだよ!きっとスカートを勘違いしちまっただけだ!
「そ、そうだ、俺は見ていない、見ていない。あれはきっと違うものなんだ……」
声に出してよぉく自分に言い聞かす。
おお、流石は俺の説得力。段々と自分の見たものがぱんつじゃないと思えてきたぞ。いや、思えてきて当然だ。だってぱんつじゃないのだから。
しかし待てよ。あれがぱんつじゃなかったとしたら一体全体なんだと言うのだろう。
そうだ、自分の責任をしっかりと意識するためにも、見てしまったものが一体何であったかは確認するべきなんじゃないか?
ぱんつじゃないのであれば、もう一度……もう一度しっかりと眺めたところで、なんら問題は無い筈だ。
そう!何の問題もない。妹のスカートを「お、良い色のスカートじゃないか」と眺めたところで、それは全く悪いことではないからだ。
その結論に大変満足した俺は、自分自身の責任を今一度確認するために、そう、そのために、布団を捲りあげる。
555 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 01:57:17.34 ID:8Qui08wG0 [3/10]
結論、ぱんつでした。
隊長!淡い桃色の布生地は、紛れもなくぱんつであったことをここにご報告申し上げます!
それも、ただのぱんつではありません!愛しい愛しい桐乃が現在進行形で着用している、マニアには堪らない逸品であったことも併記しなければなりません!
恐らくはこたつの中で、もぞもぞと動いたからでしょう。スカートが半分ほど捲れ上がり、「チラリズム」の様相を呈している事は特記に値します!
それも、横向きに……お尻、いや、臀部を突き出すかのような扇情的なポーズで眠っているため、丁度モモがごときお尻の形に歪められたその布に、興奮を禁じえない!
隊長!申し訳ありません!このシスコンには、この興奮を言葉で言い表すことなど出来ません!!
くっ……!これは邪教の類でしょうか?下ろすべき……下ろさなければならない布団を掴むこの右手が、動きません!
これ以上、桐乃のあられもない姿を見ているわけにはいかない、いかないのにぃぃぃぃぃぃ!!
な、ななななな何やってるの兄貴の奴……!
ちょっと寝た振りで驚かしてやろうと思ったら……マジ?マジなの?信じらんない……もしかしてあたしのパンツ、覗いてる……?
うっそ……何この突き抜けすぎて変態の域を大きく逸脱して宇宙レベルにまで開拓されちゃった超ド級のシスコン兄貴!
最初の1回なら不可抗力で許してやろうと思ってたけど、な、なに改めて検閲してんの!?あたしのあたしの兄はパンツ検閲官?キモイキモイキモイキモイ!!
何?そんなに可愛い妹のパンツ見たいわけ?そんなじーっと舐める様に見ちゃって……キモ過ぎ!キモ過ぎて身体が熱くなってきちゃったよぉ。
あ、あたし、今日どんなパンツ履いてたっけ?よ、汚れてないよね、まだあの日じゃないし、うん、大丈夫。
それにしてもいつまで見てるの兄貴……。変態だよ。変態変態!だめだめ、兄貴の視線に舐められてると思うと、キモ過ぎて腰のあたりがうずうずしちゃう……。
ふぁあああ兄貴ぃ!おかしくなっちゃう!か、身体が動いちゃうよぉ……!
な、なんだ?桐乃の腰のあたりが、もじもじと動き始めた。
や、ヤバい!!もしかして起きようとしてるのか!?こんな状態で桐乃に目を覚まされたら、いつもの変態扱いなんかじゃ済まない。
下手すればオヤジやオフクロに報告されて、家族会議に発展か!?いや、その前にオヤジに半殺しにされちまう!
お、下ろせ!名残惜しいとは思うが、この腕を下ろすんだ……俺!
557 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 01:58:25.76 ID:8Qui08wG0 [4/10]
いや……なんだか様子がおかしい。
いつまでももじもじと動いていて、一向に起きる気配が無い……。それに、寝がえりともちょっと違う様に見える。
そう、冷静に考えるなら……
『既に起きていて、ぱんつを見られていることを恥ずかしがっている』かのような……。
ここで、俺に衝撃走る。
ま、まさかまさか……桐乃のやつ、起きている……?
起きていて、俺にぱんつを見られていることを知ってなお……それを受け入れているとでもいうのか。
桐乃は俺にぱんつを見られながら、恥ずかしそうに腰をもじもじさせて、もっと見てくださいと誘っているとでもいうのかぁ!
ま、待て待て。これ以上はダメだぞ。まさにこれ以上というのは、今まで俺が散々我慢し続けてきた『兄妹の一線』の問題だ!
だ……だが、桐乃は起き出そうとしない。声をあげようともしないし、スカートを直そうともしない。
これはもしかして……決断の時なんじゃないだろうか。お互いに曖昧にし続けていたこの関係に終止符を打つ、その時なんじゃないだろうか。
分かった、分かったぞ桐乃……。
「桐乃、いくぞ……」
あ、兄貴?行くって?行くってどこに行くの?どこにイっちゃうの兄貴!?
起きてるの気付かれた!?ヤバいヤバいヤバい!これじゃあまるであたしが許してたみたいじゃない!
違うの違うの!こたつに入らせてもらってるお礼に、ちょっとだけなら見せてやろうかなって思ったの!見てもいいとか、ましてや見て欲しいなんてこれっぽっちも……!
って、うっそぉぉぉぉぉ兄貴、なんでこたつの中に頭突っ込んでるの!?寝た振りしてるから見えないけど、絶対、絶対入ってきてる!
変態じゃん、兄貴今世紀最大の変態じゃん!やだやだ、兄貴の息が足にかかってるよぉ。に、匂いとかかがれちゃう?あたし堪能されちゃうの兄貴に!?
あ、嘘……大胆すぎるよ。足に触れてる?妹に興奮した汗付きのキモイ手の平で、あたしの足に触ってるよ。やだ、声が出ちゃう、ヤバいヤバいヤバいぃ!
あ、あああああああ!手の平が段々上にのぼってくる!あうあうあう。超えちゃう……一線、超えちゃうよぉぉぉぉぉぉぉ!
558 名前:【SS】fin[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 01:59:54.25 ID:8Qui08wG0 [5/10]
「桐乃!京介!ご飯だから降りてらっしゃーい!」
その声と同時に、あたしは飛び起きる。
「あ、あーあ!!良く寝た!ご飯食べにいこーっと!」
あたしは敢えて大声で宣言し、猛ダッシュで部屋を出た。
桐乃が猛ダッシュで部屋を出た後、俺はゆっくりとこたつから這い出した。
「あ、」
あぶなかったぁぁぁぁぁぁぁぁ!
危うく、言葉での確認もせずに一線を越えてしまうところだった。
「……こたつは、やはり危険だ」
俺は、こたつを桐乃に譲り渡すことを決意した。
終わり
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最終更新:2011年04月12日 20:48