573 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 02:58:00.56 ID:L9sy0VpB0 [1/6]
「おーい、高坂ー」
その声に振り向いた俺は、駅の人混みの中に声の主を見付けた。赤城だ。
「わりい、出るのに手間取っちまって」
遅刻したのを詫びて、赤城に紹介すべく、俺の後ろではにかんでいる妹を、隣に並ばせた。
ちなみに、赤城のとなりには、こいつの妹で腐女子の瀬菜もいる。
「紹介するぜ、俺の彼女の桐乃だ」
「ちょっ!」
躊躇なしのひじ打ちが、俺の脇腹に刺さった。
「イッテ、なにすんだよ」
「なにすんだじゃないわよ、あ、あんた、なな、なに言ってんのよ」
桐乃は顔を紅潮させながら、俺を上目遣いで睨みつけた。
桐乃と恋人となってから、二ヶ月ほど立つが、最近はこんなかんじで、こいつの事をからかえるほどになった。
付き合い始めの頃は、ひどかったんだぜ。
話すことはおろか、目を合わすのもままならず、飯もろくに食えたもんじゃなかった。
親父とお袋の怪訝そうな顔ったらなかったぜ。
「わりいわりい、でもまちがっちゃいねーだろ?」
半ば無視しつつ、桐乃は赤城達に向き直るや、
「はじまして、妹の高坂 桐乃です、......えーと、あ、兄貴とは......」
「多少は聞いてるから、大丈夫だよ、はじめまして、桐乃ちゃん」
憎たらしいほどに白い歯を光らせ、赤城が言った。
つーかキャラ変わってるし、桐乃ちゃんってなんだよ、ちゃんって。
この変態エロ兄貴、瀬菜だけじゃ飽き足らず、桐乃までちゃん付で呼びやがった。
いやむしろこれが、本来のキャラなのか、
赤城の友好的な態度に、はずかしそうに俯く桐乃だったが、
「桐乃ちゃんおはよう」
瀬菜が声を掛けた、
「せなちーおはよー」
桐乃は赤城とは初対面だが、瀬菜とは以前からの友達だ。
初顔合わせは、黒猫や沙織と行ったコミケだったな。
そして、今日俺達が向かう先もコミケだ。
なんでこのメンツかって?
もともとは夏のとき同様、いつもの四人でサークル参加をするつもりだったが、黒猫が瀬菜を誘ったのだ、
まあ、いらぬオマケもついてきちまったけどな。これで今日の瀬菜フラグはなくなったな。
で、当の黒猫は、沙織と別件で用事が有るらしく、先に行っててとのことだった。
詳しくは教えてくれなかったが......。
で、このダブルデートの様な形になったわけだ。
578 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 04:04:59.35 ID:L9sy0VpB0 [2/6]
まあ、俺達と違って、赤城と瀬菜は付き合ってるわけじゃないが、相思相愛ってとこは同じ様なもんだろ。
なんか今すごい事言った気がするが、まあいい。
ちょうどよく四人掛けのボックスシートが空いていたので、俺の隣に桐乃、向かいに赤城兄妹が腰を降ろした。
「しっかしまあ、お前がここまでシスコンだったとはなあ、いや、それ以上か、うらやましいやつめ」
なにを言い出すかと思えば、実の妹を前にそんな事言うかね普通。
その実の妹を彼女にした俺には言えないかもしれないが、
いや、それでもこいつにだけは、シスコン呼ばわりされたくないね。
「ま、まあな」
照れ臭いがそう答えた。俺の顔はたぶん赤いのだろうな、顔が熱くてしょうがない。
「そんなにうらやましかったら、お前も付き合えばいいじゃねーか、お互い好き合ってんだし」
「なっ!? なに言ってるんですか、高坂先輩! き、兄妹で付き合うとか、そ、そんな簡単な事じゃないんですよ!」
顔を真っ赤にしながら瀬菜が勢いよく立ち上がった。バカ、声でけーよ、あと胸も。
てか否定しねーのな。
「だよねえ うちも色々と大変でさあ」
それまで俺に寄り添ってもじもじしてた桐乃が言った。
「両親とかは、どうなんですか?」
「賛成ではないみたい、まあ兄妹の一線を超えないって事を条件で、一応あたしが大人になるまでは口出ししないって事で、今の所はおさまってるかな」
そう。こいつが大人になるまで、......その時までにお互いの気持ちが変わらなかったなら、また家族で話そうって事になっている。
親父は、正直うやむやになっちまったので、正確には、その約束はお袋と俺達の三人で交わされたものだ、
「兄妹の一線って?」
興味津々だなコイツ。
「キ、キスとか、あと......それ以上かな、」
「かわいそう、辛いね、 その分高坂先輩が支えてあげなきゃダメですよ!」
桐乃と話していたかと思うと、急に俺に振ってきた瀬菜。
「えっ?あ、ああ、もちろんだ」
びっくりしたな、急に振るなよ。ついテキトーに答えちまったぜ。まあ、ばれてないらしいが、
「なに今のテキトーな返事は」
ばれてました、
「い、いやテキトーじゃねえよ、急に振られたから少し慌てただけだ」
「ふーん......」
視線が痛いなあ、つーか支えるも何もお前家じゃ、割とオープンに俺にいちゃついてくるじゃねーか。
579 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 04:09:05.98 ID:L9sy0VpB0 [3/6]
そんな感じの事を言うと。
「そうだけど、それとは別なの」
「別?」
「......そういう事とか、ちょっとは、その、......してみたいし」
うわ、なんだこいつもじもじして、
「そういう事って?」
聞いちゃいけなかったらしい、桐乃のやつ、すごい剣幕になったかと思いきや、強烈な平手が飛んできた。
「いってえ! なにすんだよ」
「人前で変な事聞くからでしょ!」
言い出したのお前じゃん、悪いの俺なの?
「今のはまずいぞ、高坂」
うお、居たのかこいつ、忘れてたぜ。
「親友を忘れんなよ」
「あれ? 声出てた?」
「バッチリな」
こいつしばらく存在感なかったけど、なにしてたんだ?まあ、どうでもいいが。
「要するにだ、桐乃ちゃんはお前ともっと恋人らしい事が、したいって事だ」
なるほど。
隣で俺の腕に手を回して寄り添っている桐乃を見ながら、
「これ、恋人っぽい事してないか?」
聞いた三人が同時に、飽きれ顏になった。
「あはは、こいつたぶんストレートに言わないとわかんないので」
呆れ顔の桐乃が言った。
ストレート?どういう事だ?
「なあ高坂、おまえそうゆう事考えたりしねーの? 俺は瀬菜ちゃんとHしたいって思うけどなあ」
「そう言われてもなあ、............ああ!? な、な、な何言っちゃってんのお前!」
「え? あ......つい本音が」
580 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/10(日) 04:10:35.71 ID:L9sy0VpB0 [4/6]
そうゆう事って、そうゆう事かよ!そりゃあ俺だって少しは。
桐乃と目が合った、ふんと鼻を鳴らしてそっぽをむいてしまった。
最近、こいつのこういう仕草がたまらなく可愛く感じるなあ。いや最近でもないか、
「こ、高坂」
あ、忘れてたこいつとんでもない事口走って、今、窮地に立たされてたんだっけ。
俺と赤城は恐る恐る瀬菜を見やった。
............あれ?
なにこの反応。
怒るでもなく、恥ずかしさに顔を赤らめるでもなく、いや、赤いは赤いが、なんかうっとりしてやがる。てかどこ見てんの?
瀬菜はうっとりとした表情で宙を仰いでいた。
「せ、せなち?」
桐乃の声に我に還ったらしい瀬菜は、雑念を払うかの如くかぶりをふった。
「だ、大丈夫か? な、なに考えてたんだ」
まさかこいつ、兄貴とそういう事する妄想でもしてたのか?
「いやあ、おはずかしながらまた妄想してしまって」
てへっと舌を出す瀬菜は、超かわいいぜ。
って、やっぱりそうなのかよ!
「え、怒らないの?」
ビビりながら赤城が聞いた。
「怒るもなにも、もう最高! 一生脳内保管して妄想しちゃう」
この兄妹も頭ぶっとんでんな。
「ああ、思い出しただけでもゾクゾクしちゃう、高坂先輩とお兄ちゃんがHするなんて」
「......え?」
「な、なんでそうなるのかなあ?」
困惑した赤城が訪ねると、
「だってお兄ちゃん言ったじゃない、 なあ高坂、おまえとHしたいって思うけどなあ って」
は?いやいやいや、え?
こいつが筋金入りの腐女子だって事忘れてたぜ。それにしたって都合良すぎるだろ、お前の頭と耳。
「一生脳内保管して妄想しちゃう」
トラウマだなこりゃあ。
ショックのあまりその後の記憶はない。
END
-------------
最終更新:2011年04月11日 13:57