47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 21:53:01.06 ID:1c6VWUb/0 [3/4]
SS『婚姻届』
「お兄さんっ!」
「なんだよ、いきなりどうしたんだよ?」
学校からの帰り道、俺はいきなりあやせに呼び止められた。
つか、なんか怒ってねーか?
「お兄さん、あれは嘘じゃありませんよね?」
「な、何の話だよ!?」
「前に、わたしと結婚したいって言ったことですっ!」
「なっ―――!?」
ま、まて!?
あやせたん?あれ、いくらなんでも冗談だって分かってるよね………?
い、いや、あの当時は確かにいいかもなーとか思ってたけど。
でも、あれは相当に昔の事じゃねーか!
「わたし、よく考えてみたら、お兄さんの事いいかもって思っちゃいました。」
「ま、マジかよ!?」
「だから、この書類に名前を書いてもらいます」
そういうと、あやせは俺の前に『婚姻届』と書かれた紙を出してくる。
あ、あやせたん、本気と書いてマジっすか!?
「勿論、書かなかったらどういうことになるか分かってますよね?」
「ど、どうなるんだろうな………?」
「汚物は消毒(ボソ」
「ちょ、ちょっと待ったーーーっ!書いてくるっ!書いてくるからっ!」
「………それなら、とりあえずこの場は見逃してあげますね♪」
そういうあやせたんの顔は、これまでで、最も輝いていた………
それにしても、もう結婚するハメになるとはな………そういや―――
「これ、まだ白紙だよな?おまえはどうすんの?」
「えっ!?」
そこではじめてあやせたんが動揺した顔をする。
「そっ、そんなの、お兄さんが書いたことを確認してからに決まってるじゃないですかっ!」
「そういうもんか?」
「そういうものですっ!」
俺は何か不自然なものを感じたんだが―――
まあ、ここで突っ込んで死んだら、元も子もねーもんな。
家に帰りつくと、何故か桐乃が玄関で待ち受けていた。
「おかえり………あ、あんた、何か妙な顔してない?」
「ただいま………よくわかるな………」
最近、俺と桐乃の関係は3年前とは比べ物にならないくらい良好で、
彼氏彼女の関係って言っても過言じゃない。
でも、俺たち兄妹なんだもんなー
「実はな………あやせに結婚しろって脅迫されたんだよ、どうしたらいい?」
「ふ、ふーん。あやせ、ちゃんと………あ、結婚すればいいんじゃない?」
「なっ、何っ!?」
お、俺はおまえと本当は結婚してーとか考えてるのによっ!
いくら本当には結婚できねーからってひどくね!?
「あ、あんたも、あやせのこと可愛いとか思ってるでしょ?」
「そりゃ、可愛いかもしれねーがよ?」
「それにっ、書かなかったら殺されるんでしょ?」
「い、いくらなんでも冗談だとは思うんだが………」
「ううん。あの子は本気だから。あたし、兄貴もあやせも失いたくないし。
だから、ほらっ、さっさと自分の欄埋めるっ!」
「えっ、ええっ!?」
結局………何故か嬉々としている桐乃に圧されてしまって、
俺は婚姻届の自分の欄を埋めてしまった。
なんか、桐乃と別れたわけでもねーのに、すっげえ切ない気分だ………
次の日の朝、いきなり桐乃に叩き起こされた。
「あんた、さっさと起きなさいってば」
「ん………なんだよ?」
「婚姻届、出しに行こっ!」
桐乃は何故かハイテンションだ。
俺の心は対照的に、深い海の底に沈みこんでしまったようだ。
つかよ?おまえ、俺と別れることになるんだぜ?悲しくはねーのかよ………
俺たちは朝イチで区役所へと出向いた。
「というかよ?今ようやく気がついたが、
こういうのって本人が行くもんじゃねーの?」
「ん?あー、あやせ仕事で都合が悪いから、あたしが代理ね。」
「なるほど、代理人に任せてもいいのな。」
まったく、手抜かりのないやつらだぜ。
「そう。あ、婚姻届出しに来たんですけどー」
「婚姻届の提出ですねー………ってくんかたん!!」
何?何だって?くんかたん?誰だよそれは。
「おまえの知り合い?」
「えっ、あ、うん。あたしのファンみたいな感じ?」
「そうか、変なヤツじゃないんだったら、まあいいんだが………」
「兄貴嫉妬~♪こんなとこでもシスコンって、マジきもい~♪」
「う、うるさいっ!とにかくさっさと終わらせて帰るぞ。」
お、俺はこんなに悲しいってのによ、
おまえがそんなに楽しんでると、目から汁がでてきそうじゃねーか!
「えー、それでは、夫となる方は高坂京介さん、20歳。
身分証明書は………はい、おっけーですよ~」
えっ?これで終わり?なんか妙に軽くねーか?
「で、こちらはくんかたん。17歳。」
「ちょっ!?」
「何騒いでんのよ、恥ずかしいじゃない。」
いやいやいや。公的な機関でくんかたんはねーだろ!?
「で、こちらがご本人の書類ですね~、確認しました~」
いや、殆ど流してみただけじゃねーか?いいの?いいのかよ?
つか、俺が確認する暇もなかったじゃねーか?
「書類に不備は何もありません!それでは、受理しました。
これでお二人は晴れて夫婦ですねっ!お気をつけてお帰りください。」
「あ、はい。」
「やったね!兄貴っ!」
ん?何か、おかしくねーか、今の会話。
「あ、念のため、婚姻届改めて見せていただけますか」
「はい。いいですよ~」
俺は差し出された婚姻届を見て………
「お、俺と桐乃が夫婦だとっ!?」
「びっくりするじゃん?何大きな声だしてんの?」
「だ、だだ、だってこれっ!?あ、あやせたんはどうしたよっ!?」
「あ、お兄さん、桐乃ーおはようございます~♪」
ちょっ!?そして、何で区役所にあやせたんがいんだよ!?
仕事じゃねーのか!?
「桐乃っ!おめでとうっ!」
「うんっ!ありがと、あやせっ!」
狼狽する俺(殺されるかと思ったんだよ!)を余所に、
抱き合って喜ぶ桐乃とあやせ。
い、一体何だって………!!!ま、まさか………
「桐乃、あやせ。まさかと思うが………」
「ふふっ、お兄さん鈍すぎですよっ!
わたしがお兄さんと結婚したいなんて思うわけが無いじゃないですか。」
「ご、ごめんね兄貴。兄貴、すぐに悩んじゃうから………」
「た、確かにそうだが………」
つか、兄妹でなんで受理されんだ………?
「フフフ。この日のために、区役所内部を桐乃スレ住人で固めてたのですよ!
地道な公務員試験の勉強、そして、他の地方から無理矢理の異動!」
ばっ、バカ過ぎるっ、こいつら………
「お兄さん。受理されちゃったものは、もう取り消しが出来ないんですよ」
「兄貴………お、怒った………?」
こいつらも、まったく。馬鹿じゃねーの!
だけど………
「怒るわけないだろっ!
おまえと結婚出来るなんて、嬉しくって嬉しくって!」
「あ、兄貴………な、泣くことないじゃないっ!」
「うるせー!お、おまえだって………!」
俺が一番の馬鹿だもんな!馬鹿みてーに幸せだぜっ!
End.
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最終更新:2011年04月13日 01:17