18 名前:SS[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 20:28:16.77 ID:EnLLU+cY0 [1/3]
>>1乙!
ところで先日UPした8巻妄想物の続きを書いてたんだが、暫くスレに
来れないので断念する。
冒頭だけ残して消えるので、よかったら誰か続き書いてください。
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「―――――ふんっ!」
わき腹に突き刺さる肘鉄に「ぐふっ」とうめき声をあげてしまう。
下手人を睨みつけるが、阿修羅の表情を前に勝てる気がしない。
たまらず助けを求めるように視線をおくると、ぐるぐる眼鏡の女は「にかっ」と笑いかけた。
「なかなか面白い状況ですなぁ。 お手並み拝見させていただきますぞ~、京介氏!」
面白くないから!――だめだ、珍しくこいつはあてにならねぇ……。
ちらっと黒ずくめの少女を見ると、にやにやと笑みを浮かべていた。
ははは……おまえ、こうなるのわかっててやってんだろ。性格悪りぃなぁ……。
「ちょっとあんた! い、今なんて言った!?」
抗議の声に、「ああ、それを待っていたのよ」とばかりに妖艶に彼女が笑う。ぺろりと舌なめず
りをして、とても嬉しそうな笑顔を浮かべ、
「あら? 聞こえなかったのならもう一度言うけど――この私が、いったいいつ、この男のことを
諦めると言ったかしら?」
横から驚愕に息を呑む音が聞こえた後、俺はぎりぎりと首をしめられながら思った。
―――――――どうしてこうなった。
一見して修羅場のようなこの状況を説明するには、少し時間をさかのぼる必要がある。
電気街口を抜けて開けた場所に出ると、すでに見慣れた広場が出迎えてくれた。
休日の秋葉原は人通りが多く、相変わらずお祭りのような賑わいを見せている。
俺の名前は高坂京介。18歳の高校生だ。
今日は久しぶりに友人たちと集まれるということで、ここオタクの聖地・秋葉原までやってきた。
――それにしても、
「……あっちぃなぁ……」
9月も半ばを過ぎたというのに、疲れ知らずの太陽はまだまだ高く上り、容赦ない輝きを放ってい
る。時刻は12時を少し過ぎたところだった。
ふと、俺の右手がふわりと包まれる。
「……急にどうした?」
「……別に……」
俺の手をきゅっと握る美少女は、それだけ言ってそっぽを向いてしまった。
ライトブラウンに染めた髪。爪には艶やかなマニキュア。端正な顔を入念なメイクで磨き上げ、
スラリとした肢体に纏うのは誰が見てもお洒落だと感じる流行のファッション――そんな、今日の
陽光に負けないくらいの眩しい姿が、通りすがる人の視線を集めている。
高坂桐乃―――俺の妹だ。
21 名前:SS[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 20:29:22.98 ID:EnLLU+cY0 [2/3]
小さな手のひらは、ほんの少し汗をかいていて、心なしかちょっと熱い。その体温を通して、桐乃
の緊張が伝わってきた気がした。
「心配すんなって。 あいつのこと信じるって、言っただろ?」
「……わかってるわよ……」
不安そうにする妹が妙に可愛く見えて、開いた手で頭をぽんぽんと撫でてやる。
「ちょ、ちょっと! 子供あつかいやめてってば!」
イヤイヤと頭を振って俺の手から逃げてしまった。
「あいつらと会うのも久しぶりだろ? いつも通り楽しめばいいんだって」
「……そだけど~。 ……チッ。 なによ。 ずいぶん信頼してんじゃん」
「そんなの、当たり前だろ。 いまさら何言ってんだ」
「ハイハイ。 ど~せあたしは優しくないですよ~だ」
そう言って再び舌打ちをする桐乃。ちょっと前の俺なら、この原因不明の怒りの理由を考えようと
は思わなかっただろう。めんどくせぇ―――そう言って思考を放棄していたはずだ。いや、今でもめ
んどくさいという感想は変わらないのだが。
しかしまぁ事はそう難しくはない。直感的に『桐乃に似合わない』と思える選択肢を選べば、意外
にもそれが正解だったりするのだ。さて、この場合は――
「………………ああ、おまえ、もしかして妬いてんの?」
ギュ―っと手の甲を抓られる。いてててて!あれ、選択失敗!?
「ば、ばっかじゃないの!? 地味男のくせして、ちょーしのんな!」
「痛いから! 悪かったから!」
ぱっと両手が解放された。妹は腕を組んで仁王立ちし、横目で俺をじろりと睨みつける。
「……ったく、あんまキモいこと言ってるとマジぶっとばすかんね」
「へーへー」
「なにソレ。 あんた全然反省してなくない? 誠意足りてなくない?」
「ンだよ。 どーしろっつーんだ」
すっと、手のひらを上にして桐乃の手が差し出された。妹はそのまま「ん」とあごで何かを促す。
さて第2問だ。さっきは『桐乃に似合わない』理由を想定していたのが不味かった。では次は何を
手がかりにするか―――俺は妹の鋭い眼光からその望むところを察してやり、腰を直角に曲げて手の
ひらを重ねる。
「………反省しております」
「…………………………へ」
22 名前:SS[sage] 投稿日:2011/04/12(火) 20:30:14.92 ID:EnLLU+cY0 [3/3]
なんだよ。おまえが猿真似を要求してきたんじゃねーか。この俺がプライドを投げ打ってやったと
いうのに、桐乃は「ぽかん」と口を開けている。…………もしかして、また間違えただろうか。
しかしやはり次の瞬間妹は噴き出し、俺を指差して思いっきり嘲笑した。
「……ぷっ。 きゃははははははははは! ば、ばっっっかじゃあああぁぁぁん!?」
「ハハハ……」
渇いた息が漏れた。相変わらず俺の妹はとんでもなくムカつくやつだ。ひっぱたいてやりたい。
「……へっ、元気出たじゃねーか。 だったらホラ、さっさと行くぞ」
くるりと背中を向ける。やれやれとため息をついて歩き出すと、横からするっと細腕が絡みついて
きた。さらに手のひらの中に一回り小さな手の甲が押し付けられ、反射的に握ってしまう。まだ慣れ
ない柔らかな感触に驚くと、間近からぼそっと、
「――サンキュ。 元気、出たから」
「……そ、そりゃ……何よりだ……」
感謝の言葉が照れくさいのか、ちょっぴり顔が熱くなってしまう。横目で見る桐乃の顔も、ほんの
少し赤いように思った。
「お、おまえ、このまま待ち合わせ場所まで行く気かよ?」
「な、なによ。 イヤなの……?」
「や……その……こんな、見せつけるようなのは」
「……ばか。 流石にあいつらの前ではやらないっての。 でもあとちょっとだけ――ダメ?」
きゅっと腕に絡む力が強くなる。
至近距離で見上げる妹に、俺は何かを言おうと思って―――しかし口をパクパクと上下させること
しか出来ない。代わりにふるふると首を横に振って答えた。
桐乃は嬉しそうに「にひっ」と笑い、
「ありがと、京介」
―――――――俺の妹がこんなに可愛いわけがない。
以上です。それではまた、いつかお会いしましょう。
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最終更新:2011年04月13日 01:27