14 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/04/20(水) 22:13:15.89 ID:SqmBSeOcP
なんか誕生日誕生日と聞いてたら無性に書きたくなったから勢いだけで書いた
誕生日捏造。留学中だということになっておりますよ

『プレゼントの渡る先』


「結局、今年も買っちまったな……」

机の上に置いた、綺麗にラッピングされた箱を見ながら俺は一人ごちた。

今日は別に祝日というわけでもなく、かといって特別なことがある日でもない。
強いて言えば……今はここにいない、俺の妹の誕生日だってことぐらいだ。

桐乃は今、俺に黙って旅立ったアメリカにいる。
陸上のスポーツ留学。それが後で聞かされた事実だ。
かなり前から計画していたみたいだけど、結局俺には一言も話してくれはしなかった。
それこそ、旅立つ前日でさえ、な。
ほんと、とことん俺には冷たいやつだよ。あの妹は。
夜を徹して家まで帰ってきた兄に対しての仕打ちがそれかよ。まったく。

机の引き出しの一番したの段。そこを引き出す。
そこに見えるのは、何も入ってない空の引き出しだ。
その底の端に指を掛ける。クイッと引っ張ると、カパリとそこから更に下の部分が現れる。
そこに無造作に置かれているのは色とりどりにラッピングされた、大きさもまちまちな箱の数々。
それはこの数年間、毎年この日に買っていた桐乃へのプレゼントだった。
仲が今より更に悪かったあの数年間。何を思ってこれらを買ったのかはよく覚えてない。
渡せるはずもないプレゼントを、何で俺は毎年のように買っていたんだろうか。
そしてそれは、今年にも言えることで……。

箱を一つ一つつまみながら机の上に広げていく。
これは髪飾り。これはブローチ。それからこれは……
一つ一つの中身を覚えていることに自分でも驚く。
当時、まったくというほど会話のなかった俺達。
そんな俺があいつのほしいものなんてわかるはずもなく、ただ適当に、
これならそれほど目立たねえかな、とかそんなことを思いながら買っていた気がする。

ホント、俺も馬鹿だな。渡せるはずもねえもんを何で買うんだか。
どれもこれも、無駄に時間ばっかりかかってた記憶しかねえや。
今日だってよ、学校終わってからわざわざアキバまで足延ばすとか何考えてんだか、俺も。

机に広げられた箱を眺めながら思う。
全部捨てちまうか……渡せねえもんをいつまでもとって置く道理はねえだろ。

広げられた中の、ひときわ小さい箱をつまみあげ、ゴミ箱の上まで持ってくる。
後は手を離せばいいだけだ。それだけでいい。だというのに……なんで俺はそれが出来ないんだろうね。

結局俺は、それらを全てまたあの引き出しに戻してしまった。今日買ったやつも含めて。

はあ、これじゃいつまでたっても邪魔になるだけじゃねえかよ。ったく。
こうなったらこれはもう桐乃に処分してもらうしかねえよな。
流行遅れだろうがなんだろうが知ったこっちゃねえ。来年全部まとめてあいつに押し付けてやる。
それであいつが捨てるんならそれはそれでいいさ。その時点でそれはあいつのなんだからな。
となれば、その時文句つけられないようにきっちり置いとかねえとな。凹んだりつぶれたりしないようによ。

潰れないように箱を整えながら置き、それにふたをするように二重底をかぶせる。これでよし、と。
さーてと。そろそろ寝るかね。

時計を見てみればそろそろ日付が変わる時間帯だ。
そういえばこっちとあっちの時差ってどんなもんだったっけ……まあいいか。
この時間ならあっちもこっちもきっとかわらんだろ。
まったく連絡もくれないお前が今どうなってんのかはしらねえよ。
それにこんなこと言ったって意味もないんだろうが……一応祝ってやるよ。


「ハッピーバースデー、桐乃。そっちでも、頑張れよ」


心のどこかで、届けばいいと思いながら、俺は目を閉じた。




-おわり-



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最終更新:2011年04月23日 19:59