178 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/04/22(金) 15:43:24.83 ID:lFb8ltfFP [2/6]
なんかもう書きたくなったから書いた。
しばらく自重しようかなと思うこのごろ
若干キャラ崩壊したっぽい。一度原作を読み直そうと思うこのごろ。

ということで

【SS】その後の誕生日

これは一応>>14 >>42->>43 の一年後設定って感じです
8巻時点やらその辺で何があったのかはみんなの脳内補完に任せるということで!(オイ

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「ということでプレゼントだ。受け取れ」
「……あのさ、プレゼントは嬉しいんだケド……その量は何よ?」

 京介の腕に抱えられたプレゼントの山をみて、あたしはそう言うほかなかった。


 今日はあたしの誕生日だ。
 去年はあたしが留学していたのもあって、まともに祝うことも出来なかったからみんなで騒ごうと誕生会を開くことになったのだ。
 あやせや黒猫たちとかの、あたしの裏も表も知ってる人間だけを集めてすごく楽しい誕生会だった。
 それで、みんながプレゼントくれる時にこいつは後で二人きりのときに渡すなんて言うもんだから散々みんなに冷やかされた。
 特にいじってきたのが黒猫で、

「あら、二人きりのときにだなんて……いったい兄さんは何を渡すつもりなのかしら?」
「いや、お前が何想像してるかなんとなく予想つくけど多分それ違うからね!?」
「へえ? あなたのような愚鈍な雄に私の考えが読めるというのかしら?
 いいわ、言って御覧なさい? もっとも、それが言えるようなものならば、だけれども」
「むぐ……そ、それは……」
「それは?」
「……ごめんなさい」
「あら、何を謝っているの? 私は別に責めているわけではないわ。
 ただ、あなたがどんなことを想像したのか聞いただけじゃない。私に遠慮することはないのよ?」
「ああもう俺が悪かったって!! 降参! 降参するからもうカンベンしてくれよ!!」
「…つまらないわね。もう少し粘ってもいいと思うのだけれど」
「お前のペースに付き合ったら俺はすぐにライフが0になる自信があるよ……」

 といった感じで終始京介をいじっていた。
 まあ、つまるところ主にいじられてたのは京介ってことなんだけどね。ただ

「お兄さん。お話があるのでちょっと来てもらえますか?」

 そう言ってあやせが何故かビクつく京介を連れて行った後、少しして戻ってきた京介がものすごく憔悴してたのが気になったケド。
 何話してたの? って聞いても「何でもねえよ…」って言うだけで答えてくれなかったし……。
 いったいどんな話してたんだか。


 そんな誕生会も終わってみんなが解散した後、京介があたしの部屋に来て冒頭のやり取りに繋がるのわけである。

「まあ、これはなんと言うかだな……うむ、これはお前の罪の数だ!」
「はあ? 何言ってんのあんた」

 いきなり罪だとか言われても意味わかんないんだケド。
 そもそもプレゼントが罪って、何よそれ?

「というのはまあ冗談だ」
「死ね」
「流石にそれはねえだろ!?」

 あんたが冗談なんていうから悪い。
 そうならそうと早く言いなさいよ。まったく。

「ま、それは冗談として。えと……あ、ありがとね兄貴」
「お、おう」
「開けてもいい?」
「好きにしろよ。それはもうお前のもんだからな」
「じゃあ遠慮なく……ん?」
「どうした?」

 京介の言う通りに、好きに開けようとして気付いた。この箱、随分古くない?
 よく見てみれば程度は違えど多少古びてるのがいくつかある。

「…………」
「桐乃?」

 ガサガサと箱を開けてみれば、出てくるのはほとんどがアクセサリの類だった。
 それは髪飾りだったり、ブローチだったり……
 それだけならよかったけど、問題はそのそれぞれが、今のお店ではもう売ってないようなものだったりすることだ。
 それは流行が終わって市場から消えてるやつとか、期間限定で生産されてたやつとか、そういうものだったりする。
 その時その時で興味がなかったり、自分が求めてるやつじゃなかったりでどれも持ってないやつばかりだ。
 今ならこういうのもほしいって思えるような、そんな落ち着いたデザインのものが多い。
 この辺は京介の性格がでてるといえるかもしれない。
 でも、京介がわざわざこれを集めてきたって言うのは考えづらい。今から探してたんじゃ見つけるのも大変だったはずだ。
 どういうことだろうか。

「なんか、随分古いものも混じってるんですケド。これは何?」
「あー……なんだ、確かに古いかもしれねえけどさ、別にお古とかじゃなくって確かにそれはお前に買ったプレゼントなんだよ。
 ただし、今年の誕生日じゃなくてっていう注釈はつくけどな」
「え?」

つまりこれは、去年以前に買った……?

「なんで……」
「理由なんてよく覚えてねえよ。ただ、自分でもよくわかんねえけどお前の誕生日には何かしら買ってたんだよ。
 でもあの頃って今と違って話すこと自体まれだったろ? 仲だって最悪と言っていい状態だったし」
「うん……」
「ま、そんなわけで渡せるはずもねえし、そんなのが毎年続いてこんだけ溜まっちまったってわけだ」
「だったらその時捨てればよかったんじゃないの?」
「そりゃそうなんだが……まあいいじゃねえか。
 それにこうして渡せたんだし、以前の俺の努力も無駄じゃなかったってことで」
「……そう、だね。うん」

 まったくあたしを見てくれていないと思っていたあの冷戦時代。
 それでも、こうしてあたしのことを少なからず気にかけてくれてたっていう事実がここにある。
 それを思うと、胸の中があたたかくなると同時に、ぎゅっと締め付けられる感覚にとらわれる。

 嬉しい。嬉しい嬉しい、嬉しい――。

 ほんと、京介のこういうところは反則だと思う。
 何でこうもあたしの心にクることを平気でやってしまうのか。
 そのせいで色々勘違いしたこともあったけどね。今はもういい思い出だって言えるケド。

「それと最後に……」
「まだあんの?」

 ゴソゴソと後ろ手にポケットをまさぐる京介。
 これで全部だと思ってたのにまだでてくるんだ。

「これは今年のプレゼントだ。改めて言うのも照れくさいけどよ。ハッピーバスデー、桐乃」

 そう言って渡されたのは、さっきまでのに比べても更に小さい箱だ。
 それを開けてみれば、そこに入ってたのは、これは……ピンキーリング?

「へえ……あんたにしてはなかなかセンスいいじゃん」
「なかなかは余計だっての。これでも結構悩んだんだぞ」
「はいはいありがとありがと」
「なんかてきとーだな」

 バーカ。恥ずかしいから誤魔化してんだっての。気付けこの鈍感!

「すねないすねない。じゃあさ、くれたついでにあんたがはめてよこれ」

 そう言ってあたしは左手を京介に向かって突き出す。右手にはもらったリングを持って。
 勿論これはこっちの指につけろって催促だ。
 ピンキーリングの意味をあたしだって知らないわけじゃない。

「別にすねてなんかいねーっての。左手でいいのか?」
「うん」

 京介がリングを持ってあたしの左手に手をかける。
 こ、これってなんか結婚式のリングの交換みたいだよね。うわー、なんかドキドキする。
 あたし顔赤くなってないよね!?

「ほら、これでいいか?」
「うん。ありがと」

 えへへ。ヤバイ、すっごい顔がにやける。どうしよこれ。

「気にいってくれたかよ?」
「ま、まあね。仕方ないからこれからもつけといてあげるわよ。せっかく貰ったんだしね」
「そりゃなによりだ」

 京介の顔は優しい。
 去年のゴタゴタ以来、あたし達の関係は良好といっていいと思う。
 色々あって彼氏彼女って言うわけには行かなかったけど。
 今の関係が不満ってワケじゃないけど、あたしとしてはもうちょっと進みたいって言うか、そういうのがある。
 こいつが今あたしのことどう思ってんのとかも気になるし。
 相変わらず超シスコンなのだけはかわらないけどね。
 ……そうだ!

「ありがとね兄貴。あたしばっかりこんなに貰ってばっかじゃ悪いし、お礼してあげる」
「お礼? いいってそんなの。別にお礼がほしくて用意したわけじゃねえし」
「いいからいいから。じゃあちょっと目をつむってじっとしててくんない?」
「いいけど……何するつもりだよ?」
「いいから! はやくして!」
「はいはい。わかりましたよ」

 そう言って目をつむる京介。
 今から実行することを考えればさっきとは比較にならないほど胸がドキドキする。
 さあ、行くぞ!
 
 京介の肩に手をかける。

 こいつ意外と背が高いんだよね。
 でもこれぐらいの伸長差が理想的って言うし、あたしとしては結構この距離感が好きだったりする。

 ぐぐっとつま先で背伸び。そのままあたしは京介の顔に自分の顔を近づけて……

 さっきから心臓の音がうるさい。何こいつ、何気に睫毛とか長いんですケド。
 これは手を加えたら駄目な顔だ。絶対に他の女が寄ってくる。そんなこと絶対させないけどね。
 なんてことを考えながらあたしは

 チュッ

 京介にキスしてやった。勿論「唇」に。
 そんでそのままドン!って京介をドアのほうに向かって突き飛ばす。
 こ、これ以上顔なんて見てられないっての!

「お、おま、桐乃、お前今何を」
「う、う、う、うっさい! もう用事は済んだでしょ。さっさと部屋帰れ!」

 驚く京介をげしげしと足蹴にしながら部屋から追い出す。
 多分、いや、絶対に今あたしの顔真っ赤だ。
 京介を部屋から追い出したあたしはそのままバン!と戸を閉める。

 あーもう恥ずかしい。自分でやっといてなんだけどこれは無理!
 明日どんな顔してあいつと顔会わせよう。
 でも……あいつ、顔真っ赤にしてたけど前ほど嫌そうな顔、してなかったよね。
 むしろまんざらでもない顔してたきがする。これって脈ありだって思ってもいいよね?

 えへへ、と顔が緩んでしまうのは仕方ない。うん、しかたない。
 なんか今日はいい気分で眠れそうだ。
 そうだ、明日一番に顔を合わせたら京介と呼んでやろう。どんな反応をするのか楽しみだ。
 

 そんなことを思いながら、ベッドに横になったあたしは、ゆっくりと目を閉じたのだった。


-おわり-



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最終更新:2011年04月23日 20:04