402 名前:【SS】休みの日 前編[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 10:43:32.31 ID:Yrkr0FpzO [7/8]
※未来の話、オリキャラ(高坂兄妹の子供)登場につきご注意を
「桐乃、着いたぞ」
すぅ…すぅ…
「あの、桐乃さん、到着したんですけど」
すぅ…すぅ…
「まったく、しょうがない奴だぜ……なあ桐乃?
座席から蹴り飛ばされるのと、いますぐ起きるのと、どっちを選ぶ?」
「……お目覚めのキス……」
何言ってんだよコイツ、そんな選択肢ねえよ!てか聞こえてるなら起きろよ!!
……チュッ……
えっ、そんな選択肢はなかっただろって? まあ諸般の事情によりって奴だ。言わせんな恥ずかしい
「もうやだこの夫婦w」
「ホントにキスしてるーw」
後ろの席から双子の兄妹、桐(とう)と京(みやこ)が囃し立ててくる。
「ほら見ろ、言わんこっちゃない」
「だって、久しぶりなんだから、いいじゃん?」
「あのなー」
「やれやれ、あとは若い者にまかせて、俺たち兄妹は先に行ってくるとしましょう」
「そうだねお兄ちゃん、じゃあパパとママも準備できたらすぐ来てね」
そう言って荷物を持って駆け出す桐と京。
※※※
大型連休のとある一日、俺たち家族は横浜の「海の公園」に来ている。
ここは千葉県の砂を使った人工海岸なんだが、アサリなどの貝が住み着いていて潮干狩りを楽しめるわけだ。
「パパー ママー こっちこっち!」
「今行くわよー ほら京介早く早く!」
例によって桐乃の荷物は全部持たされてるのに急かされてしまう。
しかし、車から降りた桐乃は随分と生き生きして見える。
最近の仕事はなかなか大変だと聞いてたから、いい息抜きになるだろう。
※※※
「アンタこんだけしか採れてないわけ?」
「こっちはマイペースでやってんの。それよりお前のほうが、がっつきすぎだってえの」
「せっかく来たんだから、上限いっぱいまで採らなきゃ損じゃん!
ほら、あたしがとり方のコツを教えてあげるから」
こうして俺は潮干狩りのコツとやらを一からレクチャーされることになった。
相変わらずやる事なす事ひたむきすぎる奴だよ、桐乃は。
「サンキューな、桐乃」
「てか、今日感謝しなきゃいけないのは、あたしのほうだから…」
「ん、何のことだ?」
「あたしは今も仕事させてもらって、飛び回ってる分家庭を省みる時間が少ないじゃん。
だけど、何も文句言わずにあたしを支えてくれてる、あの子たちと、京介には
本当に感謝の気持ちでいっぱいなの。」
「そうか、俺は大丈夫だから、今日は子供たちにおもいっきり、お母さんとしての桐乃を見せつけてこいよ
今も俺たちに気をつかって、二人っきりにしてくれてるみたいだけど
内心じゃ、桐と京のほうがきっと淋しがってるからなあ
俺はここで頑張ってたくさん貝を採ってやんよ」
「うん、じゃあ行ってくるね、京介」
満面の笑みで駆け出していく桐乃。ほんと、眩しいぜ
403 名前:【SS】休みの日 後編[sage] 投稿日:2011/05/04(水) 10:44:44.89 ID:Yrkr0FpzO [8/8]
※※※
宣言とおりにいっぱいの貝が採れたところで、潮干狩りは終了。
俺たちは弁当をたいらげ、八景島へ向かう。午後はシーパラダイスで遊ぶ予定だ。
車を降りて、島に渡る橋のエスカレーターまで来ると、そこには
「あ、アンタたちどうしてここにいんのよ?」
「…っふ…もう少し気の利いた対面の挨拶はできないものかしら?」
「きりりんさん、京介さん。お久しぶりですわ」
桐乃には隠していたんだが、黒猫と沙織とは、ここで合流する約束をしていたのだった。
「わたしも来てますよ。桐乃お姉さん」
「高坂くん久しぶり!って、もう立派なパパだからくん付けは変かなw」
黒猫は妹たちも連れてきていた。
「せっかくあなたのマル顔を拝める良い機会なのだから、妹たちも連れてくることにしたのよ」
「マル顔言うな!…それにしても、アンタの妹たちだけあって、美人に育ってるよねー」
「い、いきなり何を言い出すのかしら?」
「きりりんさん、わたくしのことも見てくださいな」
「沙織は言うまでもないじゃん。沙織が月なら京介はゼニガメってとこかな」
なんだそれ、俺はスッポン未満てことかよ!
「京介さんも父親としての風格がはっきりと感じられますわよ」
「いやいや、京介はあたしが側についていないとまるで話にならないから!」
「やれやれ、あなたのエンドレスな惚気話になる前に、今後の予定を決めましょう。
私はまずアクアミュージアムに行きたいわ。父さん」
「でしたらわたくしはドルフィンファンタジーがいいですわ、父上」
「私たち姉妹と桐くん、京ちゃんはふれあいラグーンに決めたよ。高坂パパ」
「あたしは、プレジャーランド行きたいんだけど、ダメかな…京介?」
たく、全員そろってそんな目で見つめるなよ、どうすりゃいいんだ俺?
と言っても優先順位はおのずと見えてくるもんだ。
「じゃあまずは子供たちの希望のふれあいラグーンからでいいな、みんな」
「その選択肢で安心したわ。さすがお父さんね。褒めてあげるわ」
「京介さんは本当によき父上ですわね」
「じゃあそうと決まれば早速レッツゴー!!」
もしかして、試されてたのか、俺は?
まあ、何はともあれ、大切な友人達も加わり、ますます楽しい時間を
俺たち一家は過ごすことができそうだ。
ほんと、幸せってこういうことを言うんだろうな。
素敵な出会いの一つ一つに感謝しながら、俺はみんなと歩いていく……
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最終更新:2011年05月05日 21:49