364 名前:プレゼント【SS】[sage] 投稿日:2011/05/08(日) 14:54:39.95 ID:aQ4FqZrEO [6/6]
日曜日の昼下がり、あたしは兄貴の部屋のドアをノックする。
「勉強の手を休めて、ちょっと買い物に付き合ってくんない?」
「買い物って、何買うんだよ」
「母の日のプレゼント。アンタもまだ買ってないんでしょ?」
「確かに買ってないけど、俺はいつも通りの物のつもりだぞ」

兄貴の言う「いつも通りの物」とはカーネーションの花束だ。
「定番なのはわかるけど、たまには違うモノをプレゼントしなさいよ?」
「そりゃそうだけど、『先立つ物』がなあ…」
「まったく、情けない話ね。まあでも……」
「なんだよ?」
「だから今年は二人連名でのプレゼントにしようってハナシなの!」

※※※
なんだかんだで、あたしは兄貴と連れだって駅前のデパートに向かう。
「やけに機嫌いいじゃん」
「ハア?いつも通りですケド?何その『お兄ちゃんとお出かけできて嬉しいだろ』みたいな言い草、キモッ」
「誰もそんなこと言ってねえだろ」
まあ、『そんなこと』思ってるのは実はあたしのほうなんだけどね……
「ところで、桐乃はモデルで収入得てからは、どんなプレゼントをお袋にしてたんだ?」
「ある程度お金があると、逆に迷うんだよね。これまでのところはブランドのお財布と、高級化粧品」
「で、今回はどうするつもりなんだ?」
「連名なんだからまずは兄貴が知恵を出してよ」
「そうだなあ、てか、女性が貰うもんだから、桐乃が、自分が母の日に何貰いたいかを
考えて見ればいいんじゃね?」
「あ、あたしが貰いたいもの??」

※※※
「…桐乃、母の日おめでとう」
「ありがとう、京介」
「すまんな、今年はうっかりしててプレゼントの用意が間に合ってないんだ」
「気にしないで。京介のその気持ちが伝われば、十分なんだから」
「そうか。いや、桐乃の欲しいものを言ってくれよ。なんでも用意する」
「じゃあ……京介」
「何だ、何が欲しいんだ?」
「もう、わかってるくせにぃ。あたしは きょうすけ が欲しいの」
「お、お前いきなり何言いだすんだよ!」
顔真っ赤にしちゃって、まったく兄貴ったら。そんな兄貴に、あたしはどんどん迫っちゃう
「お願い、きょうすけをちょうだい。欲しいの、きょうすけの……リヴァイアサン……を」
「…まあ、約束しちゃったからな」
兄貴はあたしをソファーに押し倒すとあたしに蕩けちゃいそうな熱いキスを…

※※※
「……桐乃?もしもーし、桐乃さん?」
「はうっ??」
「なんだよ変な声あげて」
どうやらあたしは妄想にはまり込んでたみたいだ。せなちーの気持ちが分かる気がした。
「あれなんて、いいんじゃないか?」
「そ、そう、だね」
「大丈夫か?お前」

今年は大きなカーネーションの鉢植えをプレゼントすることとなった。
花束と違って、長く楽しめるし、お母さんも喜んでくれたみたいでまずは一安心。
「兄貴、今回はありがとね」
「ああ、べつにたいしたことしたつもりはないけどな」
「その、これからも『母の日』はよろしくね」
「おう」
兄貴の部屋を出てあたしはつぶやく。
「期待……してるから」



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最終更新:2011年05月08日 17:52