593 名前:【SS】きょうちゃん奮闘だぁ![sage] 投稿日:2011/05/09(月) 00:07:10.69 ID:GjttQgzj0
学校から帰りリビングに入ると、桐乃が下着姿でソファに座っていた。
「なっ! 何やってんのお前!?」
なに? コイツ露出狂だったの!? エロゲオタとかシスコンとかよりももっと強烈な称号持ちだったの!?
俺の怒声を聞いた桐乃は、ちょっと首を傾げてこちらを見た。
桐乃の下着姿は、モデルらしい素晴らしいプロポーションもあいまって、その、健全な男子高校生にはあまりに刺激的で……。
その本人に見つめられると、否が応にも心臓が高鳴ってしまう。
――って、違う! こいつは俺の妹だ! 妹に欲情なんて、これっぽっちも、してませんからね?
「あぁ、兄貴、おかえり」
てっきり下着姿を見てしまったのを咎められるかと思ったが、予想に反して桐乃はニコっと微笑んで迎えてくれた。
何ですかこれ。いつもの桐乃ならこんな笑顔を俺に対して見せるはずがない。
……ドッキリか?
黒猫や沙織と組んで何かを企んでいるのか?
そう思いリビングを見渡してみるが、どうやら家には俺と桐乃しかいないようだし、監視カメラも無さそうだった。
「どうしたの?」
頬を紅潮させ、ややトロンとした目で俺を見上げてくる桐乃。
その仕草があまりにも可愛くて、何だか気まずくなって目を逸らした俺は、ソファの前のテーブルに置かれたソレを見つけた。
「おまっ……これ氷結じゃねーか! 何飲んでんだよ!」
「んー? きれいな缶だったから買ってみた」
「きれいとかきたないとかじゃなくて! これ酒だぞ!?」
「えー? ジュースでしょーえへへへ」
テーブルを見ると、もう三本も開けてやがった。一滴でも法律違反なのに、中学生の桐乃には刺激的過ぎる分量のはずだ。
心配になり、桐乃の額に手を当ててみる。案の定、額――というか顔全体が火照っていた。
「なっ! 何すんの!?」
「何すんのじゃなくて! これお酒だぞ!? 中学生のお前が飲んだら法律違反だっつーの!」
「はぁ!? あたしが何飲もうが勝手でしょうが! アンタに文句言われる筋合いなんてこれっぽっちもないっての!」
桐乃は先程までの笑顔とは打って変わって、今度は鬼の形相で俺を睨む。
しかし威勢の良い言葉はいつもとはやや異なり、酔っ払いの口調になっていた。ろれつが回ってない、ってやつだ。
「大体なんでお前そんなカッコしてんだ」
「暑いから。いいでしょこれくらい。お父さん達帰ってこないし」
そう。何やら親戚の法事とやらで、親父達は明日まで出掛けているのだ。
桐乃と二人で夕食なんて本当に久し振りで、まずどうやって食事を用意するかってことに頭を悩ませつつ学校から帰ってきたのだが、
いきなりのこのトンデモイベントである。もう食事の用意どころじゃないですよね。
「ほら、ここ座んなさいよ」
自分の隣の場所を指差す桐乃。どうやら隣に座れ、ってことらしい。
拒否すると更に面倒なことになりそうなので、おとなしく従う。
「あのさー桐乃……」
「んー?」
酔っぱらっているからか、桐乃の表情はコロコロとよく変わる。
ちなみに今は超ご機嫌。数十秒前の鬼さんは既にどこかへ行ってしまったらしい。
「その酒さー……」
「ん? なに? 欲しいならあげるよ? ほらほら」
「んなっ! やめろって!」
「ほらほらー! 飲みたいんでしょー?」
それまで自分が飲んでいた缶を、そのまま俺の口に押し付けてくる。
やばいってこれ! 間接キ……。
――それから数分後。どうやら俺は桐乃と一緒に酔っ払ってしまったらしい。
「大体アンタが悪いんだからね? 地味子とか黒いのとかとイチャイチャするからさあ!」
「はい、反省してます……ぐすっ」
「あたしがどんだけアンタのこと思ってるか、知らないでしょ!?」
「はい、知りませんでした……ぐすっ」
「ふん、いーですよ、どうせあたしなんて妹だし? 家族だし? 所詮その程度の存在なんでしょあんたにとって」
「いえ、違うんです……ぐすっ」
「そもそもさー、普段のあたしのカッコ見て何か気付かないわけ?」
「えっと、カッコ……ですか……ぐすっ」
「これ! ヘアピン! こんな古くてだっさいの、どうしてあたしがいつも着けてるか、わかる?」
「いえ、分かりません……うぇっ」
「ほらね、この程度なのよね。あーあもうやだこの鈍感男」
「すいません……教えてください……ぐすっ」
「……ずっと前、あんたが誕生日にくれたの。だから古くてもださくてもこんなに大事にしてるんだよ」
「うっ……ありがとう……ございます……ううっ」
「泣くなバカ兄貴! ほらもっと飲め!」
何故か録音されていたその酔っ払い同士の会話を、光彩の消えた瞳のあやせに俺と桐乃が聞かされるのは、また別の話だ。
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最終更新:2011年05月09日 22:58