63 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/12(木) 23:19:44.48 ID:a/Xrgeok0 [1/2]

SS『キス』



「そういやさ、京介」

9月も半ばに入った頃、お茶を飲みにリビングに降りてきた俺は、
桐乃に突然呼び止められた。

「なんだよ」
「あんた、黒猫とキス………した?」

そんな事まで気にするほど、黒猫に嫉妬してたのかよ。
内心のこそばゆさを隠しつつ、俺はこう答えた。

「いや、そこまでは行かなかったぜ?」
「そう………そっか………」

一見投げやりに見える態度をとる桐乃だが、もう俺はだまされねーぜ?
おまえ、今、気付かれないようにゆっくりだが、ほっと息を吐き出しただろ!
おまえの胸がしっかり上下するところ、見てたからなっ!

………まったく、俺ってヤツはなんでこんなに鈍感だったんだ?
今の俺には、桐乃の一挙一動が、本当に可愛らしくみえちまうんだよな!

「じゃ、じゃあ、京介、さ。ファーストキス…は、まだなんだよね?」
「そうだな?………あ、いや、違うかも?」
「えっ………」

途端に桐乃はとても落ち込んだような姿を見せる。
そんな姿俺は見たくねーんだが、俺の事をこんなにも想ってくれてると思うと、
嬉しくって涙が出てきそうになる。

「安心しろよ。俺のファーストキスの相手は、おまえだよ」
「えっ、えぇっ!?」

あまりに驚いたのか、桐乃は口をパクパクとさせ、一言も出せなくなってしまった。
それにしても、ほんと、こいつは感情表現が豊かだよな。
こんな可愛らしい女の子、桐乃の他にいるわけねーな!

「実はな、この前の…俺が泣いちまった時、寝ぼけたおまえにキスされたんだ」
「なっ、なっ………!!!」

桐乃は顔を真っ赤にし、ぶんぶんと頭を振っている。
あの時の光景を思い出して恥ずかしい気分になってやがるんだな!
俺も恥ずかしいし、まあ、痛みわけってとこだな。

「と、いうわけだ。安心したか?」
「………………」

あれ?なんでそこで押し黙るんですか?桐乃さん?
てか、何で近づいてくるの!?
いや、俺の腕を掴んでどうする気!?

「あたし寝ぼけてたし、仮に触れてたとしてもノーカン。はい、やりなおし」
「え、ちょ、おま」

桐乃は俺の頭に手を回し―――

俺の唇に、自分の唇を重ねてきた………

唇が触れたのは一瞬で、短い、短いキス………だけど………

「桐乃、おまえ………」
「何よ………京介………」

それ以上、言葉は続かなかった。

俺は、桐乃の頭に手を回し―――

桐乃の唇に、俺の唇を重ねた。

さっきより、ずっとずっと長いキス。

お互いの気持ちを染み渡らせるかのように
俺たちは、唇を重ね続けていた。



End.



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最終更新:2011年05月15日 17:59