949 名前:【SS】どうしようもない京介に天使が降りてきた[sage] 投稿日:2011/05/15(日) 22:44:10.88 ID:jgfTvGQrO [3/3]
音楽ネタで自分が思いついたのは槇原敬之の「どうしようもない僕に天使が降りてきた」
もう15年も前の曲になるんだな

※※※
「この、馬鹿京介!!!」
桐乃の叫び声が響くと同時に、俺の顔面目掛けて緑色のタコが向かってきた。

ばふっ…
余りの勢いにタコに裂け目ができて、そこから中の羽毛がこぼれ出てきた。
(いい詰め物してやがる…)
いやそれどころじゃない。桐乃も部屋を飛び出して行きやがった。
「おい、待てよ桐乃」
「うるさい、ついてくんな!!」
ドアが閉まるその勢いで、こぼれ出た羽が部屋を舞い散る。

桐乃が怒った原因は、俺にも察しがついた。
それは桐乃が持ち去っていったマスケラの目覚まし時計……

何故そんなものがお前の所にあるかって?
そうだよ。「昔の恋人」がくれた物だよ。
そんなもの、何で今も取っておいたままにしておくんだって?
だって、目覚まし時計一つにまで、変に意識するのもどうかと思ってさ…

それはともかく、今はそれよりも桐乃を追いかけるのが先だ!
部屋を飛び出した俺の目には、おそらく桐乃にも飛び散ったであろう白い羽毛が階段に、そして床に落ちているのが見えた。
外に出てもそれは点々と続いている。俺にはまるで、羽のひとつひとつが
『本当はあたしのことを追いかけてほしい』と語りかけてるように見えた。

※※※
桐乃と俺が恋人になってもうすぐ一年になる。その間、当たり前のように名前で呼びあい、
当たり前のようにキスし、当たり前のよう抱き合ったり…
そうするのは日々の挨拶みたいなもんだと思ってたし、
ラブラブな関係は途切れることなく続くと楽観していたんだが。

※※※
俺がかつて「エンジェル」と呼んでいた女の子と度々会っていた公園、桐乃は、そこにいた。
夕日に照らされた、小さな羽まみれの、今の俺の天使……

「アンタ、愛ってのを勘違いしないで……」
「えっ、何だって?」
久しぶりに聞いた、以前の呼ばれ方に、正直俺は戸惑う
「…あたしが欲しかった『愛』を勘違いすんな!!」
桐乃が叫ぶと同時に、手の中にあったマスケラの目覚まし時計が天高く飛んでいった。

※※※
地面に激突して脆くも壊れた目覚まし時計に俺は駆け寄る。
時計が壊れたことより何よりも、俺が、桐乃の想いを理解できてなかったことが、辛かった。心が痛かった。
俺が、桐乃が望んでるように、彼女のことを愛してやれるには、もっと努力が必要なんだってことを。
表明的なラブラブ態度だけじゃない、心の底から桐乃のキモチを理解してやらないと…

「なあ…桐乃」
「……何?」
「散らかった部屋の掃除は全部俺がするから…」
「……そんなの、当たり前に決まってるジャン」
「だから、だから……
一緒に帰ろう」

「……うん、京介」

目にいっぱいの涙を浮かべながら、俺と桐乃は手を繋いで家路へとついた…



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最終更新:2011年05月16日 08:03