474 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2011/05/26(木) 14:23:14.10 ID:1Z/aLpQZ0 [1/2]
SS鏡写し
黒猫の新居から帰ってきて丸一日が経った。
昨日は、俺も桐乃も、お袋への釈明に追われて、
とても何かできるような状態じゃなく、ようやく一息ついた所だ。
それにしても――俺は一昨日までの事を思い出す。
俺は、二つの事件の事をまるで鏡写しのように感じていた。
お互いに彼氏彼女を連れてきて、その彼氏彼女よりも、
お互いの事の方が大事だと、そう伝え合って・・・
俺は桐乃の事が大事だ。
桐乃を他の男になんてやるつもりはないし、俺の方が幸せにしてやれると確信している。
桐乃も俺の事が大事だ。
俺の中の一番でありたい・・・
あれ?
鏡写しのように思っていたが、ニュアンスが結構違ってねーか?
一番ってどういうことだ?
それに、『俺の方が幸せにしてやれる』って、
俺はどういうつもりで言ってしまったんだ?
考えがまとまらないなか、隣の部屋から騒がしい声が聞こえてきた。
「黒猫?あんた?そう。この前の続き」
続き?
どうやら桐乃が電話で黒猫と会話しているようなのだが。
「はぁ?だって、あんたが倒れてうやむやになったからに決まってんじゃん?」
ああ、そうだったな。
黒猫が途中で倒れちまって、そして、その後黒猫とは新居で会ったきりで、
なかなか最後まで話ができずにいるんだよな。
「うん、居る。・・・・・・あたしの声だけでしょ?」
ん?何話してんだよ?
「それじゃあ、ちゃんと言ってよね。儀式とか誤魔化さないで、あんたの気持ちを」
そうだったな、儀式は継続中・・・だったな。
言わんとするところはなんとなく分かるけどよ、
肝心な所で本心を隠されちまったようなもんだしな。
桐乃がそう思う気持ちも分からなくはない。
桐乃は長い事、『うん』とか『そう』とかうなずくだけで、一言も喋ろうとしない。
一体どういった話が繰り広げられてるのか・・・
「あんたには京介はあげない」
突然、桐乃の口調が変わる。
「京介と付き合いたいっていうなら、あんた!このあたしに認めさせてみてよ!
あたしよりもあんたの方が、京介を大切にしてやれるってことをね!」
お、おい、おまえ・・・
「でも、残念ね!あたしのほうがあんたより京介を大切にする!絶対に!
だから、あんたには京介はあげない!」
正に鏡写しだった。
だけど、その後に続いた言葉は・・・
「そう!あんたがどんなに優しくっても・・・あたしは京介を愛してる!
好きで好きでしょうがないの!――悔しかったら、あたしより好きになってみせなさいよ!」
決定的だった。
桐乃が、俺の事をどう見てくれていたのか。
そして、やっぱりこの二つの事件は鏡写しであった事が。
End.
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最終更新:2011年05月29日 23:02