320 名前:【SS】[sage] 投稿日:2011/05/30(月) 00:13:44.19 ID:W1TuvYR/0
「はぁ?なんだそりゃ」
正直『気持ち悪いくらいの笑顔』で俺は悪態をついた。
俗にいう急展開だよ、内心そうじゃないかな~とは思っていたが、どうやら本当にフラグが立っていたようだぜ。
「 何でそんなことしなきゃいけねーんだ?」
だめだ耐えられない!声が桐乃に届かないように携帯を手で隠しながらフヒヒヒヒヒと悶える俺マジキモい
おっと教室内がざわっとしてしまった。
このクラスにおいて俺の立場は今や牛乳雑巾以下である。
変態だの二股だのドMだのどれも身に覚えが……あるなぁちくちょう。
見ろよあの女子集団のこっちを見る目!
脱皮したての白ゴキブリだってもう少しまともな目で見てもらえるだろうぜ。
しかし今の俺におまえ等の視線なんぞ痛くも痒くもないね!
さて諸君!状況を説明しよう。
試験時期の関係で早めに授業が終わり、帰り支度を始めた瞬間の事だ。
大変珍しくも桐乃から電話がかかってきた。んーもしかして向こうからの電話は初めてだっけ?
でね、でね、妹様が電話ごしに言ったのは
『ねえ、適当でいいから愛の告白して欲しいんだけど、今すぐ』(←超そっくりなものまね)
とまあ、常識外れのものだった。
なにが適当でいいだ、バーカバーカ俺を殺す気か!
ハイ状況説明終わり。聞いた?聞いた?
なんだか俺を担当する声優さんにものすごく負荷のかかる状況説明だったような気がするぜ。
つーかさぁ(半音上がり)
愛の告白しろって、どんだけ俺の事好きなんだっつーのなあ?
むしろお前の今のセリフが告白そのものですよぉお!
それによ、なにも電話じゃなくてもいいよなぁ 毎日あってるんだし。
それともあれか、『今すぐお兄ちゃんの声きかないと桐乃おかしくなっちゃう!』ってこと?
フヒッ、自分で想像しただけでヤバイ、マジヤバイわー
〈……だからね〉
いやー実質告られちゃったもんなぁ。
お兄ちゃんマジで参っちゃうなぁ 帰りに薬局へよるべき?コンビニでも売ってるよな?
いや、冗談だって、冗談冗談。
それよりも『買ったまま眠ってたアレ』が活躍するチャンスじゃねーか。
厳重にかくしてあるからお袋にも桐乃にも見つかってないはずだ。
〈……ちょっと〉
「ちょっと聞いてる?」
「ん?ぁあ。とりあえず今まだ教室だからあとで掛け直すよ」
「急ぎだかんね!」
そうかそうか、急ぎか、何だかわからんが人目の無いところにでも行かないとな。
さすがに教室で妹に愛の告白はできないだろ。
『もう俺たち普通の兄妹にはもどれないな……』(←ハンサムボイス)ってか!ウヒョー
……おおぅ寒気がしたぜ。
いやいや、みなまで言うな。
あくまで兄としてどの位妹が好きかを告白しなさい。ってところだろ? 完璧に了解だぜ、ハァハァ。
桐乃はどこらへんまでOKしてくれっかな。
ベロチューくらいなら楽勝だろ、楽勝に決まってる。楽勝であるべきだ。
「ニヤニヤしやがって、なんかあったのか?」
おお、赤城よお前はまだ友達でいてくれたんだったな、そういえば。
しかしなんだその不服そうならツラは。不幸が感染するからあっちいけ、シッシッ
「あー妹から呼び出しみたいなもんだ」
「クソ忌々しい」
こ、こいつ、死んだ魚の目をしててがる、なんか急に現実に引き戻された気がするわ。
「なんだイキナリ……お前瀬菜となんかあったのか?」
このパーフェクトシスコンが突然の悪態をつくなんざ他に理由があろうはずが無い。
「軽くキスしたら泣かれた」
なんだこいつ怖っ。
「お疲れ様、また明日な」
出来るだけ友情にヒビが入らないよう最大限に憂慮した言葉を投げなけて席を立つが赤城も食い下がる。
どーでもいいが抱きつくな、お前のホモ疑惑は完全には払拭できてねーんだよ
「まってくれよ高坂~そもそもお前がいけねーんだろ」
意味がわからん。
「意味がわからん」
「お前が妹の桐乃ちゃんとキスしたってニヤニヤしながら自慢すっからさー」
「はぁぁ? さらっととんでもねーことくちばしってんじゃねー!」
「どこのフィクションだ! 二次創作なのか? アンソロジーなのか?どこで売ってんだそりゃ」
「そんなもんあったら買い占めた挙句に作者にカミソリ付きの日本刀送りつけてやる!」
勢い任せで言ったが、刃物に刃物を添えて送るってあれか通販のオマケかよ。斬新だな!俺
ほーら教室の空気が悪い。
麻奈実は他の女子に連れていかれたし仲間は1人もいないぞ。
「はぁ……作者もさぞかし混乱するだろうな」
「じゃなくて自分で言ってたろ、妹起こしにいったらちょっと触れちゃったってよ、ってデレッデレで」
あぁあの事か。キスなんて言うから焦ったじゃねーか。
でもなあ俺マジでそんな自慢したっけかな、したような気がするな、ぁあしたわ、したした。
しかしデレデレは脚色が過ぎる。見ろよ俺たち(主に俺)から距離を取るクラスメイトの面々を。
ありゃ多分元クラスメイトだぜ。同窓会とかでハブられたらどうしような、お互い。
「思い出した、ありゃお前が悪い」
「なんでだよ!」
「おめえの妹自慢がなげぇ上につまらねぇから話をぶち折ろうとして少し大げさに話しただけだ」
「ヒドイ!」
実際ヒドイのはお前だ。
こっち見て笑ったーだの、新しいパジャマが可愛いーだの、毎日毎日うるせーんだよ。
俺なんかデートもしたし、告白までされてんだぜ
両方頭に嘘がついてるけどさ。
可愛いのはお前んとこの妹だけじゃねーつーの!こいつに世の中の厳しさと序列つーもんを教えてやる。
「フッ実は胸も揉んだことがある」
二回な。どうだ悔しかろう。
「あぁそれなら」
赤城の顔がパッと明るくなりやがった。てめえ!
「まて、言うな。言ったら俺殺しちゃうかもしれない」
ふざけんなよなにその表情。
ぜってー聞いてやんねーからな! この鬼畜!妹のオッパイさわって喜ぶ兄なんてお前だけだ!
あーくそ! あれか、揉み続けた結果がアレなのか!
世の中って厳しいなぁおい。
つーかそんな状態でもキスってヤバイんだな、ちょっと兄妹間の常識が大幅にズレてたようだぜ。
ベロチューは当分あきらめよう。
「話しを戻そう、怒らせた後フォローしたのか?」
「高坂兄妹もチュッチュしてるみたいだしさ、コミュニケーションのひとつだとおもって……ごめんな」
「って言っといた」
おぉぉぉぉい! そんな年がら年中イチャイチャしてるみたいに言うな!
「巻き込むなよ! つーかその話しかただと、俺と桐乃がマジキスしまくってるみてーじゃねーか!」
いや、くっついたのは、その、あれだけれども
し、しまくってはないもんな。否定しとかないとな。
「まさかー、流石におでことかほっぺだってわかるさ、瀬名だってそう思うんじゃね?、言い方まずかったか?」
心が痛い! 目の前の変態にお前ありえんな、っていわれてるんだぜ、これ。
というか赤城よ、『ほっぺ』か『おでこ』にキスして泣かれたのか……
ちょっと凹むな、それ。
ヴーッ ヴーッ
OHヤバイ
「わり、桐乃が呼んでるんで」
件名だけのメールでまだ? だそうだ。
こんな短いメールでもにやけてしまう。二へェェ
「あ、あぁ」
おい引くなよ、お前だって瀬名からメールあったらおんなじリアクションすんじゃねーか
今の会話と瀬名からもれた話に尾ひれだか胸ビレだかハイパー兵器だかがついて俺の悪名は伝説にまでなるのだが
・・・・・・それはまた別の話にしておこう。桐乃、お前この高校だけには入らないほうが身のためだぞ。
校舎裏に人影がいないことを確認するや桐乃に電話をかけた。例の如くワンコールで出る。
なんつーの?愛?
「(遅い! 死刑!)」
愛が痛いな、どっかの団長かよ
そしてなぜ小声?
「悪りぃ悪りぃ、ひと気が無いところがなかなかなくて」
「(じゃ、ちゃっちゃとお願い)」
えー? なんつーかさ、もうちょっとお願いの仕方ってもんがさ~
あ、そうねこいつツンデレ要素があるんだな、そう思うことにしよう。
咳払いをひとつ。ちょっと緊張すんな、コレ
「んっんっ えーと……好きだ」
んー風が気持ち良いぜ、校舎裏ってマジて静かだよな、じゃなくて。
「おい、無言かよ」
「(あ、あのさ、なんかせめてもう少し気持ち込めてくんない? 言葉は選ばなくていいからさ)」
気持ち、気持ちねえ。
「ぶっちゃけろって?」
「(え? んーあんた、演技なんて出来ないだろうからそれでいいよ)」
「毎日おっぱい揉ませてくれ!」
「い、い、今のは悪かった、赤城が変態自慢するもんだから羨ましく……」
「……えーと、ぁー、」
「俺達さ、これからもっと仲良くしような!」
「(それで精一杯ですか?)」
他人行儀! 罵倒より堪えるな…
「精一杯もなにも、告白なんてしたことねーし、大体電話だと勢いとかノリも違うだろ?」
「(勢いやノリで女性に告白してもよいのでしょうか?)」
はい、一言一句その通りでございます。
つーか怖いからやめてよその口調。
「(とにかく心を込めて、真面目にお願い。セリフの内容はこの際関係ないから、出来れば力強く)」
「ん、ああ」
力強く、真剣にっておい・・・
照れ臭さでおかしくなりそうだ。俺ばかり恥ずかしいってアンフェアじゃねーか?
「もし感動するような告白したら、一週間、兄貴じゃなくて、お兄ちゃんって呼べよ」
「はぁぁぁ? 」
こんだけ恥ずかしい思いすんだからな、ちょっとくらいいだろ。
さてさて、なんでこんなことせにゃならんのだ、という当然の疑問も当然ある。
妹に告白なんざ正気の沙汰じゃない。それもわかる。
世間の兄貴なんてもんは俺にはわからないが、可愛い妹から『告白してくれ』
なんて言われたら少しくらいネジが外れるんじゃないか? すくなくとも赤城なら何年も何年も惚気てくるだろぜ。
しかも相手は『あの』桐乃だ、桐乃がマジな告白してくれなんて言ったんだぞ、おい。
携帯に貼ってあるプリクラを眺める、よくよく見れば二人ともぎこちない笑顔だ。
兄妹でもなく恋人でもない、こんな顔させ続けて良いわけがない。
そうだ、桐乃には笑顔でいてもらわないと困る
ゴクリと喉が鳴る。同時に猛烈な恐怖心。
言ったら何か壊れるだろうか、もう兄妹ではいられないのだろうか。
違う!違う!そうじゃなくて、兄妹であるために言わなきゃいけないこともあるだろうが!
「俺はさ、本当に駄目な兄貴だと思う。」
完全にノープランのまま出来るだけ本音を、恥ずかしい気持ちはすっとばして、本音を。
そう自分に言い聞かせていた。
「(は?ちょっと何いって……)」
「ろくに会話もしない妹が何時の間にか綺麗になっててよ、ある日突然俺を頼ってきやがった」
「(待って、あんたなに…)」
「でもよ! 駄目な兄貴だからこそお前には幸せになって欲しいんだよ! 」
「最初はその幸せってやつは俺の知らない世界の出来事だと思っていたさ! 」
綺麗ごとだな『嫉妬』ばかりしてたくせに。でも嘘じゃねえ。
「正直認めたく無かったぜ」
「平凡で何の取り柄も無い俺の、たった独りの妹がよ」
「モデルやって、陸上やって、勉強も頑張って、小説まで出しちまってよ」
「ふざけんなって話しだぜ、兄の威厳なんて微塵もありゃしねぇ 本当に凄いよ、お前は」
桐乃はどんな顔で聞いてるんだろうな。こんな『愚痴』みたいな言い訳みたいな俺の想いを。
「どっか『遠くへ行って』もお前なら勝手に幸せになるだろさ」
「俺なんか必要ない。それが腹立たしくて、悔しくてよ」
「だから」
「だから、人生相談を受けたとき、俺は多分、きっと嬉しかったんだ。」
「俺さ、諦めてたんだ。多分、ずっと。俺が心のどこかで一番欲しいってものをさ」
「どうせ手に入らないなら見たくもない、考えたくもない。そんな風にして、長い間逃げてきた」
「だがな桐乃!」
「今日限りでそんなのはやめだ!」
「俺たちの関係はそんなもんじゃ縛れねー!」
「結婚できない? 知った事かよ! 好きなやつと一緒にいて、何が悪い!」
「お前が告白してくれって言ってくれたから気が付いたんだ! 気がつけたんだ!」
あぁもう! いきなりす結婚とか口にしてんじゃねーよ!
大体お前はいったい何を告白してんだ。
愛の告白じゃなくてカミングアウト大会じゃねーか!
イヤイヤ、違う、勢いだけだ、こんなのは。
さっき注意されたばっかなのによ、どうせ無意識に覚えちまったエロゲかなにかのセリフだろうぜ。
「だから桐乃! 俺はお前の傍にいる! 傍でずっとお前を……
ん、携帯ごしになんか話声が聞こえる
おい、まさか聞いてないとか言わねえだろうな! 二度も三度も言うセリフじゃないんだからな!
マジで恥ずかしいんだぞ!
「え、あ、こ、これは違うんです・・・・・・」
「あ、兄が多大なる勘違いをしちゃって、あ、違った、兄は役に入り込む人物なんです、アハハハ」
は? 勘違いって?どんな状況だよこれ。
慌てて携帯を強く耳に押し付け声を拾う。
正直かなり聞き取り難いのだか、俺の脳内補完結果では…
―男性1―
「なるほど、プッ…台詞はともかく…ククッ……ふぅ…」
「言われてみればこの位の声質の方が嫌味なく好き好き言わせられるかもせれませんね……ブフッ」
―女性1―
「そ、そうですね、それではこの録音データを元に声優プロダクションの方と相談しながら方向性を決めましょう」
―男性2―
「いっそこのまま彼に出演してもらいますかw 彼氏役三人とも! 」
「なんだかんだ言ってお兄さんもかなりいい声してるみたいですしw」
は?あ?え?
「おーい、桐乃、これはえーと」
ツーツーツー……
きりやがった
じゃねーよぅぉぉおぃマジかよ!
え? なに? 今の告白って、あれ?本当に待って、お願い、嘘って言ってくれ!
陰鬱たる気持ちで帰宅した俺は、玄関で桐乃の帰宅をまっていた。
本当に最低だ。最低なんて何度も見たと思ったが、これは本当の最低だ。
――今日限りでそんなのはやめだ!――
うぁぁぁあぁやめてぇぇぇ。おもいださないでくれぇぇ
頭をがんがん床に叩きつける。
フラッフラするぜ、ハハッ。
桐乃もあんなこと急に言われてさぞかし気味が悪かろう。
なんだろうね、もうどうにでもなーれー
ガチャ
「ひぃぃぃぃぃ!許してくれぇぇ!」
「びっくりしたぁ、何してんのあんた」
あれれ?! 怒ってない?
あ! まさか満更でもなかったとか? いやいやまさかなあフヒヒ
「さっきのあれ、どういうつもり? ものすごく恥ずかしかったんですけど!」
怒ってたよ。
「あたし、ちゃんといったよね、スタッフに、聞かせるための声が欲しいって」
いえ、きいていません。はい。
「すまん、ちゃんと聞いてなかったみたいでさ、俺、お前が本当に告白して欲しいって言ったのかと……スマン!」
ガツンと床に叩きつけるような土下座だ。
もうこの際焼き土下座くらいしないと詫びにならないかもなぁ
そもそも「兄として」の告白のつもりが、なんだか残念なことになっちまってよ。
本来なら兄妹関係も破壊されて口も利いてもらえないとこだよ。だいたい、
『あんた私に告白しなさい!』 なんてのは通常の会話の流れであるわけがないんだよな。
なに勘違いしちゃってんの? 俺って本音にバカ。
「ちょ! 土下座とかいいから、どっから聞いてなかったの?」
声が優しい。頭の残念な兄に同情でもしてくれたんだろうか。
「いや、告白して欲しい、のあとは舞い上がってたみたいでさ」
桐乃は土下座していた俺の頭をなでながら優しく毒を吐く。
「もうさ、シスコンとかじゃないね、なんか別の病気なんじゃん? 突発性暴走症候群とかそんなの」
妹に病気扱いされた!
絶対心の病じゃねーか!
反論できませんが……なんにせよちゃんと状況を把握しないと。
「なんとなく見当はついてんだけど、あらためて説明してくれるか?」
「とりあえずリビングいこ、ほら立って」
妹に促されてリビングまでよろよろと歩く。
俺がソファーに座って、桐乃は膝立ちの格好。いつぞや傷の手当をしてくれた時もこんなだったな。
「あ、あのね、妹恋の声優さんについて意見求められたのね」
「あたしさ、女性声優さんはそこそこ詳しいんだけど男性声優さんあんまり詳しくなくて」
だろうなあ、エロゲとかは男は喋らない事も多いし、お前の好きなアニメ、女の子ばっかだもんな。
「でさ、お任せしてたんだけどね、なんか凄い綺麗すぎ?の声優さんがそろっちゃってさ」
「耽美というか中性的というかオペラっぽいというか」
それのなにが不満なんだか
「あたしのなかでは、あの彼氏三人てさ……」
「頼りになったり酷いことしてきたり、居なくなったり、浮気したり、エッチだっりするけどさ」
「本質的には可愛いの」
はぁ?あの三人があ?最初に死んだやつ以外けっこう酷いイメージだけど?
まあ三人目は女子が考えるスーパー男子ってとこで女受けはいいんだろーよ!
ああ面白くない。JCの可愛いなんざ全然わかんねーな俺には!
むしろ可愛いなら中性的な声のがあってんじゃねーのか? ホモくせぇ声でもあてがってもらえってんだ。
……創作キャラにヤキモチとか終わってんな。カッコ悪ッ
「で、ね、あんたの声ってさ、かっこ良いけど、ちょっと可愛いかな? …って」
「うへっマジ?」
なにこの可愛い妹、ペロペロしていい?
かっこ良いとか可愛いとか産まれて初めて言われた気がする!
特に、可愛いとか女の子にいわれると嬉しいのな。
「ちょ、キモいからそんな喜ぶなって」
「よ、喜んだわけじゃねーよ」
三つ年下の妹に声が可愛いと言われて、思わずツンデレリアクションをとってしまったぜ
「で、説明が難しかったから前に録音した音声データを聞かせたら、興味もってもらえて」
いつ録音した何の音声だそりゃ、聞かないけどさ。
「お前まさか俺にアフレコやれとか言ってる?」
「ぁあ違う違う、あくまで雰囲気が似てる人とかいませんか?聞いただけ」
「ただね、監督がイメージわかないなーって言ってきてさ」
なるほど、その感じのままいくと声質だけじゃなく演出とかにも影響するな、とこいつは感じたんだな。
「本当はセリフをそのまま読んでほしかったんだけどね、急だったし、きっと読んでないよね?」
……まあ、こっそり読んだんだけどな。
あれさ、あらすじだとヒロインが、わけわかんねー女なんだけど
読んでみると訳が分からないのは男の方なんだよな。
特に二番目とか、奥さんにベッタリのくせしてまだガキのヒロインに手を出すしよ。
なんつーか奥さんにもリノにも誠意がたりねーよな。何発かぶん殴ってやりたいね。
三番目はさらに混乱する
まるで主人公にとって変わったように不幸になるのもそうだし。
行動がリノに『よく似ている』。リノが『桐乃の投影なんだとすればこいつは自分がどんたけ好きなんだよ』。
まだ読んだこと無いやつがいて説明を求められたら俺はこう言うね。
男運の無いヒロインがやたら酷い目にあうけど『愛の力』があるから平気物語
怒られるだろうな。これ。
「だからね」
「どうせならヒロインの事本当に好きだったらって仮定で、何て言うか聞きたくて」
「そ、その! もしいいセリフだったら本編にもアレンジして使おうとかさ」
おおマジか、俺結構信頼されてたんだな。アニメ化決定してからねじ込むことじゃない気もすっけど。
「なのにオッパイとかいきなり言い始めるし、あ、あたしに告白はじめるしさ」
「スピーカーモードで会議室に響いたんだよ、アレが」
……なんだろ、軽く旅行したくなったわ、あれ? 前が見えない。今日ってこんなに寒かったっけ?
「ちょっと確認したいんだが、その……どっからどこまで会議室にながれたの。アレ。」
「ぁ、ぅん、今日限りで、っとこから。」
「元々録音してから良いとこだけ聞かせようとしたんだけどさ」
「あ、あんたが、あんまり変なこと言うから、間違ってスピーカーボタンタッチしちゃうし」
「パ、パニくってボリュームボタン逆に押しちゃったし」
「お前が原因じゃね?それ!」
「隣で休憩してたスタッフも運わるく帰ってくるし」
「聞けよ!」
「まあ、正直恥ずかしかったけど、おかげでピッタリの声優さん候補にあげてもらったし」
俺は羞恥でおかしくなりそうだけどな!
あそこからだけだとかなりガチじゃねーか。もうやだこの妹。
「一応感謝しとくね、……その」
桐乃はなにかを言いかけて、俺の様子がおかしいことに気がついたようだ。
「な、なに落ち込んでんの、こっちはスタッフのみんなの前で赤っ恥も良いとこだったんだからね」
「ぁあもう!ねぇ泣かないでよ! ちゃんと説明しなかったあたしも悪かったって」
「なにもスピーカーモードにしなくたって……」
「わ、わざとじゃないの!」
「その・・・・・・それに、ほら『裏設定』的にあんたが役になり切ったって言い訳も一応しといたから!」
「……無理あるけど」
なんだその裏設定ってやつは、あの三人が揃いも揃って変態とか言うんじやねーだろうな。もうやだ腐りたい。
「あーもう落ち込みたいのはこっちもなの!」
「脚本家の人から、『やっぱりそうなんですね? そうなんでしょ』みたいな顔されるしさ!」
なにがそうなのか見当もつかないが・・・・・・
この状況で脚本家とやらが俺に対してまともなイメージなんて持つわけねーよな。
「もともとアニメ化が決まった時は出来るだけ口を出さないようにしようって思ってたのね」
へぇそいつは意外だな。
「その方が私も視聴者として楽しめるしさ、なんかアニメ化出来ないエピソードもあるらしいし・・・・・・」
「逆にさ、しおりちゃんにスポットがあたるシーンとかも追加するらしいし!」
その後も桐乃は原作者のスタンスやら誤解されやすいヒロインの心情やらを『特別』に教えてくれた。
遠回しに慰めてくれてるのは俺にだってわかる。
「……ねぇいつまで落ち込んでるつもり? 」
無理やり明るく取り繕っていた声に影が差す。
ま、まて、泣くことはないだろ、恥かいたのは俺なんだし……
「ごめんね。あんなの人に聞かれたくないよね……」
……ちょっとまて
違う!違うぞ。俺はお前に対しての気持ち自体を恥じ入ってるわけじゃない!
「そんなことは無い。俺が恥ずかしいっていったのは」
「あーやめやめ、このはなしはもう無し」
駄目だ駄目だ駄目だ!泣くな!
「駄目だ!」
お前が泣くのなんて嫌に決まってる。
「……なに急に怒ってんの、ワケわかん無い」
余計に泣きそうじゃねーか、俺のバカ!
「桐乃。俺はお前が好きなことを誰かに聞かれたから恥ずかしいって思ってるわけじゃねーよ」
「そりゃ行きすぎたシスコンなんて自慢できることじゃねーが、だからってこの気持ちを否定されてたまるか!」
「また暴走?もうさ、やめてよ……」
そうだな、声を荒げて解決する問題じゃねぇ。
「ちげぇよ……俺はさ、一人で舞い上がってたのが恥ずかしかったんだ」
「妹が立派に仕事をしている最中、おれはお前のことしか考えてなかった」
「んで、お前にも恥かかせちまった。それが恥ずかしくて、悔しいだけだ」
だからもう!このセリフも恥ずかしいつーの! なんだ今日の羞恥カーニバルは。
「あとエロいことね」
桐乃は潤んだ目を拭いながらも笑声でそう言う。
「うっせ。俺の年頃つーか、男は女の子好きになったら、そういうこと考えちまう生き物なの!」
「 つーかごめんなさい!」
というか、今日何回好き好きいってんだ?、もうさ、好きって言いたいだけなんじゃねーの?
「年頃の兄貴は妹にそういうこと考えていいの? フフッ」
「うっせ、知るか!」
まるでシーソーゲームだ。おまえの機嫌がよくなるとおれの心が折れて行く。
うう、泣きたい。あれだ。
今気がついたぜ。
俺さ、妹とフラグがたったって思い込んでよ
オッパイ揉ませてくれとか調子ぶっこいてた俺自身に落ち込んでんだ、比重的に。
そりゃ今日の行動全部が恥ずかしいけどさ。
好きな女の子に気持ちがつたわらない状態で、自分の気持ちが暴露されたら、そりゃ落ち込むってもんだ。
たとえ話だぞ? 一応そういうことにしてくれ。もう知らん!
「な、なにまた落ち込んでんの!」
「自分の気持ちと気持ち悪さを再認識したら泣きたくなった」
「そんなの昔からじゃん」
……
「あ、あ、ち、違う、兄貴が私のこと好きなのが昔からなんておもってないよ」
「そ、そうそう、気持ち悪いのが、昔からってことで……」
「うわぁぁぁぁん」
子供泣きだった。齢18才。一部大人の権利も認められる年になって、園児のごとく泣いた。
「ちょっ」
流石の妹様もどん引きである。
俺はズルいな。一度慰めてもらったからって、また期待してる。
また優しく抱きしめて欲しいに違いない。
桐乃はなにかを言いかけては止めてを繰り返した挙句、この有様の俺にこう切り出した。
「もう!わかった、なんかお願い聞いてあげるからさ泣き止んでよ!」
「なんでも?」
泣き止んだ。なんだ俺。なんだ俺!
「え、え? な、なんでも、はちょっと。18禁にならないヤツなら……」
い、いきなりそんなこと要求する兄だと思われてるのか、俺は。
というかテンションあげるなよ俺、反省したばっかなのによ、自重自重。
「じゃあさ、さっきのアレ、告白前のやつ」
控えめなつもりで、そう言った。
「はぁぁぁぁ?さっさっきのって、さっきの?あんたマジでいってんの?」
顔赤すぎだろ。
「そんな嫌がんなくてもいいじゃねーかよ……兄妹なんだし」
ちょっとわざとらしいくらい落ち込んでみせた。
「だって……」
制服の裾を頼りなさげにいじりながらえらく複雑な表情を浮かべてる。
まぁ昨日までの俺たちじゃ、ありえねーもんな。
「じゃあさ、1日だけならどうだ?」
「必死すぎ……じゃあ、お父さんとお母さんがいない日なら……」
またちょっと泣きそうじゃねーか、顔真っ赤だし、そんな恥ずかしいかね。
まあ想像するだけで俺も恥ずかしいんだけどさ。
「今日居ねーじゃん」
おおう どんだけせっかちですか俺。ちょっと温もりに飢えてんだな俺は。多分。
「ぇぇぇぇぇえ? 今日?今?」
もう完全にパニック状態だ、そこまで嫌がられると傷つくんですけど。
「ほれ、お兄ちゃんって呼んでみ」
ほらほらなにキョトンとしてんだよ
「あ、『そっち』か、ぁー、『そっち』か、よかった、なんだ『そっち』か」
全身から力が抜けたとばかりにヘナヘナと正座の姿勢になる桐乃。
え?このリアクションって
「おまえまさか……」
『あっち』かよ! え? こいつさっき親がいなかったらOKみたいなこと言わなかった?
うそぉぉぉー一生に一度のチャンスだったんじやねーの?
こいつ何処まで想像したんだ、服の上からか? ま、まさか直接……
「『ち、違う』!なに想像してんの? 」
なにが『違う』かわかりませんなぁ!絶対そうじゃん!
「桐乃、仕方ないからお前が想像してたほうのお願いでいいぞ。いいよね?」
「き、キショイ! キモイじゃなくてキショイ!」
手で『胸』隠しちゃった! 自白きました!
自分で想像してたこと指摘されて真っ赤になっちゃってまあ
「そうかぁ、親がいなかったらいいんだぁ、桐乃はエッチな妹だなぁフヒヒ」
「ぅぁぁぁ! 最悪! 最悪!」
まあ桐乃がこんな感じでいてくれるうちはこんな兄でも兄妹でいられるだろう。
なんたって俺たちは『よく似てる』。
危なっかしい道だよな。こいつと一緒だと子供の頃にもどっちまうみたいだ。
お互いいつ転んで泣き出すかわかったもんじゃない。
桐乃は一瞬、人でも殺す勢いで睨みつけてきたあと、完璧な本当に完璧に可愛らしい笑顔で、こう言い放った。
「エッチなのはお兄ちゃんだよ?」
なんだ、この幻想。
「は?」
「だからー、お兄ちゃんはエッチだね、って、話」
な、なんだ、この罪悪感は。そ、それに言ってもいない、「テヘッ」が勝手に聞こえる。なんの魔術だ……
「あれぇーどうしたの、お兄ちゃん、お兄ちゃんって呼んで欲しかったんでしょーお兄ちゃん」
お、お、お、お兄ちゃんお兄ちゃん連呼すんな! ヤバイマジで死ぬ。
積み重ねてきたエロゲーの妹達の思い出がはじめて桐乃にだぶる。だぶらせちゃだめぇ。
「お兄ちゃん。お顔が真っ赤だよぅ?」
どうでもいいが口調までかわんのな。くっそ、こんなので!
「お熱あるのかなぁ? お兄ちゃん」
だからぁお前のほうが絶対顔真っ赤だぞ。
「お熱はからせてねお兄ちゃん」
桐乃×お兄ちゃん呼び×ロリ口調=破壊力!
「ないないない! 破壊力なんてない!」
リヴァイアサン「呼んだ?」
呼んでねぇぇぇ! すっこんでろ!
「じっとしてないとキスしちゃうぞお兄ちゃん」
いやむしろしてくださ……
嘘ですごめんなさい。
ぅぁぁぁ、やめて、顔近づけないでーー
桐乃はおでこをくっつけてくる。
あーこれ。エロゲでみたわ。
二回くらいみたわ!、そのエロゲ知ってるわー!
「大変! お熱があるみたいだよ、お兄ちゃん」
正直そのゲームしてたときにはイラッときたが、これは駄目だ、可愛いにもほどがある。
恥ずかしながらも桐乃が演技している。
そうと思うと余計にな。
……たしかこの後お熱をさますために、あんなことやこんなことしちゃうんだよな……
「はい、サービスタイム終了」
え。『もう?』 じ、じゃなくて助かったぜ。助かった……ぜ。
「つか、あんたマジでさっきみたいな妹がいいわけ?、完全にエロゲ妹じゃん」
お前の好みだろうが!
「お前が、買ってきたゲームのキャラだろうがぁ!」
まあ、たまにはいいけど、
あ、あのゲームもう一回やってみっかな。
返しちゃったっけ?今日借りに行くのは無しだよな。
ダウンロード版とかあったっけ?
「あーやだやだ、男ってたんじゆーん」
それを言うならお前が単純だ!
「お前がはまってたゲームのキャラだぞ、おい!」
「・・・・・・デレデレしちゃってさ!」
おいおい、マジかよ。
「自分が演じたキャラに自分でヤキモチやくな! 高度過ぎるぞ」
新ジャンルっすか?
「うっせ」
認めちゃうのかよ
「まあ、いつものお前のほうがいいよ」
「……うそばっか」
「本当だ」
「マジで? キモ」
「どっちにころんでもキモいんだな!」
「で、どうすんの? あれを今日一日つづけりやいいわけ?」
今日、あと6時間くらいあるな、
いやいや6時間もあんな攻めをうけたら京介おかしくなっちゃう!
いやでも、もう二度と頼めないなら……
「な、悩み過ぎ! わかったかわった、これからも気が向いたらお兄ちゃんって呼んであげるよ」
おい、こいつ天使だろ。
「マジで?! あ、いや、さっきみたいなわざとらしい奴じゃないほうが、お兄ちゃんうれしいなあ」
死んじゃうかもしれないんで。
「もー注文多いな」
「お互い様だろ。またヤキモチ焼かれても困るし」
「うっせ、うっせ! 笑うな!ムカつく!」
へぇ、俺って今わらってんだな。
泣いても怒るし、笑っても怒る妹にこれからも怒られれていくんだろうね。おれってやつは。
「あ、そうそう」
「ん?! なに?!」
怒んなよ
「『これ』今回の詫びとアニメ化のお祝い」
さて気になってる奴がいるかいないかわからんが、赤城兄妹の名誉にかかわるので、ちょっとした後日談をせねばなるまい
「子供の頃だとぉ?」
「そうそう、なんかさ瀬菜ちゃんがみてるアニメで胸揉むと大きくなるかも」
「とかいう定番の都市伝説話やっててさ」
マジか。やっぱ悪影響あんじゃねーの?不安になってきたぜ
「で、風呂にいれてる最中に、あいつがさ、揉んで! ってさ、可愛くね? ね?」
・・・・・・墓場まで持ってってやれよその話は。
「なんつーか赤城よ、可愛いことは可愛いが、痛々しいぞ、その話」
「まじで? 子供ながらに小さい胸気にしてるって、可愛いじゃねーか」
あ、あぁすまんな、なんか、すまん。俺とお前はピュア度が全く違うようだ。
「そうだな、可愛い可愛い」
どちらにせよ教室で話す内容じゃないぜ。
「ふ、兄妹仲で負けたからと言ってその対応は大人げないぞ高坂」
……悪い癖だよな。まぁ可愛い妹がいたら自慢したくなるのはみんな同じさ。
ちょっとベクトルと程度がおかしくても許してやってくれ。『俺達』『不治の病』にかかってんだ。
「はぁ? 俺なんかなぁつい最近だぞ! 親が居ない日なら胸揉んでもいいよ。とかいわれたんだぞ! どうだ!」
ガタタタタッ
ぁあやっちまった
麻奈実は卒倒するし赤城も元親友にクラスチェンジだ。
……数日後
「高坂ー」
涙がでた。
「よ、よう、どうした」
「桐乃ちゃんにお礼いっておいてくれ」
「あ、ああ、なんでだ?」
「セナちゃんに色々話してくれたらしくてよ。誤解じゃないが。誤解が、とけた」
桐乃、あれか変態呼ばわりした件で瀬菜にフォローしたのか。
「おまえのシスコンはマジだからな、誤解もなにも無い。」
「お前にくらべたらマシ」
「そうそう、あの後なんとなくクラスの女子連中であの話題なってよ、高坂がまた話を盛った」
「・・・・・・って見解で一致したみたいだぜ」
胸もんだ揉まないの話でクラス会議とか想像の範囲外すぎるわ!いっそ殺してほしい!
「瀬菜ちゃんにも怒られたぜ、シスコン対決とかしないで! ってな」
まあ、よかったんじゃねーの?
俺のクラス内の立場なんざもう復帰の見込みねぇしな。
最低が、限りなく最低。に復帰したところでなあ。
麻奈実のやつも今日に限って一緒にかえれないのーときたもんだ。
家に帰る途中『偶然』桐乃に会った。珍しいこともあるもんだぜ。
「あ、今帰りなんだ、お兄ちゃん!」
ぐはぁ!やめてよ。学校の連中もここ通るんだから!
……いかん動揺するほうがおかしい。
「ぅ、ああ。そう言えば、それって校則違反なんじゃねーの?」
「ふふーん本当はだめだけどねー、指輪くらいみんなつけてるよ」
「へぇ」
ピアスが怒られないならそうかもな
「なにか一言」
毎日言ってるだろ?
「あ、うん、よく似合ってるぞ」
ニシシと憎たらしい笑を浮かべる。
桐乃はコホンと咳払いをした。
「でもさぁ、渡してくれるまで随分時間かかったね」
……なんだその演技かかったセリフは。
まぁいいけど、実はかなり前に買いにいったんだぜ、使い道ないから貯金はわりとあったしな。
「ずっーと何処かに『隠してた』んでしょ?」
だってよ買ったはいいけどさ、なんか口実がないと渡せないだろ?
……っておい、まて!
「お、おいお前そりゃどういう……『なんで』買ってあったの『知ってん』だよ」
問い詰める俺の腕に絡みついてくる、ぁあもう、勘弁して下さいここ数日おかしいぞお前
そしていつものように力強く俺を引っ張っていく。
そんなに急がなくったって『エロゲもアニメも』逃げねえよ。
「そんなのさ」
「『愛の力』に決まってんじゃん。京介っ」
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最終更新:2011年05月30日 06:27